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第17話 鍛えろ異能、着替えろ衣装

 場面は引き続き、とある異世界――


 ゲートを通り出てきた地点から少し歩き、森林を抜けた先にある洞窟にやってきたランコとヒビキ。


どうやらここで異能の訓練を行うようだ。


「んじゃあ、この辺でいいかな。ランコ、もう事実飲み込めた?」


「異世界に来た事、子供になった事は飲み込めたわ。

でもここは一体どこなのよ?」


「ここは、ええ〜っと、なんて名前だっけな?ペロ……ニャン? ごめん忘れたわ。とりあえず俺らの知ってる国ではないよ。異世界ってやつかな?」


「それはまあ何となく想像はついてたけど。あとさっきのゲートはなんなの?」


「フフフ! 説明しよう!!」

ヒビキは、ランコにゲートについて知っていることを説明する。


【ヒビキ的ゲート関連情報まとめ】

・このゲートでこの世界のみへ移動可能

・ゲートは日本時間で毎日午前二時〜二時半の間に出現、

日の出とともに消滅する

・この世界の時間経過は日本の二分の一

(この世界の二日が日本での一日)

・時差は十二時間

・リュウトを探している時このゲートを見つけた


 『よく見つけたわね』と関心するランコ。

「なるほど……。でも思ったのだけれど、異能の鍛錬なら雅楽市(むこう)でもできるじゃない。人目につかない所なんていっぱいあるわよ? なんでわざわざここに?」


 ヒビキは二本指を立て自慢気に喋り始める。

「よくぞ聞いてくれた、ランコ少女! 理由は二つだ。一つ目はご存知、異能の鍛錬のため。この人間も異能を持っているから異能の行使がバレてもなんともない。二つ目はこの世界でリュウトを探すのを手伝って欲しいから。だ!」


「リュウトの消息について、なにか情報は?」


「なにもありません……。この国の人にも聞いて回ったけど、黒髪の子供、もしくは高校生は見た事がないってさ」

「そう……」

 飄々とそう語るヒビキと、伏し目がちに残念な顔をする蘭子。


「まあまあ、そんな落ち込まずにね! 現実世界でのリュウトの調査は警察に任せて、こっちは俺らで探そうよ! 異能があれば俺らの行動の幅が広がる。だから調査を円滑に進めるためにも、今はとりあえず異能の鍛錬をしよう!」


「そうね。で、まず何から始めるの?まさか、コレ使うの?」

 ランコは、自分の持ってきたバッグを見る。

バッグには衣類などが入っている。


「それは今日の夜。まずは昨日校舎裏でやった加速の付与と発散を繰り返して、異能に身体を慣らすのと、加減調整の練習かな!」


 ランコとヒビキは各々異能の鍛錬に励む。 


 ヒビキは、人の大きさほどある岩をお米くらいの柔らかさに変化させ、そこから野球ボール程の大きさだけをもぎ取り、再度個体に戻すといったことを繰り返す。

 ランコはヒビキが作ったものに対し、加速を付与し、投げ続ける。


 ランコの異能『加速』は、加速を付与した物質の、現在の移動速度を数倍にするという能力。しかし、加速の付与中は、その付与倍率によって本人の心拍数が上がるという副作用がある。

 ヒビキによれば、異能を何回も使って慣らしていけば副作用は気にならないレベルになるらしい。

 ランコはこの日、加速を付与した物質を二百個近く投げ、わかったことがある。


・現状の加速付与上限は元の速度の約三倍まで

・加速付与は触れていないと出来ないが、

発散や付与の取り消しは触れていなくても可能

・ヒビキの言うことは合っており、

最後の方は副作用も少し楽になってきた。


「はぁ……はぁ……。こんなに物投げた事ないから流石に肩が痛いわね」

 肩を押さえ、顔を歪め息を切らすランコ。


「いや〜やっぱランコ根性あるよね。すごいわ」

 ランコの頑張りに少し引いている失礼なヒビキ。

 

「あんた、頑張ってる人に対して、なんつー顔してんのよ!」

そんなヒビキの顔を見てむかつくランコ、石を投げていない方の手を振り上げ、ゲンコツのポーズを取る。


「ああああああ! ごめんなさい!」

 頭を抱えしゃがむヒビキ。


「って、ヒビキはどうなのよ」


「ひいっ! ……って、俺はぼちぼちかな」


 ヒビキの異能『状態変化』は液体、個体、気体といった物質の状態を自由に変化させることが出来る。

 最初は、極端な状態変化のみだったが、発現後の鍛錬によってその変化具合をグラデーションのように操ることが可能になっている。

 副作用は『状態変化時にその物質で起こっているで温度の変化を一部請け負う』というもの。

例外はあるものの、液体から個体の時は体温が下がり、その逆、個体から液体にするときは時は体温が上がる。

 今日は状態変化の速度を上げるという鍛錬に取り組んでいた。こればっかりは継続していくしか無いらしい。


「そう……まあヒビキはもう一ヶ月近く鍛錬してるもんね」


「まあ、継続継続だよ。そんなに焦っても仕方ないよ。今日はもう日も暮れてきたし、さて、ランコ! 準備するよ! 早く着替えて!」

キリッとした目でランコをみるヒビキ。


「はいはい、でも一体これ着て何するのかは後でちゃんと説明してよね」 

 『今は何言ってもどうせ結果は同じだな』と諦めたランコは、素直にヒビキの指示に素直に従うことにした。


**********************************************************

 ランコとヒビキの着替えタイムが終わり――


「ヒビキ、着替え終わったわよ」


「お〜、どれどれ見して見して〜! おお、ランコめっちゃ似合ってるじゃん!」

 ランコが着替えたのは青のドレス。レースの部分には宝石の様な装飾が施されておりとても美しい。

 ヒビキはあまりのお似合い具合に拍手している。


「このドレス着るの小学生ぶりだからなんか懐かしいわね」

 水たまりに映る自分のドレス姿を見て、すこし嬉しそうなランコ。


「俺もこのタキシード久しぶりに着るからなんか変な感じするや」

 ヒビキは黒のタキシードに蝶ネクタイ。完璧に着こなしている。


「それでヒビキ。この衣装に着替えたのはなんでなの?」


「それは……今日、あそこのお城で舞踏会があるからさ!」

 得意気に、ここから見える大きな城を指差すヒビキ。


「舞踏会? なんで私たちがそれに参加するの?」

 異能の鍛錬を終えたら、次はリュウトの捜索だと思っていたランコ。突然の舞踏会参加に戸惑う。


「ランコ、あのなぁ……。今、俺らがどういう時期か知っているか?」

 ヒビキは深刻そうな顔で問う。


「時期? リュウトを探す時期ってこと?」


「違う。それも大事だが今言いたいのはそれじゃない。ベクトルが違う」


「じゃあ……受験生?」


「違う。嫌なことを思い出させないでくれ。でも学生ならではだ」


「う〜ん。……あ、夏休み?」


「そう、夏休みだ! 高校三年生、高校生活最後の夏休み、何か今までと違うことがしたいだろうがぁ!」

 熱弁するヒビキ。


「ぁ〜、はいはい。わかったわ早く行きましょ」


「ちょちょちょ、ランコさ〜ん。急に冷めた顔しないでよ〜」


 『高校最後の夏休みに思い出を残したいというその気持ちは分かる。でもこういうのは事前にもっと早く言え、ちゃんと化粧とかしたいだろうが』と思う蘭子であった。

 

次回、舞踏会!

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