第40話 解かれる封印
ブレイザードの目の前に来たリュウトとケリン。
リュウトは改めてブレイザードを近くでまじまじと観察している。
「今の俺の身長と同じくらいの長さか……。デッケーな」
現在の炎剣ブレイザードの全長は約百五十センチメートル。小学五年生の平均身長とほぼ同じ。
重さは四キロ程、いくらギヴンで身体能力が強化されているリュウトでも片手で振り回すには重すぎる。
形状はリュウトのたちの住む世界ではフランベルジュと呼ばれる、刀身が炎の揺らめきの様に波打ち、鍔が大きく広がっているものになっている。その剣に錆や刃こぼれなどは一切ない。
現在は刀身部分の半分が洞窟内の地面に突き刺さっており、ただ力を入れて引き抜こうとしてもびくともしない。
「ブレイザードは形状変形ができるってのがウリみたいなもんだからな。今の未熟でしょぼいお前が所有者になったらそれに合わせた剣になりそうだな」
ケリンは、剣の周りに方陣を書いている。
「うわ……。魔法陣なんか書いちゃって……。なんかおどろおどろしいな」
二人はこれから、ブレイザードの封印を解く作業に入る。
「さて。ガキんちょ、ブレイザードの柄を持て」
ケリンが支持した通り、柄を掴むリュウト。彼が掴んだ瞬間からブレイザード部分から炎が漏れ始める。
「うわっ、炎漏れてるぞ! 暴発しないよな?」
柄を掴んだまま、剣から少し離れるリュウト。ギヴンの効果により、熱さを感じるどころか火傷すらしない身体になってはいるが、本能的に炎は避けてしまう。
「それはお前次第だな。さて、早速やってくぞ」
ケリンは大きな深呼吸を繰り返し精神統一をしている。
「おっ、おい、これそんなに集中力を必要とするのか? 失敗とかしないよな!?」
とても集中しているケリンを見て、焦るリュウト。
「俺も封印を解くのは初めてだからな、ちょっと緊張するぜ、さすがに。もしかしたら、お前ブレイザードごと爆発するかもな」
「面白くない、全然面白くないからな、その冗談」
「ハハハ。じゃあ行くぞ……」
ケリンは魔法陣の外側に立ち、目を閉じ量の手のひらを合わせブツブツ何かを唱え始める。
「……の王女セレンの御霊よ……今この……に力を授けるお許しを……」
「うわあついに始まったあ……。こんな怖いもんだと思ってなかったんだけどなあ」
ケリンが呪文を唱え続けている間ずっとビビっているリュウト。
ケリンは前置きのような詠唱を一通り唱え終わったのか、目をかっ開き大きな声で叫ぶ。
「ブレイザード・リべレイション!」
その瞬間、ブレイザードから大きな炎が立ち上る。
「わ! ヤバいヤバい!」
焦るリュウト。炎は彼をドーム状に包み込みはじめる。
「おい! ガキん……! ううっ! 熱っ!」
リュウトに駆け寄るケリンだが、あまりの熱気で近づくこともままならない。
絶え間無くブレイザードから湧き出る炎。
リュウトの姿は完全に見えなくなる。
「何だコレは……。封印を解くのには成功したはずだろ? 何が起きてる?」
湧き出続ける炎は止まらない。
「おい! おい! 応答しろ!」
炎越しに呼びかけるがリュウトからの応答は無い。
再び呼びかけたとき、彼は炎の中にいるある気配に気づく。
「この気配は、まさか」
それは、ケリンにとっては懐かしいと言える気配だった。




