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第2話 蒼の少女

 とある世界にて。


放課後、帰り道を歩く一人の小学生、緋源龍斗(ひのもとりゅうと)


「よ〜し。今日は俺の仲間の戦いだ…!」


 彼の仲間というのは、蒼都(あおと)蘭子(らんこ)

実在する人物であり、彼とは家が隣で幼なじみ。


同じく小学五年生。黒髪ポニーテールの女の子。

 仲間と共に世界を救いたい。そんな彼の想いもあり、空想の中でイメージしやすい身近な人物として登場させられることになった。


そんな仲間が活躍する空想が今日も始まる。



時は、リュウトがルシフルを倒す前に遡る――


「リュウト! 行って! あなたが世界を救って!」


 激化する戦闘の中、リーダーに最後の命運を託す銀髪の少女、ランコ。


 狙撃手としてルシフル城内の仲間のサポートの役割を与えられている。


「任せろ。次会うのは全て救った世界でだ!」


 通信が途切れる。リュウトは、ルシフル城の最後の間に入った。


 同時に、ランコに敵の魔の手が迫る。


「ガルル……やっと見つけたぞ、

 通信をしていたのはあの炎の剣士だな?」


「来たか……ライオン人間。私にかまってていいのか?」


「なぁに、あいつはルシフル様には勝てねぇよ。俺様は残りのゴミクズ処理だ」


 ランコの背後に現れたのは、敵幹部のヴァプラ。

白兵戦最強を誇るライオン頭の獣人族。


 銃弾も通さないほど強靭な肉体から繰り出される突進攻撃は、食らった相手を粉々にする。


 身体を丸め、戦闘態勢に入るヴァプラ。

ランコを一撃で仕留めるつもりである。


「俺様には銃なんぞ全くもって効かないが、お前みたいに遠くからチクチク撃つだけの卑怯者は俺様が直々に叩き潰す!  お前ら狙撃手は近寄られたらまともに戦えもしないだろ! あっという間に原型無くしてやるよ!!」


「よく喋るな……。

 狙撃手は近接戦闘が苦手、浅はかな思い込みだ。」


「強がるなよ! ゴミクズが!!」


 ヴァプラが動き出す。

野生動物を遥かに上回る筋力、しなやかさから繰り出される攻撃。初速は時速百キロを超える。


「俺様のスピードを舐めるなよ! 速さと力で一撃で潰してやるよ! 死の拳(デス・フィスト)!」


 ヴァプラの得意とする超速移動からの右拳。


 しかし、ランコにとっては何も怖くは無い。

動きは単調そのもの。ただ速いだけ。


「阿呆なライオン野郎にいくつか教えてやる。まず一つ目、私は近接戦闘の方が得意だ!」


 ヴァプラの拳をひらりと躱すランコ。それと同時にに喉元にライフルを突きつける。


「フン! 俺様の強靭な肉体はたとえ喉だろうと銃弾は通さねぇ!」


「強靭な肉体? 随分自信があるみたいだな! そして二つ目! 私の異能で加速された銃弾をゼロ距離で受けたらどうなるのか! 蒼の弾丸(ブルーバレット)・ゼロ!」


 ランコの弾丸が、喉から敵の脳天を撃ち抜く。


 一撃で仕留めたのはヴァプラではなくランコ。

強靭な肉体は、彼女の前では無意味だった。


「まあ、教えてやった所でお前がそれを省みる機会は一生来ないがな……」


 ランコは、銃を肩に乗せ次の戦場へ向かった。



 空想世界でのバトルは終わり――

場面は再び現実世界。


蒼の弾丸(ブルーバレット)!」


 龍斗はライフル(傘)をかまえ、目の前を歩いている猫を狙っている。

 それに気づいた猫は、びっくりして颯爽と逃げ帰る。


「やっぱクールなキャラはかっこいいな」

 決めゼリフが映えるのはクールキャラ、というのが彼の中の最近の認識である。


「でも、現実でもクールなのやめて欲しいんだよなぁ」

 現実世界の蘭子は、最近の龍斗に冷たい。

前は楽しくお話できたのになぁ、最近の龍斗の悩みである。



 家に着いた龍斗。

しかし家の鍵を忘れてしまい、中に入れずにいた。


 そこに、ある少女が現れる。

先程、空想世界で活躍した、隣の家の幼なじみ、

蒼都蘭子である。


「龍斗。また鍵忘れたの?」


「よ、蘭子。そのとおり。またです」


「あんた、昨日も鍵忘れてなかった? 家の前でランドセル漁ってたでしょ」


「確かに漁ってたけど昨日はランドセルに入ってました〜。忘れてはいませ〜ん」


「あっそ」


おどけた態度をする龍斗の方は見ず、冷たい態度を取る蘭子。


 そんな蘭子を見て、龍斗は持ち前の空想力を発揮、

『ちょっと前の蘭子ならすぐ「ドンマイ龍斗、私の家来る?」とか言ってくれたのにな。今はどうせ、「忘れ物とかダッサ。寒い中1人で待って反省してたら?」とか言ってくるんだろうな。あ〜あ、ヤダヤダ』と、薄い目で遠くを見ながら悲しい物思いにふけっていた。


「ハイハイ、忘れ物マンは……寒い中一人で寂しく反省してますよ……」


 空想を越え、漏れる独り言。


 しかし、龍斗の考えとは裏腹に、蘭子は龍斗に優しい言葉をかける。


「ねぇ龍斗、今日寒いし、あんたの親御さん帰ってくるまで私の家居てもいいわよ」


 冷たい蘭子を思い浮かべていた龍斗に、その言葉はすぐには理解できなかった。


「……ん?」 


「……龍斗、あんた話聞いてた?」


2人は目を合わせながら固まっている。


「ちょ、蘭子、今なんて?」

 龍斗はさっき耳に入ってきた言葉を反芻したが、理解出来ていない。


 蘭子は少し恥ずかしそうに言う。

「私の家に居なよって言ったのよ! ウチ今、誰も居ないけど!」

 年頃の女の子にこんなこと言わせるもんじゃない。


 なぜ蘭子が恥ずかしがっているのか困惑する龍斗。

「お、おう? それは全然大丈夫。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」


 『なんだ? なんか今日の蘭子優しいし変だぞ? 何か裏があるのか?』と拍子抜けの龍斗だった。

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