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第10話 炎のギヴン

 引き続き、情熱の国ヴェローナにて――



リュウトが子供になった事実が発覚した数分後。


「あ、リュウト! お店オープンしたわよ!」


 ジュリエッタの両親夫妻が営む食堂がついにオープンの時間に。まだ昼前だが既に満席。その賑やかさから、とてつもない人気ということが伺える。


 ジュリエッタの父親である料理長、ゼラニスはとてつもない速度で料理を作っていた。特にその包丁さばきのスピードは人が視認できる速度ではない。まるで人間離れしている。食材も切られていることに気づいていないと感じさせるほど。

 

 ジュリエッタの母デイジーは娘の代わりにホールスタッフとして入っているが、動きがとてもゆっくり。料理の完成スピードと配給スピードが釣り合って無い。 客たちは誰も文句を言わないどころか、そのおっとりした雰囲気と美貌を持つデイジーの手を煩わせないために、自分たちで料理を持って行っている。ホールはまるで混沌(カオス)


 こんな光景を初めて見たリュウトは驚いている。

二人だけでこの店が回っている理由に納得したリュウトであった。


「ジュリエッタさん、手伝いは大丈夫?」


「大丈夫!あれ見たら必要ないって分かるでしょー?

 日中はリュウトの相手を頼まれたからね!

 あと夜は用事あるし!」


「そっか、ありがとう。にしても凄いね、ゼラニスさんとデイジーさん」


「フフフ〜、凄いでしょ〜!

 いつもこんな感じだから私出る幕無いんだよね〜」


「そんな悲観的にならなくても……。ジュリエッタさんの活気はこの店をさらに明るくしているよ!元気をもらっている人もいると思う。俺もその1人だよ。」


「なに急に〜! いい事言うね!

 歳上のお兄さんみたいなリュウト!」


 恥ずかしながらも嬉しがるジュリエッタ。

彼女の最近の悩みに対しスパッと言ってくれるのは嬉しいようだ。


「ジュリエッタさん……俺は歳上なんだよ……?」


「あはは、ごめんごめん!

 じゃあもう"さん"付けと、改まった口調はやめて!

 なんかもう頭パニックになっちゃう!」


「分かったよ。改めてホントにありがとうジュリエッタ。君が助けてくれてなかったら、俺は今頃どうなっていたことか…」

 目を見て改めて感謝を伝えるリュウト。


「ど、どういたしまして……」

 そんなリュウトに少しときめいてしまったジュリエッタ。見た目は十歳の年下の子供だがその影に18歳の年上イケメンが見える。


 ジュリエッタは歳上に弱い。


「見た目はお子ちゃまだけど中身は十八歳!悪くないわね〜♪」


「……? 何の話だよ」

 リュウトはそういう方面のカンはニブイためジュリエッタの機微には気づかない。


「あ! そういえば!

 リュウトの右手にあったギヴンは一体なに?」


「ん、何言ってるんだ? ギヴン? なんだそれ」


「あ、そっかリュウトは知らないんだった!

 ごめんごめん! ギヴンは紋章のこと」


「右手に紋章? そんなものないぞ。ほら」

 リュウトは右手の甲を見せる。


「いやいや!あったんだよ!

 パパに運ばれてた時私見たもん!(ほのお)のギヴン!

 それはこの国に伝わる『勇者物語』に出てくる紋章なの!」


「『勇者物語』か、そのギヴンってのはどういう意味を持ってるんだ?」


「悪を討ち滅ぼす、退魔の(つるぎ)

 その剣を扱える者だけに浮かび上がる紋章だよ!

 あれは空想上の物語だと思ってたのに!

 なんで他の国から来たあなたに!?」

 熱心に語るジュリエッタ。


「ん〜、それは俺にもわかんないな。

 それ、なにか文献とか残ってないの?」


「なんと……あります!

 よ〜し!じゃあ『勇者物語』読も~う!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり少年の正体は……だったか。 これは俄然、面白くなってきたが、 問題は山積、でもジュリエッタは良い人だし、 可愛いから、この生活も悪くない気がします。
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