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第34話 異能制御レッスン② -維持-

 まるで稽古の様相を呈してきたケリンとリュウトの手合わせ。


リュウトは、自身から出ているというオーラを増幅して出力する方法を模索している。


「オーラの増幅って……。いったいどうすりゃいいんだよ」


「さあな。それはお前自身が感覚で掴むしかない。」


 剣で撃ち合いながら話すケリンとリュウト。


『力を込めるだけじゃダメ、違うアプローチが必要。やりたいのは俺から溢れ出ているオーラの増幅……。まずはそのオーラの知覚をイメージしてみるか。』


 リュウトは、ケリンから距離を取り、立ちながら全身の力を抜き、目を瞑る。


『流れるオーラの知覚……。う〜ん。全然わかんねぇ! もっと深く脱力しないと無理か?』


「ぶ」


ケリンはリュウトの腹にパンチを入れる。


「おいおいおい何回目だ。敵の前で目瞑って脱力するやつが居るかバカ」


 脱力中のパンチ。流石にクリティカルで喰らったリュウトは倒れ込んでしまう。


『痛ってぇ。腹が熱い、全身の血が腹に集まってるみてぇだ……。人が頑張って感覚つかもうとしてるんだから見守るとか出来ないのかこいつ……、って、あれ? 腹に血が集まってるこの感覚、使えるんじゃ』


「ぅぅ、腹痛てぇ。でもケリン、サンキューな」


「は? 急になんだ気持ち悪ぃ」


「見ててくれ、オーラ増幅してるかどうか」


 リュウトは、さっきの腹に血が集まってる感覚を応用。身体の内側から全身に力を巡らせるイメージで、オーラの増幅を試みる。


「少し増えたな。良いな、良いぜその感覚だ。そこまで来たら自分でも力が溢れるのを感じるだろ」


「ああ。もっと行けるぞ……!」

 リュウトのオーラは更に増幅していく。


 その時、ケリンは再びリュウトの腹にパンチを入れる。

「ぶ」


「ははっ。一発入っただけで元通りかよ。攻撃くらっても維持しろ維持。」


「ぐうっ……。お前、さっきより力入れたろ」


「さあ〜? でも、ちょっとはマシになったじゃねぇか。次は、全身にオーラ巡らせたまま、俺と撃ち合え」


「おう……!」


**********************************************************

 異能の片鱗を掴み、それを維持しながら戦うリュウト。それを見守るヒビキ、ランコ、アーサー、ゼラニス、そしてケリンのお手伝いさんのコンドル頭。


「ねぇ……。コンドルさん。あのケリンって子供、一体何者なの?」

 ランコがコンドル頭に質問する。


「ん〜。詳しくは僕もよく分からないけど、昔誰かに呪い? をかけられて成長が止められちゃったみたいなんだよね。いわゆる不老ってやつらしいよ。あと僕の名前はパリア。よろしくね」


「ごめんなさい、私はランコ。よろしく。ところでパリア、あなたはこの国の出身なの?」


「ううん。僕は違う世界から来たんだ。元々はジャングルでスキトスっていう戦闘民族の一員として暮らしてた」


「え、まさか、あなたもゲートを通って?」


「そうだよ。僕は男子なのに戦闘が苦手でさ。ある日ひみつ基地で一人で泣いてたんだ。その時、突然目の前にゲートと、頭がとんがった帽子をかぶった女の人が現れて……。僕、杖で呪いをかけられた後にゲートにほ放り込まれちゃったんだ」


「え、なにそれ。それであなたはコンドルの頭になってこっちの世界に来たってことね」


「うん。それで気絶してた所をケリンに助けて貰ったんだ。ちょうど3ヶ月前だ」


「なるほどそういう関係ね……。ケリンはあなたの恩人なのね」


「そうだよ! 戦えない僕に戦闘を強要しないし、何より僕を必要としてくれてる。ケリンは本当に優しいんだ」


「元の世界に戻りたいとかは?」


「僕は戻りたくないんだけど……。ケリンは戻った方がいいって言ってる。ゲートは恐らくまた現れる。その時に帰れ、お前の昔の現実から逃げるなって」


「そう……、ホントに優しい人ね」


「分かってくれた? でもケリン、相当口悪いんだけどね」


「アハハ、そうね。」


 ランコとパリアは、再びリュウトとケリンの方を向き、彼らの戦いを見守り始めた。

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