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第18話 舞踏会① -再開-

 ヴェローナ城、大広間――


 本日は、この国の第一王子の誕生日を祝って舞踏会が開かれている。

 舞踏会とは言いつつも、周辺各国から来賓が来たり、異能パフォーマンス集団によるショーイベントや豪華な食事の提供などもある。


 通常の参加者は、今回は20歳以下のみに限定されており、若い人でごった返している。

 舞踏会を純粋に楽しもうとする人や、中には恋人などを探しに来ている人、様々な人が参加している。


 リュウトとジュリエッタもそんな舞踏会を楽しもうとする参加者のひとり。


「うっわ……すごい人だな……」

あまりの人混みに尻込みしているリュウト。


「そうだね! うわ〜! 楽しみだね!」

すごい人混みに意気込んでいるジュリエッタ。


「見て見てリュウト! 向こうでなにかやってるよ!」


 大広間の中央では現在、異能パフォーマーたちによる「人間ダーツ」が行われいる。


 両手を頭上で合わせ全身をピンと伸ばし硬質化してているダーツの矢人間を、超パワーを持った別の人間が思いっきり壁に向かってぶん投げる。

というあまりにも野蛮なパフォーマンス。


「やばいだろ、あのパフォーマンス」


 こんなの現実世界では見ることはできない。

まず人が人を投げるとこも見れないし、人が壁に突き刺さっている所なんて、もっと見れるはずがない。

 というか、そんなことはやってはいけない。


「うわぁ、すごいね……私も投げれるかなぁ?人」


「あんまり物騒なこと言わないでよジュリエッタ」


「アハハ、ごめんごめん。 そういえば!

 向こうにご飯もあるみたいだよ! 食べ行こ!」



「おう、王子様の誕生日会で出てくる飯美味そうだな」


 ビュッフェコーナーに向かうリュウトとジュリエッタ。その道中、リュウトは一瞬、見覚えのある人物を見かける。


「 ん? あいつらは……? んまあ気のせいか」


 まあ、これだけ若い人がいれば、似ている人物もいるだろうとさらっと流すリュウト。


「見て見て! ヴェローナ牛のローストビーフだよ!

 すごいよ! 滅多に食べられないんだよ!

 今日はいっぱい食べちゃうぞー!」


「ジュリエッタ、俺の分も残しておいてくれよ……」


「ええ〜っ、どうしよっかな〜」


ローストビーフにウキウキのジュリエッタを見て微笑むリュウト。


「にしても、こんな大規模な舞踏会を開くってすごいな、王子様。一目は顔を拝みたいものだな」


 ローストビーフを口いっぱいに頬張っている、ジュリエッタが喋る。

「え? 何言ってるのリュウト。もう見てるじゃない」


「え? 俺がいつ王子様と会ったって言うんだよ」


「会ったじゃない。図書館で」


 リュウトは誰かピンと来て居ない。

「まさか、オリバー教授?」


「アハハ!オリバー教授は年齢的に王子っていうより王様じゃない!ホント面白い冗談言うねリュウト」


「えっ、じゃあアーサーが!?」


 『あの若さで、あの身なりもと風格はただ者ではないと思っていたが、まさかこの国の王子様だとは』と驚くリュウト。


「そう!アーサーは実はお坊ちゃまなんだよー!?」

 次のローストビーフを口に運びながら喋るジュリエッタ。


「というか、そんな馴れ馴れしくて大丈夫なのか?

 この国の王子様だろ?」


「大丈夫だよ〜。アーサーは優しいし、

 アーサーのパパにも昔よく遊んでもらったから


「アーサーのパパってことは、この国の国王だろ?

 そんな人と遊んでたなんてどういうことだよ……」

リュウトの驚きは止まらない。


「私のパパの繋がりでだよ、パパは元々この国の騎士団長だったから!」


「マジかよ……ゼラニスさんが……」


 次々と明らかになる新事実にリュウトの気がだんだんと遠くなっていく。もう一個新事実を言われてしまったら、リュウトはぶっ倒れるだろう。


「そうだよー? パパも実は凄かったんだよー?」

 そう言いながら、ジュリエッタは次々にローストビーフを口に頬張っていく。

『あまりに食べ過ぎじゃないか?』と、いつもするはずのツッコミが出ないほど、リュウトは頭が回っていなかはった。


「皆の者!!静粛に!!!」

 ここで、突然王子の従者が声を張り上げる。


「皆の者静粛に!! 今から我らがヴェローナ国第一王子であるアーサー殿から、ありがたいお言葉を頂戴する!! 心して聞くように」


大広間の少し上にある、バルコニーのような部分にアーサーが姿を現す。


「私は、ヴェローナ王国の第一王子、アーサーである。

 皆の者、まずは今日、私の誕生日を祝いに集まってくれたことに感謝の意を評する。ありがとう」


 アーサーの登場、そして、感謝の意に大広間にいる女性たちから歓声が上がる。


「私は今日で16歳となった。この国の王子が16歳になということは、正式に王位継承権を得るという事だ。」


 アーサーは、自分の想いを語り始める。


「私の父ウーゼル国王は、常日頃から『国王とは、国を支配する者の名称ではない。国をより良いもの、この国に住む国民全てが幸せになれるように支えていく存在なのだ』と語っている。

それは皆も知っていることかと思う。

 私は王位継承権を得たが、まだまだ軟弱者。国王のように国民を支えれるような力はない。

 だが少しずつ、一歩ずつでも皆を支えれるよう、全員が幸せになれるよう、私も支えるための力をつけていくつもりだ」


さっき図書館で見た時よりも、何倍ものオーラを放っているアーサー。まるで別人だ。と感じるリュウト。


「今日、若者だけをこの舞踏会に呼んだのには理由がある。

私は、この国のさらなる発展のためには、今ここにいる若者たちの力が必要であると考えている。

 皆の両親先人たちの知恵と経験それらを受け継ぎ、この国をもっと幸せの溢れる国にできるよう私と共に精進していってほしいと思う!」


 大広間の若者達男女問わず歓声が上がる

アーサーの熱に、上っ面の言葉だけではない、その本心からの言葉に、この大広間にいる全員が心動かされる。

 アーサーは、その言葉を最後に裏へと戻っていった。


「アーサー王子……すげえな」

 王子たるものの器。それをまじまじと感じさせられる。


 そんなアーサーの熱に誰もが浮かされている最中、

とある子供の大きな歓声が耳に入るリュウト。


「流石だ、すげえぞ王子! 俺はお前を尊敬するぞ!」


 リュウトはふと、声のする方を見る。


「あんた声デカイのよ……!」

 先程の言葉を発した少年は、隣の少女に頭を引っぱたかれていた。


 この金髪の少年と銀髪の少女は、リュウトが先程見かけた見覚えのある人たちだった。


「うーん、どっかで見たことある気がするんだよなぁ」


 その少年少女をまじまじと見つめるリュウト。

少年少女も自分たちを見つめる人物に気づく。


目が合うリュウトと少年少女たち。


数秒のにらめっこの後、三人は衝撃の事実に気づく。


「「「あーー!!!」」」


「ヒビキ!? ランコ!?」

 少年少女を指刺すリュウト。


「「リュウト!?!?」」

 リュウトに指を差し返す少年少女。


 なんと、幼なじみ三人組は異世界にて1ヶ月半ぶりの再会を果たす事となった。

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