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第19話 舞踏会② -急襲-

 ヴェローナ城、大広間、舞踏会会場――


ついに、再開したリュウト、ランコ、ヒビキ。


「リュウトお前、生きてたか! 心配してたんだぞ!」

 満面の笑みのヒビキ、嬉しそうにリュウトの肩を叩く。


「リュウト……ホントに生きてて良かった……」

 涙目のランコ、しゃがんで顔を隠す。


「泣くなよランコ、心配かけてごめんな」


「うるさい……私たちがどれだけ心配したか……」


「ホントだよな〜。居なくなってから1ヶ月半、俺らリュウトのことめっちゃ探したんだぞ?」


「は? 一ヶ月半!?」

 昨日の今日でヴェローナに来たばかりと思っていたリュウト。一ヶ月半も時間が経っているとは思ってもいなかった。


「まあ、ここと俺らの世界で時間の流れは違うからそう思うのも仕方ないな」


「というか、ヒビキとランコはどうやってこっちの世界に?」


「秘密基地のワープゲートだよ。

 こっちと俺らの世界を行き来できる。

 リュウトもそれでこっちに来たんじゃ無いのか?」


「俺は……気づいたらこの世界に居たんだ」


「なんなのよそれ。

 ここに来たときの記憶が無いっていうの?」

 

「ホントに無い。最後にある記憶はランコの家に向かっている時の記憶だよ」


 ヒビキとランコは顔を見合わせる。

「なんか変だな……」 「明らかに変ね……」


 リュウトもなにやら考えている。

「んー……まあでもそのワープゲート通れば帰れるんだろ? とりあえずそれでいいんじゃないのか?」


「まあ……記憶はいずれ戻るだろうしな」「そうね……」

 ヴェローナに来た記憶が曖昧どころか全く無いリュウトに対し、少し不服そうなヒビキとランコだが、とりあえず再会できたから良しとする。


 ここで、ずっと様子を見ていたジュリエッタが口を開く。

「ねえねえ、リュウト、この人たちは??」


「あ、ジュリエッタ、置いてけぼりでごめんごめん。

 彼らは俺の故郷の日本に住んでる俺の幼なじみ。

 俺を探しにここまでまで来てくれたんだ。」


「やっほ〜、ヒビキだよ〜」「どうも、ランコです」

 ニシシと手を振るヒビキと、しっかりと背筋を伸ばしおじぎをするランコ。


「ごめんなさい、ちょっと盗み聞きしちゃったんだけど、あなた達ワープゲートで来たんでしょ!? ってことはもしかしてリュウトはニホンに帰れるかもって事!?」


「ああ、そうなるな」


「良かったね! これで心配事の一つが解決だ!」

 ジュリエッタは、一瞬悲しそうな表情をするが、直ぐにリュウトに対し満面の笑みを浮かべる。


「おう、ありがとう。ジュリエッタ」

 ジュリエッタの一瞬の表情には気づいていないリュウト、素直にその言葉を受け取る。


 ジュリエッタの機微に気づいたランコは迂闊にもボソッと呟く。

「あの女の子、リュウトに気でもあるのかしら……」


「エエ!? そうなの!?」

 なぜ迂闊なのか、それはそういう事を聞かれてはならない人間(ヒビキ)に聞かれてしまうからである。


「あんたうっさい……! 黙りなさい!」

 小声でヒビキに怒るランコ。ヒビキも必死なランコを見て流石に察する。

「あっ……! イヤァここの料理びっくりするくらい美味いねぇ! 驚きと感動だよね〜!」

 二人は急に料理に手を付け始め、誤魔化し始めた。


「ねぇリュウト……ヒビキくんとランコちゃん、どうしたの?」


「わからん。まあでも放っておいて良いよ」


「ふ〜ん、やっぱリュウトの友達はにぎやかだね!」

 何事もプラスに受け取ってくれるジュリエッタに助けられた二人であった。



**********************************************************


 その後、四人はしっかりと舞踏会を楽しんでいた。

美味しい食べ物をいっぱい食べるジュリエッタ。

舞踏会らしく二人で踊ってみるリュウトとランコ。

なにかの不手際により人間ダーツ(前話参照)で投げかけられるヒビキ。


 各々が舞踏会を楽しむ中、ジュリエッタの元に目元だけの仮面を付けた青年がやってくる。


 仮面の青年は、彼女の正面で膝をつき手を差し出す。


「そこのオレンジ髪のお嬢様、私と踊りませんか?」

 

「あなた……見たことあるわね……だれ?」

 まだ食事をしていたジュリエッタ。

この仮面の青年に見覚えがあるが分からない。

『私を誘うなんておかしいわね……』と少し警戒をする。


「名乗りはできませんが。怪しいものではありません。

 私はただ、この会場で最も美しいあなたと、

 一緒に踊りたいだけのただの青年です」


「ふ〜ん。そこまで言うならいいわよ!」

 名乗れないという怪しさはあるが、その誠意ある言葉と態度にジュリエッタは警戒を解く。また、最も美しいと言われて少し良い気分になっていた。


 そしてジュリエッタは仮面の青年の手を取る。

 

 まるで昔からペアを組んでいるかのように息ピッタリな二人。周りを釘付けにする見事なダンスを披露する。

 ひらひらと舞うドレス、たなびく髪、主役であるジュリエッタの美しさ、かわいさを存分に引き出している。


 踊りながら、二人は二人だけの会話を楽しむ。

「あなた……! エスコートとても上手ね!

 立派なダンスにみんな釘付けよ!

 見られてるの少し恥ずかしいけど……」


「いえ、それほどでもございません。

 皆、あなたの美しさに釘付けになっているのですよ」


「ふふ、あなた面白いわね」


「やはり笑っておられる時の顔が1番お美しいです」


「褒めすぎよ! というか、みんな見てない?

 恥ずかしいんだけれど……」


 いつの間にか、二人は会場の中心で踊っていた。

他に踊っている人はもう居ない。

この会場にいる全員が、この二人に注目している。


「良いではありませんか。

 今、この瞬間は私たち二人だけの時間です。

 それを存分に楽しみましょう」


「ええ……そうね……」


 その後もしばらく踊り続けた二人。

 

 二人のダンスのフィニッシュ時は、会場全体から窓が割れんばかりの拍手喝采が鳴り響いた。


「あなた……ホントにどこかで会った事ない?」


「いえ……ございません。

 今日は、身元も明かさない様な怪しい私と、

 踊って頂き、ありがとうございました。

 それでは私はこれにて……」


「あっ! 待って!」


 仮面の青年は、ジュリエッタの静止を振り切り、風を起こす程の速さで颯爽と立ち去っていく。


「あ……行っちゃった……」

 ジュリエッタの伸ばした手は、彼に届くことは無かった。



**********************************************************


 颯爽と姿を消した仮面の青年は、来賓の待機するバックヤードに執事の様な男性と一緒に居た。


「ふぅ……」

 青年は仮面を外し、テーブルに置く。


「お坊ちゃま。お見事なエスコートでした。」


「ああ、ありがとう。じいや」


「ですが、正体は明かさなくても良かったので?」


「うん、良いんだ。

 最後に、僕がやりたかったことが出来た。

 明かさない方がお互いの為なんだ」


「左様でございますか……。では……」


「ああ、私はしばらく保留していたあの政略結婚の話を正式に受け入れる」


「アーサーお坊ちゃま……」


 仮面の青年(アーサー)の目の奥には、悲しくも固い決意が宿っていた。


「さて、この舞踏会を締めないとな」



**********************************************************


 先程の素晴らしいダンスが終わって、数分後、時刻は二十二時、舞踏会はお開きの時間となる。

最後に、アーサー王子が登場することになっている。


 そのアーサーの登場を待つ四人。


 リュウトとヒビキは持ち前のコミュ力で人間ダーツのグループと打ち解けており、怪我しない程度でラグビーのボールの様に投げられ遊んでいた。


 ジュリエッタとランコは、会場の端で話し込んでいる。


「ジュリエッタ、ダンス凄かったわね」


「ありがとう。 でも……

 あの人、正体を明かさなかったのよね……」


「え? 誰かわからず踊ってたって事?」


「うん……。でも、知ってる人だと思うの」

 ジュリエッタは、悲しそうな表情をしている。


「そっか……。何か素性を明かせない理由でもあったのかな」


「たぶん、ね……。でも、あの人が私の運命の人なんだと思う。誰だったのか知りたいな……」

 ジュリエッタは、悲しそうな顔をしながら遠くを見てそう呟く。


「ジュリエッタ……」

 ランコはさっきの『ジュリエッタはリュウトに気があるのでは』という邪推が間違いだった事に気づく。



「皆の者!!静粛に!!!」

 また、突然王子の従者が声を張り上げる。

そして、広間上部のバルコニー壇上にアーサー王子がが登場する。


「皆の者、今日集まってくれた事に本当に感謝する。

 今日は存分にお楽しみ頂けただろうか!

 夜も遅い、気をつけて帰ってくれたまえ!

 それではお開きとす……」


ドォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!


 突然鳴り響く轟音。その衝撃により、会場の明かりは全て消えてしまう。


 王子を含め、会場全員が音の方に注目する。

注目したその先は、さっきまであったはずの大広間の天井と壁の一部が無くなっていた。

そこから見える夜空では、月が燦然と輝いており、その光が大広間に差し込んでくる。


 皆が夜空に注目する中、何者かが舞い降りてくる。

その姿は、まるで天使のようだった。


「ご立派な舞踏会と演説ご苦労アーサー王子!!

 最初から見させてもらっていたよ!

 でも残念ながら、君が王様になる未来はこない!

 なぜかって? ヴェローナ王国は滅びるからだよ!」


 天使は、持っている大きな杖から波動弾を出し、城を攻撃する。城が崩れ始め、逃げる国民。


「ハハハ! 愚かなヴェローナ国民よ!

 逃げ惑うがいい!」

 天使ははちきれんばかりの笑みを浮かべている。


「貴様……! スカイヘイブンの者だな!!

 何が目的だ!!」

 こんな状況でもアーサーはひるまずに立ち向かう。


「目的? ヴェローナ王国の崩壊、そして

 お前らに協力してきた我ら天使を天空に追いやり、

 国交を一方的に絶ったお前らへの復讐だよ!」


「何を言っている!

 お前は過去に何があったのか知らないのか!」


「知っている! 知っているからこそだ!

 私は過去の憎しみを全て背負ってお前らに復讐する! 

 今日は宣戦布告だ!

 一週間後、我らは再びこの国に攻め込む!」


「一週間後だと?」


「準備をして待つがいい!

 それを叩きのめし、完全に心を折った上で、

 この国は我々が統治する!」


「させるか!!」

 アーサーは、剣を持ち、異能『風脚』を使用する。

脚を大きく曲げ力を貯め、それを解き放つ事で高く飛ぶ。五十メートル先の天使の所へ一瞬にしてたどり着く程の速度を、剣に乗せる。


 天使は片手の杖でそれを受け止める。


「この程度か……。相手にならんな」


 天使は剣を受け止めた杖をそのまま振るい、アーサーを弾き返す。アーサーは先程天使に向かった時の速度より速くバルコニーに叩きつけられる。


「ぐあっ……」


 アーサーは意識を失う。


「王子は今、再起不能になった!

 逃げ惑う国民に告ぐ! 我が名は堕天使ルシフル!

 天空都市スカイヘイブンを統治する者だ!

 私は一週間後の満月の夜、再び現れる!

 その時がお前らヴェローナ国民の最期だ!

 全力で立ち向かってくるがよい!」


 そう語るルシフルを、国民たちが逃げ惑うヴェローナ城の大広間から睨んでいるリュウト、ランコ、ヒビキ。彼らの目には、怒り、そしてあいつを倒すという覚悟が宿っていた。


 ルシフルは、先程の言葉を最後に、天に戻って行った。


 ヴェローナ王国と天空都市スカイヘイブンとの戦いまで、あと一週間――

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