第33話 異能制御レッスン① -基礎-
炎剣ブレイザードの番人ケリンと炎のギヴン継承者、リュウトの戦いが始まった。
ケリンとリュウトはお互いに剣を使い戦っている。
木剣ではなく、当たれば致命傷になりかねない本物の剣。
「動きは……、まあ悪くは無いな。ギヴンの力も7割は出てる」
ケリンは手加減をしながらリュウトの実力を見定めている。
「歴代の継承者と比べて今の俺はどうだ?」
「一番雑魚だよ。あんまり自惚れんな」
「ちぇっ。てか異能ってどうやって使うんだよ」
「それは自分で考えろ」
「ホントお前腹立つ言い方しか出来ないのな」
ケリンの攻撃には、ゼラニス程のパワーやスピードは無い。ゼラニスとのハイパー撃ち込み稽古を経て、必要最低限以上の剣技を身につけていたリュウトは、ケリンの手加減攻撃を受け止めながら、自分の異能について考える。
『ゼラニスさんが言っていた「膂力以上の何か」って言葉から考えるに、俺の異能の出力タイミングはインパクトの瞬間。まずは出力させる感覚を掴み、それを何回か繰り返して異能の全容を掴むしかない』
「おーいおいおい、考えんのも良いけどよ。今俺ら戦ってんだぜ? 気抜くなよ、これは練習じゃない。本番なんだぜ?」
ケリンの攻撃のテンポが上がっていく。
一撃でも攻撃が当たれば致命傷になりかねない今の状況は、木剣を使っていた稽古とは緊張感が全く違う。体力、そして精神を削る状況の中、リュウトは異能の出力を試みる。
『剣に力を込めて、振るう!!』
リュウトの力を込めた斬撃。特にいつもと変化は無く、ただただ大ぶりになっただけ、剣筋も分かりやすくなるためケリンは余裕でそれを避ける。
「う〜ん。これじゃないか……」
「異能を使うという点では全くダメだが、でもそれでいい。お前の異能はただ力を込めるだけじゃダメかもな。試行錯誤して感覚を掴んでいけ」
『剣に力を込めるだけじゃダメ。ということは俺の異能は恐らく身体強化系では無い。ランコやヒビキみたいな特殊系なら、発動条件とかがあるはず……』
「だから、ボーッとすんなよ。 考えながら、百パーセントの動きをしないと死ぬぞ」
ケリンはリュウトに前蹴りを入れる。
ゼラニスとの稽古前なら、倒れ込んで追撃を食らっていたであろうリュウト。痛がる素振りなどは見せず、次の攻撃の対応のため構える。
「剣で斬らずに前蹴りとは、随分と優しいのな」
「うっせーよ。さっさと次見せろ」
ケリンは追撃を続ける。
『発動条件か……。ランコ、ヒビキの場合は手で物質に触って力を込めること。俺の場合、手で持ってる剣に力を込めても何も変わらなかった。俺の異能は手で触れて力を込めて、発動、ではない……。まあとりあえずいろいろやってみるか』
攻撃をいなしつつ、リュウトはさっきのケリンと同じく前蹴りを入れる。
前蹴りは見切っているケリン。何気なくリュウトの足を掴む。薄ら笑いを浮かべ、バカにした表情でリュウトに言う。
「なんの真似だ。 こんな前蹴り、なんにも怖くなんか……」
何かを感じとったケリン。急に真顔になり、リュウトの足から手を離す。
そんなケリンを見て不思議がるリュウト。
「ん、なんだよ急に。もしかして、異能か?」
「……。なんだ今の。掴んでる手からなんか異様な感覚がしたぞ」
「は? 異様な感覚?」
「あんまヒントは出す気は無かったが……。少し面白くなってきたから教えてやる。戦闘前から、お前はずっと全身から変なオーラみたいなものが出ていた。最初から疑問に思ってはいたが、今、お前の身体に触れて確信した。それが異能の片鱗だ。まずはそれを意図的に増幅して出力させろ」
「全身からオーラ……。見えないけどな」
リュウトは不思議そうに自分の手足を見る。
「俺は異能無いけどそういうのは見えんだよ」
「え、異能ないのか? 番人のくせに? 」
「くせにってなんだ。無くても大抵のやつはどうにかできる実力はある。それに俺にはこれがあるからな 」
ケリンは、左手に付けているガントレットを見せ続けて話す。
「まあ、これについてはあとのステップで見してやる。とりあえず、オーラを増幅する形で出力してみろ。制御はそれからだ」




