第31話 洞窟探訪② -熱気-
炎剣ブレイザードが眠る洞窟の中を歩く五人。
洞窟内部は横幅三メートル程で二人が余裕を持って歩けるほどの広さ。内部に灯りは備わっていないため、今はリュウトとゼラニスが持つ松明の灯りが頼りである。
炎剣の影響で、洞窟内の気温が40℃に迫る中、熱と暑さ耐性百パーセントのリュウトほかの四人よりも足取り軽めで先に進んでいた。
「こんな洞窟初めて来たよ! スゲーな、ホント。 マジで冒険だな!」
「リュウト、元気すぎるだろ。あれほどの熱耐性、副作用とかないのか心配になるな」
リュウトの熱耐性に少し違和感を覚えるヒビキ。
「ええ、そうね。ところでアーサー、ここの洞窟ってヴェローナ王国で管理してる場所なの?」
ランコはアーサーに問う。
「いえ。国はこの場所を認知していますが、管理下に置くことなどはしておりません。不干渉なのはおそらく昔からの言い伝えかと。私も子供の頃は『化け物が出るから』とこの洞窟に近づくことを禁止されていました」
「化け物……。今、この国って人間以外住んでないのよね?」
「その通りです。おそらく、化け物は昔この国にいた魔族のことを言っていると思いますが、それは初代勇者の時代に殲滅されたはずなので、もう居ないはずです。少なくとも私はそう聞いています」
「そう……。その化け物の話が本当じゃないといいわね」
「オーイ! なんか開けた所あるぞー!」
先陣を切っていたリュウトが開けた空間を見つける。その中心の地面には、十メートル程の大きな穴が空いていた。
「この穴、一体なんだ?」「灯りを当てても底が見えんな」
穴をのぞき込むヒビキとゼラニス
ランコはとあるものを見つける。
「みんな、見て。これ、ハシゴじゃない?」
「ハシゴ? なんでそんなもんここにあるんだよ」
「だいぶ年季が入ってますね、これ」
ランコの見つけたそのハシゴは、木や金属を組み合わせて作られていた。アーサーの言う通り年季は入っているが、まだまだ現役である。
「う〜ん。もしかしてオリバー教授の言ってた、この洞窟の番人、昔からこの洞窟を出入りしてるってことか?」
「リュウト殿、そうなりますね……」
得体の知れない者の存在を実感し、少し顔色が変わる。
「ウム。怪しいが降りるしかないな、私が先に下りる! みな、後に続いてくれ!」
早速、ゼラニスはハシゴを下り始める。
「わわ! まってまって早いよゼラニスさ〜ん!」
他四人も続いて下り始める。
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ハシゴをおりた先には、テント、焚き火の跡など、誰かが居たと思われる痕跡があった。
「えっ。これ、やっぱり誰か居る……よね?」
得体の知れない何かの存在に戦慄するランコ。
「オイオイ、番人ってゴーレムとかそういうのじゃなくて普通に生物なのか?」
そう言いながら歩き回るヒビキはとあるものを踏む。
『パキッ』
「ん、なんの音だ?」
「ヒビキ殿、足元のそれ、まさか……」
ゆっくりと自分の足元を見るヒビキ。
「ん、ほ、骨!?」
ヒビキの足元には、大型動物の骨が何本か転がっていた。
「ギャァァーー!!」
突然の出来事に叫んで飛び上がるヒビキ。
「ヒビキ殿、落ち着いてください! 大丈夫です、ただの骨ですよ!」
ゼラニスは、骨を見てあることに気づく。
「骨についている肉に刃物で斬られたがある。つまりこれは、自然に白骨化した訳ではなく、何者かによって解体された後の骨だな。しかも数時間前だ」
「ということは、もしかしてこの奥に……」
リュウトとゼラニスは、この洞窟の奥を見つめている。
「ああ、ここに降りてきて気温も更に上がっている。おまけに誰かが居る気配もするな」
「それじゃあ、行きましょう」
洞窟の奥へと歩を進める五人。
彼らはそこで、自分の目を疑う光景に出くわすのであった。




