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第4話 雨降る日に① -邂逅-

 小学生時代から、八年後――


 六月中旬。今年は例年より梅雨入りが早い上に、毎日雨が降っている。

しかも降水量は異常なほど多く、かつ局所的であり雨雲の発生原因は不明。というなんとも不思議な出来事が起きている。


 そんな雨の日。県立第一高等学校、その下駄箱前にて話し込む二人組。


 一人目は、緋源龍斗(ひのもとりゅうと)

本作の主人公。超常研究部所属。


 幽霊などによる心霊現象とされている事象について、物理、科学的な視点から実態を解き明かす活動をしている。……表向きは。


 実態はヲタク部であり、日々マンガやアニメを見漁っている。彼は部長で、筋金入りのヲタクである。

 そんな部が廃部にならずに活動できているのは、彼の手腕によるものが大きい。


 二人目は、錫守響(すずもりひびき)

軽音楽部。器用で何事も覚えが早く応用が利くので基本どんな楽器も弾ける。ちなみに1番得意なのはベース。


 彼は『やっぱり、なにごとも土台、ベースになれる人って、カッコイイと思うんだよね』などと訳の分からないそれっぽいことを言っている。

 龍斗と一緒の時はよく振り回され、ツッコミ役になることが多い。


そんな彼らも、下駄箱を出て家路に着きはじめる。


「うっわ、雨降りすぎだろ。傘ないと溺れちゃうよこれ」

 下駄箱を出て一歩目、天を仰ぎ見ながら途方に暮れている龍斗。


「って龍斗、おまえ傘ないのか?」

 隣に並ぶ響。


「ない。盗まれたっぽい。」


「はは、ツイてないな」


「ケェ〜ッ!泳いででも帰ってやるよ」


「バーカ。俺傘二本あるから貸してやるよ」


「サンキュー!やっぱ持つべきものは親友だねぇ」


 この日は中間テスト三日前の金曜日。

部活動休止期間のため、皆そそくさと家路に着く。

 例に漏れず、この二人も他愛のない記憶にも残らない話をしながら家路に着く。


「あーあ。俺、あの傘気に入ってたんだけどなぁ」

 とぼとぼ歩きながら残念がる龍斗。


「あれ結構いいやつだろ? しかも珍しい柄の。

 来週になったらしれっと戻されてるよ」


「そうかなぁ? つか持って行ったやつ絶対許さん!」


「犯人探し俺も手伝ってやろうか?」


「ああ、頼むわ。見つけ次第俺がシバく」


「あ、龍斗そういや今日さ、蘭子と揉めてたよな?

 あれ何したの?」


「ああ、あれな。蘭子の履いてる靴下があまりにもミミズみたいだからイジったらぶん殴られた」


「もしかしてあの茶色のしましまの靴下か!

 あれ、マジミミズだよな! わかる!」


「俺はじゃれてるつもりなんだけど、あいつマジでキレるからさぁ……。ぶん殴る必要あるかね?」

 痛そうに肩をさする龍斗。


「龍斗と俺はもう完全に目付けられるからダメだよ。

 俺この前髪型に触れたらフルシカトされたからね。

 悪口じゃないのに。まじショックだったよ」

 不服そうな顔をしている響。


 ここで、龍斗がなにかに気づく。

「……つか響、お前の傘、持ち手どうなってんの?」


「……なにこれ? なんか歪んでるな。こんな形だったっけ」

 響の傘の持ち手は、手の形に合わせ変形していた。


「そういうデザインでもないよな。強く握りすぎ?」


「そんなんで変形しないだろ……」


「まさか超常現象?

 うちのメンバーと一緒に解明してやろうか?」


「いいよ別に。

 まあコレはコレで持ちやすいからアリだな」

 明らかな異変。だがこの時の二人は全くもって意に介していなかった。


「そういや龍斗、明日明後日とテスト前まで

 蘭子に勉強教えてもらうんだって?

 今日ぶん殴られといて大丈夫なのかよ」


「ああ、まあいつもの事だから大丈夫だろ。

 蘭子のいい所はそんなに引きずらない事だからな」


「まあ、龍斗がそう言うなら良いけどさ。

 勉強会、どんな感じでやんの?」


「俺は古典と現代文がダメだからそれを蘭子に教わる。

 蘭子は情報苦手だからそれを俺が教えるって感じ。」


「ふ〜ん。俺も行っていい?物理教えて欲しいな」


「『響も来たがってるなら勝手にしなさい』って、

 蘭子も言ってくれてたから来なよ」


「こっわ。でもお言葉に甘えることにするわ。 俺は教えれる事無いし、ご機嫌取りも兼ねてスイーツでも買ってくるわ。んじゃ一旦ここで」


「おう、今日は十七時に蘭子の家に集合だからな。

 遅れんなよ〜、響」


 龍斗と響は解散し、それぞれの家に帰っていった。



 数分後、勉強会の準備を整え、蘭子の家に向かう龍斗。

「響、何のスイーツ買ってくるかな〜」


 今日は久しぶりに龍斗、蘭子、響との三人が揃う。

しかも、今日は龍斗の誕生日。大降りの雨だろうとその足取りは軽くなる。


「ケーキだったら天才だな〜。なんだろな〜」


 本当に楽しみで仕方がない龍斗。

しかし、彼のそんな楽しみな時間は突如終わりを告げる。


『やあ、はじめまして。緋源龍斗。』

彼の目の前に、謎の少年が現れた。

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