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第38話 生き証人

「まさか……! そんな偉人に出会えるだなんて……! 歴史について、もっともっと教えてください!」

 今までに無いくらいがっつきながらしゃべるアーサー。

「ああ、喋るだけならいくらでもやってやるよ。暇だしな。」


「ありがとうございます!」

 全力でお辞儀するアーサー。


 こんな口の悪い子供のような人間が歴史を紐解く上で重要人物であることに若干引いているリュウト。

「ケリン、お前。何年生きてんだよ」


「六百年くらいだな。その中でもかれこれ五百年はこの洞窟で番人やってるよ。正直もう飽き飽きしてたが最近はおもろい事が多いな。パリアが来たくらいから、変な連中がこの森の中とかうろつき始めたんだ」


「変な連中?」

 首をかしげるヒビキ。


「お前らガキ三人、パリアやさっきのアニマル連中、変な八本足のヌメヌメした生物、全身金属でカタコト喋るヤツとかな」

 この三ヶ月にあった面白い出来事を思い出し笑っているケリン。五百年、ブレイザードを守るという約束の為だけに生きてきた彼にとって、タコやロボットとの出会いは新鮮だった。


「俺ら以外人間じゃないよなそれ……」

 顔をしかめるヒビキ。


「ま、そんなことはどうでも良くてだな……。パリア、お前本当に元の世界戻るんだな?」


「うん! 僕がお父さんとお母さんを助けるよ!」

 立ち上がり、気合を入れるパリア。


 成長したパリアを見て嬉しそうな表情をするケリン。

「おーし、その意気だ。って事でパリアを頼むぜ、くそガキ三人衆」


「おう」「任された」

 リュウトとヒビキも意気揚々と答える。


「ああ、あとブレイザードは持って行っていいぞ」

 まるでお店のおまけをあげるような感覚でブレイザードを持っていっていいと伝えるケリン。


「え! いいのか!?」


「ま、渡す条件で考えてた異能の制御はある程度できてるみたいだし、どうせお前しか扱えないしな。使い込んで慣れとけよ。そして完全にモノにして来い。この国でルシフルとまともにやれるのはお前しかいない。自覚持てよ、この国の命運は全てお前次第って事だ」

 今までない真面目な表情で言うケリン。


「お、おう……」

 彼から出るとは思ってもいなかった激励に近い言葉に面食らうリュウト。


「リュウト殿、ヒビキ殿、そしてランコ殿。本来ならこの国の危機はこの国の人間である私たちでどうにかしなくてはならないのですが……。改めて、恥を忍んでお願い致します、この国を救ってください」

 深く深くお辞儀するアーサー。その言葉にはお願いする気持ちだけではなく、彼自身の悔しさも滲み出ている。


「私からもお願いする。数日後、見違えた姿になって帰ってくることを期待している!」

 力強い、口調で眼力でそう伝えるゼラニス。


「アーサー、ゼラニスさん……! 任せてくれ。俺らが帰ってくるまで、この国を頼む!」


「あと、ケリンも頼むよ」


「ついでみたいに言いやがって……。お前ら変わってなかったらお前立てなくなるまでボコボコにするからな。あと、アホ面のガキ、これやるよ」

 ケリンは、自分の腕にはめていたガントレットを外し、ヒビキに渡す。


「アホ面って、俺のことかよ!」


「お前以外、今ここにアホ面はいないよ」

 ニヤけた表情でさらっと突っ込むリュウト。


「リュウトおめー、ブレイザード貰って強くなるからって調子乗んなよ!?」

 リュウトの煽りにムキになるヒビキ。


「おい、いらないのか?」


「貰う、貰うよ! でも、何これ?」

 ガントレットは、革製のグローブをベースに手の甲の方に金色と銀色の金属が付けられている。それを不思議そうな表情でじっくりと眺めているヒビキ。


「使ってみればわかる。お前の異能、物体を液体にできるんだろ? 何となくだがお前の異能と組み合わせれば面白いこと出来そうだと思ってな」


「ふ〜ん。……まあ、多くは語らないってことは自分で試すのが一番ってことだよな。自分で何とかしてみるよ。ありがとな!」

  ヒビキは、貰ったガントレットを手にはめる。

「うひょ〜、かっけ〜。見た目より全然軽い!」


「さて……、俺はブレイザードを取りに行くか」

 リュウトは、洞窟の中に戻っていった。

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