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エロゲの初期配布ごみキャラに転生って冗談じゃないわよっ?!  作者: 改田あらた
3:十歳は節目の歳というけれど
40/52

無視しすぎ

最後、むなくそ展開の前だしがあります。

 論文や魔法陣登録で、すっかり後回しになっていた魔法が完成したのは、年明け後だった。幻影をリィズの代わりに出かけさせる魔法だ。リィズが家から出ないことを不審がられないようにするためのものである。


 幻を作るだけなら、そうたいへんではない。それを動かすことも難しくない。指定の場所から場所まで移動させることも、まぁ問題ない。


 なかなかうまくいかなかったのは、ほかの通行人を避ける動きだ。ぶつかられたら、幻影であることがバレてしまう。



 女や子どもなら、ぶつかっても問題ないと思っている男は多い。もしくは女や子どもがよけるべきだと思っている。


 そのため、目立たなくする魔法と、通行人をふくむ障害物をよける魔法を組み込まなければいけなかった。目立たなくする魔法は既存のものがある。しかし障害物をよける魔法はない。


 もしかしたら魔法陣が登録されているかもしれないが、買うつもりはないので作るしかなかった。しかも幻影移動中に魔力操作するわけにもいかず(なにしろ幻はひとりで出かける)、詳細で正確な魔法式が必要だ。



 前回の「土石ブロックおよび堀の作成」魔法は、リアラが全面的に手伝ってくれた。リィズが無意識に行っている感覚的な魔力操作を魔法式に起こしたいという、リアラの願望があってこその手伝いである。


 今回はそのリアラから出された課題なので、手伝いは見込めない。そんなわけで時間がかかった。


 正確かつ緻密な魔法式を組み上げるのは、とても手間のかかる作業だ。リアラみたいにするすると式が出てくればいいのだが、リィズにそんな特技はない。



 というわけで、課題が完成するまでに一ヶ月以上かかった。年末はいつの間にか通り越し、冬も本番である。


 そして、そんなことをしている間に登録審査を申請した魔法陣にも動きがあった。審査は通常一週間以内に受け付けられ、数ヶ月かけて行われる。登録に値する魔法なのか、危険がないか、誤作動を起こさないか等を注意深くチェックされるのだ。


 だがリィズの魔法陣は異例の速さで承認され本登録にいたった。というのも論文がとても大きな影響を与えたらしい。論文が掲載された見本誌がリィズのところへも届いたのだが、なんとトップに特集記事が組まれていたのだ。


『異例! 若干十歳の天才児あらわる』

『これまでにない画期的な技術で魔法陣に革命が起こる!』


 などという仰々しいタイトルがつけられ、リィズの論文だけでなく、その考察や評価まで掲載されていた。表紙にもリィズの論文タイトルが掲載されて見出しになっている。


 地球のネイチャーやサイエンスといった学術誌は、もっと堅い印象があったのだが、こちらの世界の学術誌はわりとゆるいらしい。


「まさか、エル先生自ら、考察を出されるなんて……」

「羨ましいわ、リィズ。あたしたちだって先生に考察を書いてもらったことないのに」


 エルネーディアの考察はさすが魔法陣研究の第一人者と言われるだけあり、リィズの関数化を完全に理解して、既存の魔法陣に当てはめて作り変えるまでやってのけていた。


 エルネーディアが過去に作成した複雑な魔法陣を例に、どこまで関数化するのか、という点に注目していくつも関数化の例をあげている。論文には組み込まなかったが、まさに「どこまで関数化するのか」という問題は関数化における大きな問題だ。


 細かくしすぎると逆に煩雑になってしまうし、切り取り方が甘いとパラメータや結果の受け渡しがうまくいかない。


 通信機でやりとりしていたとはいえ、よくあの短期間でこれだけの考察をして文にまとめたものだ。さすが双子の師匠なだけある。



 論文評価は学術誌の編集長が書いていた。こちらは論文の内容というより論文が魔法陣学に与える影響を主に書いている。そしてリィズ自身についても少し言及されていた。『異例! 若干十歳の天才児あらわる』というあおりは、この論文評価につけられたものだ。


 そしてこの論文評価に『この技術を利用した魔法陣は、すでに帝国の国立魔法陣センターへ申請されている。審査結果が出て承認されたら、改めて論文提唱者の魔法陣を評価予定だ』という記述がある。これが原因で、リィズの魔法陣は異例の速さで承認されたのだ。


 なんでも国立魔法陣センターに相当数の問い合わせがあったらしい。実は申請をして二週間音沙汰がなかった。サリアは女からの申請だからって放置されてるのよ、と憤っていたが、学術誌が出た直後に審査を開始すると返事がきたのだ。


「論文がなかったらきっとずっと放置されてたわ」

「はぁ……これだから、帝国の機関は、嫌なのよ……」


 そして放置されていたことが嘘のように、審査開始数週間で本登録になった。そしてなんと、登録直後にいくつも売れたという。


 リィズたちが作った「土石ブロックおよび堀の作成」魔法は、本来街が公共事業の一貫として購入することが想定されている。利用料は街の大きさや、作る壁の大きさに応じて変わるのだが、最低でもかなりの金額だ。


 しかし蓋を開けてみれば、本来の目的で購入してくれたひとは皆無だった。みな研究目的の購入だったのだ。もちろん国際魔法学ジャーナルの購入もあった。


 そんなつもりで登録したわけではないのに、なんだか釈然としない。欲を言うなら本来の使いかたで使ってほしかった。


 売れたのはありがたい。ありがたいのだが……。



★★★



 論文と魔法陣以外にも、ジェニスと何度か会話している。ジェニスはリィズの考えに納得しつつ、日々押しつけられる帝国の常識に苦しんでいた。


 なぜ男だけが優遇されるのか。その理由を知ってしまったら、自分が……女がいかに虐げられているのか気づいてしまう。しかも両親や周囲は加虐者・被虐者であることに気づいていない。


 日常的に大切にされていないと感じることは、大きなストレスだ。


「しかもね、自分自身が気づいてないうちに、これまで女性を差別するようなことをしてたんだって……そう思うと、また苦しくて」

「ジェニスは優しいね。わたしは自分のこと以外考えてないよ」

「……優しい?」

「だれかを傷つけるようなことをしてたって知ったから、申し訳ないんでしょ?」

「そうなのかな。……うん、それもあるかも……」


 ジェニスは毎回つらそうな顔をして来て、話すと少し笑顔を浮かべて帰っていく。女性差別が根強い常識を否定したいが、しきれないままだ。


 それが優しいとリィズは感じる。常識を否定することは、両親や親しいひとを否定することでもある。それはつらいことだ。美花の記憶があるからこそ、リィズは自分とは違う価値観を受け入れられる。しかし幼いジェニスには難しいだろう。


「知らなかったんだから仕方ないよ。それに女性差別に立ち向かったら攻撃されるもん。子どものわたしたちが攻撃されたら生きていけない。自分を守るためにも嘘をつく必要があるって思う」


 何度も言葉を変えて、繰り返しなぐさめることしかリィズにはできない。


「ジェニスが苦しいなら、これまでの常識で生きてもいいんじゃない」


 そう言ったこともあるが、彼女はそのたび明確に首を振る。それは嫌らしい。


「父ちゃんも母ちゃんも、私のためって言うの。でも私は、それが自分のためになるとはどうしても思えない」

「ジェニスのお母さんたちだって、知らないだけ。だからジェニスのことを無意識に傷つけてるんだよ」

「うん、わかってるんだけど……。でも……」


 でも感情はわりきれない。それもわかるので、リィズはジェニスを抱きしめて背中をなでるしかできないのだ。


 これまでただの近所の年の近い知人だったのに、すっかり仲よくなってしまった。ジェニスからも頼られているし、リィズも近所に自分の思ったことを素直に言える相手がいるのはありがたい。師匠たちはいくら近く感じても、やはり帝都の貴族だから遠慮がある。


 もしかしたらジェニスのような女の子は、ほかにもいるのかもしれない。そう思うが、自分から彼女たちを取り込みにいく気はなかった。そこまでリィズの腕は長くないし、受け入れるための時間もないのだから。



★★★



 論文に魔法陣登録に、性的なこと。これだけでも充分盛りだくさんだ。正直なところ、十歳には重たすぎるくらいである。しかしリィズの十歳はこれだけでは終わらなかった。


 特大の事件が立て続けに起こったのである。


「リィズたいへん! 魔法王国の国立魔法大学から特別入学の打診がきたわ!」


 出社直後にサリアに、国立魔法大学の手紙を見せられたのが最初だ。その対応もたいへんだったのだが、帰宅したらもっとひどいことが起きていた。


「リィズ、リィズ……ッ! わ、私っ、私っ……嫌だって言ったのに、言ったのに……!!」


 泣きじゃくるジェニスが家に押しかけてきたのだ。どうやら、父親に無理やり犯されたらしい。それがジェニスのためだと言って。


 しかも、これで終わらない。ジェニスの両親がリィズのところへ来て今後ジェニスに関わるなと脅してきたのだ。


「うちの子に嘘を吹き込んだのはリィズだな?!」

「おかげでジェニスが変になっちゃったじゃない。こんなに泣いて……あなたのせいよ!」


 家でそんなことをわめくものだから、フェンニスもティーダもリィズが悪いと思いこんでしまった。おかげでリィズは大人四人から納得の行かない説教を長時間受けるはめになったのである。



 そして、さらにめんどうなことが重なった。国際魔法学ジャーナルから次の論文を投稿して欲しいという依頼があったのだ。こんなことはめったになく、とても名誉なことだという。


 師匠たちはぜひ投稿するべきだというし、実はすでに、魔法陣のための外部魔力機関について案があることを話していた。それを論文にすればいいのだろう。


 しかし、だ。


「む、むり無理~~~! キャパオーバーです!!」


 リィズがひとりで背負う限界をすでに超えていた。みんなリィズがちっぽけな十歳の女の子だということを無視しすぎである。

次回はむなくそ展開の収拾です。

とはいえ強姦モノは好きになれない(読んだり見たりは平気なんですが…)ので、詳細な描写はありません。

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