第30話 洞窟探訪① -暖気-
リュウト、ランコ、ヒビキ、アーサー、ゼラニスは炎剣ブレイザードを手に入れるため、ヴェローナ城北の洞窟を訪れようとしていた。
「なんか……、洞窟に近づくにつれて気温上がってないか? あちー」
その辺に生えていた大きな葉っぱで顔をあおぐヒビキ。
「そうね……、前来た時こんなに暑くなかったわよね」
その辺の葉っぱを触るのは何があるのか分からないので自分の手で顔をあおぐランコ。
「おそらく、リュウト殿のギヴンと炎剣が感応しているのでしょう……」
暑さに顔を歪めながらも王子たるもの、あおぐのを我慢しているアーサー。
「うむゥ……、少し暑いがまだまだだな」
あおくなど言語道断。普段、厨房にて火を使っておりこういう暑さには慣れているゼラニス。
「え、別にさっき変わらず普通じゃない? もしかして俺、感覚おかしい?」
ギヴンの影響で、全く暑さを感じていないリュウト。
リュウト以外のほか四人が感じている通り、確かに洞窟に近づくにつれ、気温は上がり続けている。
「リュウト、あなた暑がりだったのに。ギヴンの恩恵、恐るべしね」
こいつ本当かよ、という表情でリュウトの方を見ながらそうランコはつぶやく。
「炎剣を扱えるのは選ばれし者のみ、という理由は、こういう意味も含んでいるのでしょうね……」
「ハハハ、これはいい訓練だな! 高温下での戦闘も、経験しておくに越したことはない!」
「あちー。ゼラニスさん、ポジティブすぎんのよね」
「ほらほら! みんなー! 先行っちゃうよー?」
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洞窟の前に着いた五人。現在の気温は35℃。リュウトたちの世界では猛暑日と呼ばれるレベルの気温。
五人は洞窟前にある川で休憩&水分補給をしている。
「ええ……。 川の水、ぬるいんだけど」
川辺にしゃがみ、冷たい水で手や顔を洗い冷そうとしたランコ、目論見が外れ残念そうな顔を浮かべている。
「炎剣の影響ヤバすぎ。リュウトお前早く取ってどうにかしろよ」
そう吐き捨てるヒビキ。暑さで少しイライラしている。
「それを今からやるんだよ。つか悪いな、俺その影響全く受けてないから辛さがわかんなくて」
「あ、リュウト、それ普通に煽ってるだろ」
「……ヒビキの事は煽ってる」
「ハイ〜、こいつホント。暑さ感じない感覚バカ〜、バカバカ〜」
コミカルな動きで両手でリュウトを指さすヒビキ。
「なんとでも言え。つか暑いならじっとしてろアホ」
そう言われたヒビキは何も言わずリュウトにガンを飛ばしている。
リュウトはそれにガンを飛ばし返している。
「炎剣ブレイザード、ここまでのものだとは……。身を以って体感するとその凄さが分かりますね」
ぬるい水をがぶ飲みしているアーサー。相当暑かったらしい。
「ふぅ……そうだな。だがこれを制御出来れば、相当な力となる。にしても! 暑いな!」
ゼラニスは暑さには慣れっこではあるが、暑いもんは暑いらしい。
「じゃあ、もうそろそろ行きますか!」
五人は、洞窟の中へと歩を進め始めた。




