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第32話 洞窟探訪③ -最深部-

 洞窟の奥へと歩を進める五人。再び、開けた場所に出てくる。

彼らはそこで、自分の目を疑う光景に出くわすこととなった。


 目の前、一番奥には炎剣ブレイザード。

そして、その前には何者かが座っていた。


「お、やっと来たね。勇者くん」


 二メートル近い大きな身体に、コンドルの顔、だが首から下は明らかに人間という、リュウトたちの世界では実在しない生物。


五人を待っていたかのような口ぶりで話すその生物は、大きな骨付き肉をついばみながら続けて五人に話しかける。


「どうもどうも。君らが近づくにつれ、ブレイザードが熱くなっていって困ってたよ」


 あっけに取られる五人。互いに見合い静寂に包まれる中で、リュウトが挨拶を返す

「あ……、どうも」


「なんか、反応薄いね。……あ、僕みたいな見た目の生き物は珍しいもんね。そりゃびっくりもするかぁ」


「あの、あなたが炎剣ブレイザードの番人……?」


「ん〜? 違うよ。僕はお手伝いさんだよ」


「お手伝いさん……? じゃあ、番人は?」


「ここだ」

 五人の後ろから、リュウトと背格好がほぼ同じ少年が歩いてくる。傍から見ると推定年齢は10歳ほど。

耳にかかるくらいの長さの茶髪、鋭い目つきをしている。

左手にはガントレットを付けており、そのガントレットからは異様な雰囲気が感じられる。


「そのコンドル頭は戦闘なんぞ出来ないよ。まあ料理は特段上手だけどね」

少年はの方を見ながら微笑む。


「えへへ、褒められちゃった!」

頭に手を添え照れるコンドル頭。


 そして、少年はリュウトを見ながら、彼に聞こえないくらいの小声で独り言を言っている。

「というか、こんなちんちくりんがギヴンの継承者かよ。……って、よくよく見たらこのちんちくりん、異能の制御も出来てねぇのか」

 

 そんな少年に、リュウトが話しかける。

「あ、あの〜。俺ら、ここに来たのは……」


「分かってる。ブレイザードだろ? ギヴンの継承者が来たら渡すように言われていたが、お前を見て気が変わった。私と手合わせしろ。番人として、ブレイザードを渡すにふさわしいか判断してやる」

 食い気味で返答するその少年の語気には少し怒りが含まれている。


「え、キミと?」

 キョトン顔で少年を指さすリュウト。


「当たり前だろ。他に誰がやるんだよ」

 周りを見回しながら答える少年。


「でもキミ……子供じゃ……」


「ああん? オマエも子供だろうが。ナメんな。俺は少なくともお前の数十倍は生きてるよ」

 子供扱いされたのが癪に障ったのか、更に語気が強くなる少年。


「数十倍って……、じゃあなんで見た目子供なんだよ」


「すぐ質問質問、これだから子供は()んなるね」


 少年のストレートでトゲのある物言いにカチンとくるリュウト。

「なあ……。何でもかんでも察しろって、長年生きてると自分本位になるんだな。あと俺は見た目は子供だけど中身は十八歳だ」


「察しろって言ってんじゃねぇんだよ。知識がなくて可哀想だなって言ってんだよ気づけバーカ。つか十八歳? それであっ、大人ですねってなる訳ねぇだろ。どうせ子供じゃねぇか。イキんなよ」

 互いに目線を逸らさず、にじり寄っていく二人。


「んだとこのやろ……」


「ああ? ガキが……」


 そんな二人を見て、ヒビキがすかさず二人の間に入り仲裁しようとする。

「オーイオイオイオイ! 待てよリュウト!」


「んだよヒビキ、止めんなよ」

 リュウトも少年もまだ目を逸らさない。


「落ち着けってリュウト。今のお前、あいつにいいように乗せられてるぞ」


「だからなんだ」


「忘れてんのか? お前の目的はなんだ」


「ブレイザードだよ。あと、このガキぶっ飛ばす」


「そうだ、ブレイザードだ。まずはそれだろ。分かってるなら早く……」


 リュウトとヒビキのやり取りを見ている少年は痺れを切らしてリュウトを挑発する。

「おい、俺と戦うのか戦わねぇのかどっちなんだよ! 早く決めろよ歴代最弱ギヴン継承者!」


「ああやってやる、お前が経験豊富だかなんだか知らんが、ぶっ飛ばしてやるよ!」


「ハッ、口ではいくらでも言えんだよ。 俺がブレイザードを渡す条件は一つだ。お前が制御できてない異能を制御し、俺に一発当ててみろ」


「は? 俺に異能なんか……」


「あるよ。ある。お前が自覚していないだけで確実にある。後ろにいるおっさんも多分薄々感じてると思うぜ? 顔がそう言ってる」


「え、ゼラニスさん?」


「リュウト少年、黙っていてすまなかったな。稽古を始めた当初から、君の異能の片鱗は感じていた。剣撃には純粋な膂力意外の要素がある。恐らく、あれは異能だろう」


「ほらな。身をもって体感してる奴もいる。お前の異能は本物だ。見してみろ。中途半端な奴に渡すほど、ブレイザードは安くない。俺はケリン。番人として、そしてブレイザードを渡す者として、務めは果たさせてもらう」


「ケリン……。お前絶対ぶっ飛ばしてやるからな!」


 こうして、炎剣ブレイザードの番人ケリンと炎のギヴン継承者、リュウトの戦いが始まった。

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