憂鬱になった
すみません昨日更新できませんでした…というより日付変更前までに間に合いませんでした……。
しかもまたリィズが胸くそ悪いことを言われます。
近親相姦を強く匂わせてるので、苦手な方はご注意ください(この国では合法です)
サリアから渡されたのは、きれいなサーモンピンクの包装紙に、白いリボンがかけられた箱だった。包装紙には帝都でも有名な高級菓子店の名前がプリントされている。
一応受け取りつつも、リィズは首をかしげた。渡される理由が思いつかないからだ。
「なんですか? これ……」
「そうね、どこから説明しようかしら……アイレーズ・サーデイルのことは覚えてるかしら」
「あいれーず……?」
どこかで聞いたことがある名前だ。思い出そうと視線をさまよわせていたら、
「前に誘拐されそうになっていたところを助けた、傲慢な女の子がいたでしょ」
「あぁ、あのときの!」
去年の夏、魔法陣の素材を見に出かけ帰り、悲鳴が聞こえた。悲鳴のもとへ向かったところ、さらわれそうになっていた貴族のお嬢さまを助けるに至ったのだ。
助けたことより、そのあとにお嬢さまのワガママに振り回されたことのほうが記憶に残っている。そういえば事後処理はすべてサリアに丸投げしてしまったが、どうなったのだろう。
お嬢さまのワガママに付き合うためにリィズが支払った金額は、サリアから補填されたので、それで満足してしまっていた。というより、貴族に関わりたくなかったので、意識して思い出さないようにしていたと言うべきか。
「実はアイレーズがあなたのことをかなり気に入ったみたいでね」
「そうだったんですか、知りませんでした」
「わざと言わなかったんだもの、知らなくて当然よ。とにかく、あなたに接客させろと何度も店に来ていたわけ。リィズに接客させるつもりはなかったし、練習させるにしても店頭に立つスタッフは成人済み以上って決まってるの。だからずっと断ってたのよ」
「そしてわたしにも知らせなかったと」
「知ってもどうにもならないでしょ? それに、ああいう貴族らしい貴族に関わるとめんどうよ」
「はい、ありがとうございます」
とにかくそれで、とサリアは箱に話題と視線をもどす。
「どう調べたのかあなたの誕生日を知ったみたいで、この間ネックレスをあなたあてに持ってきたの」
「ネックレス……?」
手元の箱は重さや大きさからして、ネックレスが入っているようには見えない。
「ネックレスは、あなたを自分の紐つきにしたいっていう意思表示よ。だから、そういったものは受け取れないって断ったの」
「そんなことがあったんですか……」
「で、お菓子ならいいだろうって、改めてそれを持ってきたわけ。それも店員への賄賂は受け取れないって言ったんだけど、それならみんなで食べてほしいって押し切られちゃって。差し入れなら問題ないだろう、という言い分ね」
「なるほど」
「あなたにも行き渡るように、って念押しされたから、仕方なく持ってきたわけ」
説明を終えて、やれやれと疲れた顔でサリアが肩をすくめる。
「理解しましたが、つまりこれは店頭のスタッフさんと食べるべきですね……?」
「そうしてもらえると嬉しいわね。なにしろわざと店先で、みんながいるところで言うんだもの。あたしに揉み消されないための対応なんだろうけど、みんなその店のお菓子が食べられるかもって期待してるのよ」
困った顔を苦笑に変えて、サリアが箱を示す。開けていいわよ、という言葉にしたがってリボンをほどき、包みをていねいにはがした。リボンはもらっておくことにする。
化粧箱のなかには、焼き菓子が並べられていた。どれも細かい装飾がされており、キラキラしている。そのなかから、一番気になったものをひとつ取る。そしてサリアに箱を差し出した。
「どうぞ」
「ありがと」
「リアラ師匠は……これですかね」
「いいんじゃない」
リアラのぶんも取っておく。そしてサリアとふたりで店のある階へおりた。休憩室は無人だ。まだ店を開けたばかりだからだろう。
サリアが店先をのぞいて、手の空いているひとを呼んでくれた。
「これ、みなさんでどうぞ」
「これはもしかして!」
「やった!」
リィズが箱を差し出すと、みんな(といっても数人だ)集まってきた。なにも言わずとも、ひとりひとつ取っていく。ありがとう、という顔はにこにこしていた。
「休憩室に置いておくので、今いらっしゃらないかたへも伝えてもらえませんか?」
「もちろん」
「わかったわ」
「それにしても、あのお嬢さまはリィズちゃんにご執心ね」
「あなた目的で何度も通ってくれてるのよ」
「そうらしいですね……」
さっき知ったばかりだが。リィズが店の休憩室にくるのは、これが初めてではない。顔見知り程度には来ている。けれどアイレーズの話は聞いたことがない。おそらく口止めされていたのだろう。
「すっかり常連さんよね」
「毎回こりずに、リィズちゃんのこと聞いてくるのよ」
「本当は今年の学校から、リィズちゃんを侍女として連れて行きたかったみたいよ」
「学校……?」
それは初耳だ。聞き返すと、どうやら貴族の子どもは七歳になると学校へ通うことがあるらしい。といっても通常は家庭教師をつけて勉強することが多いようで、必須ではないのだとか。むしろ金のない下級貴族向けらしい。
アイレーズはリィズを連れて行くために学校へ通うことを考えていたのだが、リィズが捕まらないので諦めた。次は十歳から通う学校、そして貴族なら必ず通わなければいけない十五歳からの学校がある。そのため次の学校にはリィズを連れていきたい。
聞いた話をまとめると、そんなところだ。だからまだ熱心に通ってくれているらしい。
「なんでそんなに気に入られたのか、よくわからないんですけど……」
「あら、助けてケガを治して優しい言葉をかけてあげたでしょ?」
「それはそうですけど、かなりキツイことも言ったような」
「そうだったかしら」
腕を組んで思い出そうとしているサリアとは、どうやら認識に差があるようだ。
「でも、なんで学校?」
「平民を家に入れるのは、たとえ侍女でもダメっていわれたんじゃない?」
「貴族ってめんどうですね」
「本当に。だから関わらないほうがいいわよ」
「そうしたいですね」
リィズは深くうなずいた。サリアとリアラも貴族では? なんていう、野暮なことはもちろん言わないでおく。
★★★
畑仕事に決まった休みというものはない。が、フェンニスも近所の家も、それぞれ融通しあったり助け合ったりして、適度に休みを取っている。
そんな休みの日、ティーダが買い物へ出かけたときにリィズはフェンニスに呼ばれた。魔法陣を描く練習でもしようと思っていたのだが、急ぐものでもない。
食卓でもあるテーブルについているフェンニスの正面へ座った。
「どうしたの、お父さん」
「あー……えーとだな……」
「うん」
「その……ティーダから、どうやって子どもを作るかは聞いたんだよな?」
「うん」
「そうか……それで、だな……あー……うーん……」
どうにも歯切れが悪い。おそらく性的な話をしづらいのだろう。仕方なくリィズは待つ。
「それで、えー……んんっ、よし、言うぞ。ふつうの家だと、娘の最初の手解きを父親がやる」
「はぁ?!」
まさかの展開だった。思わず寝ていた耳が張り詰める。それを見たフェンニスの耳も同じように立ったので、緊張しているのは同じらしい。
リィズは目と口を開いたまま、なんと言えばいいのかわからず、呆然とする。申し訳なさそうな父親の顔が妙に遠く見えた。
「息子なら母親が手解きする。だが、まぁ……リィズにはまだ早い、よな?」
早いということは、いずれやることになるのだろうか。信じられない。
フェンニスはふつう……と言った。つまり近所のおばさんたちの初体験は基本父親ということか。常識が違いすぎて理解が追いつかない。
へたな男相手に処女を奪われるくらいから、父親に優しくしてもらうべき、ということなのだろうか。しかし好きな相手ならともかく、父親相手など想像したこともなかった。おもいっきり近親相姦だと思うのだが。
やはりここは、成人男性向けのスケベゲームの世界だった。それを再認識させられる。
ふだんはあまり意識しないのだが、まさか十歳で初体験を迫られるとは。しかもフェンニスに罪の意識はまったくなく、それが当たり前だと思っている。
「……リィズ? だいじょうぶか?」
「……」
ずっと固まったままのリィズを心配して声をかけてくれるのはありがたい。でもびっくりしすぎて、驚きが表面に出てこなかった。どうすればいいのかも、よくわからない。
「あー、無理にすぐとは言わないし、リィズが嫌なら、やらなくてもいいんだぞ。それだと初めてのとき困るかもしれんが……」
つまり、恋愛したり結婚したりして性行為におよぶ場合、基本的にお互い初めてではない状態がふつうらしい。慣れているところからスタートすれば、失敗も少ないし妊娠もしやすく、種の保存へつながる……ということだろうか。
それにしても、まさか父親からセックスしようと言われる日がくるとは思わなかった。
「わ、わたし……しなくていい」
どうにか首を横に振る。美花としての知識や経験はあるので、困りはしないはずだ。最初痛いのは、どうしようもないだろうけれど。
「わかった。でも不安になったらいつでも頼ってくれよ」
そうは言いつつも、フェンニスも安心しているように見えた。耳から少し力が抜けている。さすがに十歳の子ども相手は気分が乗らないのだろう。
それに彼はもともとわかりやすく子煩悩だ。娘相手にそんなことをするのは、できれば避けたいと思っているのかもしれない。
リィズの見た目は、十歳の平均より少し幼い。背もあまり伸びていないし、身体つきも少女らしさのかけらもなかった。もちろん初潮もきていなければ、そういったことに興味がまったくわかない。
早い子は十歳で身体が完成し始めるのかもしれないが、リィズはまだだ。ゲームが開始する十七歳までには成熟するのだろうけれど、それまでに七年もある。
でもそういえば、近所の友だち……といっていいのかわからない知り合いの女の子たちは、かなり女らしい体型になっている子もいた。彼女たちは父親に抱かれたのだろうか。
そしてサリアとリアラたちも実は……? そんな下世話なことを考えてしまい、リィズは憂鬱になった。
すみませんがやはりまだ少し忙しく、落ち着くまで月水金の更新にさせていただきます。
書く時間の余裕がほとんどなくて……いや言い訳ですが。
申し訳ありません。




