第12話 おてんば少女ジュリエッタ
引き続き、情熱の国ヴェローナにて――
「ま、まさか! デデデデデデ、デート!?」
リュウトから受けた『街に出ないか』というだけの誘いを、デートの誘いと勘違いしてしまった恋愛脳のジュリエッタ。
普通の顔から徐々に顔を赤らめ、手を頬に当て、目をキョロキョロさせ挙動不審になっている。
「……?」
眉間にしわを寄せ、『なぜそうなる?』という顔で口をポカーンと開けるリュウト。さっきまで真面目なことをずっと考えていたため、ジュリエッタの思考回路への理解が追いつかない。
もじもじしているジュリエッタ、恥ずかしがりながらもリュウトを見る。ポカーン顔の彼と目が合う。2人の時間が一瞬止まる。そこでジュリエッタは気づく。
「あ、もしかして違う……!?」
リュウトは黙ってゆっくりと頷く。
「リュウト……! い、い、今の忘れて!!」
『忘れろというのは正直無理な話だが、掘り下げるのはやめてあげよう』と思うリュウトであった。
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平静を取り戻したジュリエッタに、リュウトはさっきの考えを説明する。
リュウトが調べたいのは三つ。
一つ目、ギヴンがなぜリュウトに発現したのか
二つ目、この国に迫っている危機の正体は何か
三つ目、日本に帰る方法について
そのために文献の調査やこの国の歴史に詳しい人に話を聞きたいということも説明する。
「なるほど、この国の危機……!
なんか急にスケールが壮大になってるわね!」
「ああ、だからこれはあくまでも俺の推測の域を出ていないと思っていてくれ」
「了解! でも勇者物語が実際にこの国で起こった事って考えると、現実味はあるわよね」
「まあそうだな、ジュリエッタはこれ、信じてるのか?」
「そうね! ギヴンも見ちゃったからね!」
「俺はまだソレ見てないんだけどな。まあ、物分りと受け入れ具合が良くて逞しいよジュリエッタ」
「そういえば、ニホンに帰る手段を探すってことは、リュウトやっぱ自分の国に帰りたいんだよね?」
少ししおらしくなるジュリエッタ。
せっかくできた新しい友達がいなくなるのは悲しいようだ。
「まあそうだけど……。まだ一緒に居れるよ。ゼラニスさん、デイジーさん、それにジュリエッタに助けてもらったお返しをしてからじゃないと帰れないよ。そのためにまずは色々調べないと」
気遣うリュウト。ジュリエッタの顔がさっきの元気な顔に戻る。
「わかった!
今日はリュウトの相手するのが私の仕事だからね!
とりあえず、今から国立図書館に行きましょう!
私あそこに友達がいるの!」
「友達? 図書館で働いてるのか」
「ンフフ〜! 彼はホントに凄いんだからね!
きっとリュウトの力になってくれるわよ!」
腰に手を添えエヘン! のポーズのジュリエッタ。
ホントに自慢の友達のようだ。
「と、い、う、か! リュウト!
その服装で街出歩くの変だから着替えないと!」
「え? 着替え……?」
ジュリエッタが服を持ってきてくれた。
ちょっとダボッとした薄赤の長袖の服と、ダボッとした黒の半ズボン。それに長い靴下。革靴。
自分の服装を見て子供の頃を思い出すリュウト。
表情は苦笑い。
「なんか、子供っぽさが増したな……」
「アハハ! 何言ってるの!
リュウトは子供にしか見えないよ!?
あとそれ、私のお下がりだからね〜!
フフ! 似合ってる!」
ニッコニコのジュリエッタ。楽しそうだ。
「はぁ……とりあえず図書館まで案内してくれ。」
「よし! 図書館! いっくぞー! おーー!!」
「おーーーー……」