第25話 ハイパー打ち込み稽古③ -幽霊-
ヴェローナ城、裏庭の稽古場――
引き続き、スカイヘイブンとの決戦に向けた稽古をしているリュウト、ヒビキ、ランコ、ゼラニスの元にとある人物がやってくる。
「リュウト殿、ヒビキ殿!」
楽しく談笑していた二人は、張りがあり威厳もあるどこかで聞いたことのある声で、後ろから急に呼びかけられる。
「「ん?」」
リュウトとヒビキは後ろを振り返り、目の前にいる人物を見て驚く。
「って、ええ!? アーサー!? なんで動けてるんだよ! もしかして幽霊? いや俺が〇んだのか!? イヤ〜!! 助けて〜!!」
「おいヒビキ、落ち着けよ……」
そんなヒビキをジト目で見て少し引いているリュウト。
「あはは、賑やかですね。では、ヒビキ殿、改めてご挨拶を。初めまして。私はヴェローナ王国、第一王子アーサーです。負傷した私をリュウト殿と一緒になって助けて頂いた事、伺っております。本当に感謝いたします」
テキパキ、ハッキリと喋るアーサー。
ヒビキとリュウトに向かって深く頭を下げる。
「オッス。はじめまして、ヒビキです! 隣にいるリュウトと同い歳の十八歳で〜す」
「リュウト殿と同じ十八歳? お二人ともそうは見えませんが……」
「リュウト、何も言ってないのか?」
「ああ、そういえば。言うタイミングがなくてさ。ごめんなアーサー。実は俺ら、ここに来て子供の姿になってるだけで、中身は十八歳なんだ」
普通ならありえない事実を伝えられ、目が点になるアーサー。
「え? それは一体どういうことでしょうか?」
「え〜っと、そのまんまの意味で……こっち来たら子供になっちゃったんだよね、俺ら」
変なことを言っている自覚があるリュウトはうろたえている。
「えーと、なぜ子供に?」
「それは俺らにもわかんない……」
「不思議な事も……、あるものですね……」
「うん……、そうだね……」
「「「……」」」
三人の間に静かな時間が流れる。
静かな時間に耐えきれずヒビキがアーサーに問う。
「そ、それよりアーサー、あんな大ケガしてたのになんでそんなに元気なんだ? まだ半日も経ってないよ?」
「そうですね、信じてもらえるか分かりませんが……」
アーサーは、自分のケガが時の天使の力により治癒された物だと説明する。
「「天使!? 時間を操る!? なんだそれ!」」
驚くヒビキとリュウト。
「やはり……、信じて貰えませんよね……」
「いや、アーサーがそんな嘘をつくとは思えないし、事実、今俺らの目の前には元気なアーサーがいる。もちろん信じるよ」
「リュウト殿、ありがとうございます」
「ホント無事でよかったよな〜。時を操る、か〜」
ここでヒビキはなにかに気づく。
「もしかして……? 『アレ』やれるんじゃないか」
「ヒビキ殿、どうされましたか? 『アレ』とは?」
「俺らの修行期間の短さを解決する『アレ』だよ!」
「ヒビキ、わかんねぇよ。『アレ』って何だ『アレ』って」
「なんで分からんかね! 俺らがいる空間の経過時間を遅らせれば、一週間以上修行できるかもだろ!」
ヒビキは熱心に語っている。
「それは……? どういう?」
何を言っているのか理解出来ていないアーサー。
「まさか! ヒビキ、お前! 『アレ』か!」
ヒビキの言っている事にピンと来てしまったリュウト。
「わかったかリュウト! だてにアニオタ同好会の部長やってねぇな!」
「アニオタ同好会じゃねぇよ、超常研究部な。でもヒビキ、その案、アリだ。」
「えっ、ええ? お二人とも! どういうことか教えてください!」
リュウトとヒビキの『アレ』トークに置いていかれているアーサーであった。




