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エロゲの初期配布ごみキャラに転生って冗談じゃないわよっ?!  作者: 改田あらた
3:十歳は節目の歳というけれど
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息をついて諦めた

ウサギさんの身体ひねりジャンプ、なかなか見られないけど、かわいいんですよね……

「……ってわけで、たいへんだったんですよ」


 翌日、リィズは昨日あったことをサリアとリアラに話した。場所はいつもの研究室だ。


「頭の悪い役所みたいね」

「……役所って、そういうものよ……」


 ふたりとも容赦がない。たしかにリィズも腑に落ちない部分はある。しかしそれよりも、リィズは大きな問題に気づいたのだ。


 それはリィズが地下の隠し部屋から出勤している場合、ティーダはリィズを呼ぶ手段がないということである。昨日はたまたま難民街にいたからいいが、仕事へ出ていたらたいへんだった。


 なにしろ外から見たらリィズは出かけていないのだから、家にいるはずなのだ。引きこもりに見えるだろう。

 それを話したら、


「出かけるふりをして、姿隠しの魔法で戻ってくればいいんじゃない?」

「……それは、めんどうよ……幻影だけ、出かけさせればいいわ……」


 ふたりはあっさり答えをくれた。そして、姿隠しの魔法の特訓と、幻影を出かけさせる魔法陣の作成が課題として出される。


 今日は魔法陣応用の課題をやるはずだったのだが、師匠たちからの命令だし、リィズに否やはない。ふたりとも臨機応変で柔軟といえば聞こえはいいが、わりと気分しだいで課題が変わったり追加されたりする。


 思うところはあるけれど、そういうものだと割り切って対応していた。今回のようにありがたい場合もある。


「そう、そういえば……はい、これ」


 変更された課題をメモに残していたら、リアラから紙を一枚渡された。雑誌か新聞かの切り抜きのように見える。


 両方とも、難民街では最近のものは手に入りづらく、ゴミとして出されているものを回収して安く転売されていることがほとんどだ。リィズはあまり買ったことがない。新聞の主要情報はティーダからもたらされる井戸端情報のほうが早いし、雑誌もおもしろそうなものが見当たらないのだ。


 強いて言えば魔法についての雑誌は興味があるけれど、それは研究室に来れば読める。それよりインターネットで最新情報がいつでも見られる環境が恋しい。



 もらった紙には、半年前に可決された臨時法案が発表されていた。難民受け入れに関する法律だ。どうやらリアラはリィズの心配を見越して、調べてくれたらしい。

 

「これは……ありがとうございます!」

「内容は、楽観視できない……と思うけれど……」

「でも、わかってたら対策が立てられるじゃないですか。嬉しいです」


 さすがに、ひねりジャンプはしないが、嬉しいのは本当だ。スカートの中でしっぽが揺れるのは、止めなくてもバレないだろう。



 もらった紙に書かれているのは、黒い空の災厄(政府はそう呼ぶらしい)にともなう難民・流民のあつかいについて、その指針だ。まず各街はできるかぎり難民や流民を受け入れるように要請されている。


 それが難しい場合、街の拡張を推奨。その際に申請すれば政府から補助金が出るようだ。そして拡張した街内にできるかぎり難民や流民を受け入れるように通達した。……らしい。



 災厄に襲われた地域の領主は、可能な範囲でこれに協力するよう書かれているが、ヨーレイ地方の領主は災厄から目を背けるばかりで、避難の先導は行ってくれなかった。だからどこにいるのか不明だ。


 いたとしても、難民や流民のために資金を出してくれるとは思えない。なにしろ金を産む領地はすでに災厄の中へ飲まれ、資金源がないのだから。


 ヨーレイ地方以外の領主に期待したいところだ。いるのか知らないが。でも、いたとしてもヨーレイ地方と同じことになっていそうである。そう思い至って、期待するだけ無駄という結論に達した。



 書かれた内容を見るに、土地のあつかいは各街の裁量に任されるところが大きい。土地の権利はそこに住んでいる者を優先することになっているが、土地の値段は街が決めていいことになっている。家の土地だけならともかく、畑の土地も支払いを求められたらたいへんだ。


 さらなる難民や流民をうむような行為はつつしむように通達、とあるけれど、法的な縛りはない。つまり法外な金額をふっかけられたら、どうなるのだろうか。追い出す……よりは、街が高利貸しをして住民を搾取する可能性が高そうだ。


 黒い空の災厄の地に住んでいたところの住民権を持つ者を、優先して住民権切り替えを行うように。という文言も見えるが、ほとんどのひとが対象者だと思われるので、優先もなにもない気がする。しかし身分証を持ち出し忘れたひとは、果たしてどうなるのだろう。



 災厄が拡大したときのために、街は余裕を持って拡張することが推奨されている。しかし広い範囲を壁で囲おうと思うと、コストがかさむ。


 ルビカーナの新しい壁の建設予定地も、ほとんど余裕がなかった。拡張されまくった畑が切り捨てられている箇所がいくつもあったくらいだ。


 おそらく現在の建設予定地が予算的にもギリギリなのだろう。災厄続きで街の経済状況がいいはずもない。壁の建設にかかった費用は、きっと難民や流民に負担させようとするだろう。それが法外な価格でないことを祈るばかりだ。


「……つまり、できるだけお金を貯めておくしかない。ってことですね」


 それしか思いつかない。


「いざとなれば支援するわよ」

「……遠慮、しないで」

「うーん、でもできれば避けたいです」


 金の切れ目は縁の切れ目というし、親しい相手ほど金の貸し借りはしたくない。というのがリィズの信条だ。


 貸す場合は返ってこないつもりで貸せ。借りる場合は縁が切れるつもりで借りろ。美花の母親が口をすっぱくして言っていた言葉だ。だから美花は友人と金のやりとりをすることは極力避けてきた。


 もちろんリィズも。……といっても、リィズはこれまで貸し借りするような必要性に迫られたことがないけれど。


「岩レンガの作成、受ければよかったかなぁ……材料さえあれば、作れただろうし」

「その場合は、準備が必要ね。まずあなたの商証を発行させて、リランティーナ家で買い取る。そこから売り出さないと」

「そうしないと……買い叩かれるわ」

「十五歳未満に正式な商証は発行されないんじゃ?」

「そこが問題よね」


 成人年齢は十八だが、十五歳からは一人前としてあつかわれ、独り立ちも可能だ。ちなみに結婚も十五歳から可能である。


「一攫千金を夢見たところで、現実は厳しいってやつですね」


 だからこそ一攫千金は夢なのだろう。苦笑いして首を振る。少し考え込んでいたリアラは、うつむいたまま、


「……新規、魔法陣の登録……」


 ぼそりとつぶやいた。するとサリアがなるほど、とうなずく。リィズは意味がわからない。


「それならいけるかもしれないわね」

「きっと、いい機会よ……」

「一攫千金は無理でも、一石二鳥にはなりそうだわ」

「……制度の説明も、しないと」


 似てるようで似てないのに、妙なところで通じ合ってる双子は、顔を見合わせて話を進めている。不肖の弟子は完全に蚊帳の外になっていた。


 変なところでふたりの世界ができあがることは、よくあることなのでリィズも慣れたものだ。ふたりがもどってくるまで、どういう意味なのか推測する。



 登録ということは、特許のようなものだろうか。登録した魔法陣が利用されたら、その利用料が入ってくる的な。


「特殊魔法陣の登録申請には年齢制限がないはずよ。あたしたち、何度もサリアラ・リランテとして登録してきたもの」

「それは初耳です」

「サリアラ・リランテのベーシックラインに、繰り返し使われている柄……というか魔法陣があるでしょ」

「サリアラ・リランテの代名詞になってる定番のデザインもとい魔法陣ですね」

「そう、あれよ。あれも登録済みなの。服に組み込んでもおかしくない、デザイン重視の防護魔法として」


 どうやら、そういう特殊な魔法陣を登録しておけるらしい。


「あなたの……土木魔法を、きれいな式にできれば……登録できるわ」

「どぼくまほう」


 その言葉でまとめられると、なんだか違う気がするが。


「うーん、でも魔力の反発する感覚で無意識に操作してるところも多くて、式にするとなると……」

「……しましょう? 私にも、理解できるように」


 どうやらリアラは自分にはわからないのが悔しいらしい。急に机へ新しい紙を広げた。もったりしたしゃべりかたからは信じられないほど、素早く手が動いて式を書いていく。


 これが魔力を計測する魔法式、これはかすかに魔力を広げる魔法式、それから反応する魔力量に応じて処理を分岐させるための魔法式……。小さくつぶやきながらも、リアラの手は止まらない。


 それを見たサリアが視線をそらす。そして席を立つと、


「……あとは任せたわ」


 手をひらりと振って部屋を出て行った。逃げたな、と思うがサリアがいても魔法式の完成が早まることはないだろう。


 つまり、妙にギラギラした目をしたリアラの相手はリィズがするしかないということだ。たいへんそうである。


「さぁ、ゆっくり、ゆっくり魔法を使って見せて……」

「ゆっくりと言われても」

「魔力操作の、練習……ね?」

「でも土も岩もないのに」

「……外へ、行きましょう」

「さっきの幻影を出かけさせる魔法は……」

「あとで、やればいいわ……」


 拒否権はなさそうだ。また師匠の気分ひとつでやることが変わった。幻影の魔法もまったく未着手だし、まぁいいか。リィズは小さく息をついて諦めた。

長い物には巻かれろ、ということで。


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