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エロゲの初期配布ごみキャラに転生って冗談じゃないわよっ?!  作者: 改田あらた
3:十歳は節目の歳というけれど
31/52

指輪はまだ早い気がする

お久しぶりです。更新が遅くなり申し訳ありません。

やっと少し落ち着いてきたので、ぼちぼち更新を再開したいと思います。

リィズもやっと10歳になりましたし、改めてよろしくお願いします。

「誕生日おめでとう!」

「おめでとう、リィズちゃん」

「ありがとう」


 十歳の誕生日は特別だ。生まれてから五年目、十年目、十五年目は節目の年とされる。いつもより盛大に祝うことが多い。


 フェンニスとティーダも去年より豪華なパーティをしてくれた。料理はリィズの好きなものばかり、いつもより奮発したものが机に並んでいる。渡されたプレゼントも、フェンニスの稼ぎからすると、少し無理をした感があった。もっともこの家の収入の三割はリィズのものだが。



 ふたりとも、とても嬉しそうだ。自分の誕生日でもないのに。娘の誕生日ってそんなに喜ばしいものなのだろうか。


 フェンニスにいたってはしっぽがずっと振られている。父親を見て、ウサギも嬉しいときはしっぽを振るのだと知った。よくよく注意してみたら、自分も嬉しいとしっぽがゆれてしまっている。


 もちろん今も。けれどスカートで隠れているから問題ない。


「わぁ、かわいい!」

「リィズちゃんに似合うと思って」


 プレゼントはきれいな刺繍がはいったワンピースだ。難民街で日常的に着ていたら浮くだろうけれど、ルビカーナの街中へ行くにはちょうどいい。


 おそらくベースはルビカーナで買ってきた無地のワンピースだろう。それにティーダが刺繍してくれたものだ。ティーダはこの世界の「よくいる女性」なので、作ろうと思えばワンピースそのものも作れるだろうけれど、手縫いはたいへんだ。


 街中の家庭はわからないが、難民街にはミシンが普及していない。この世界の家電(?)は、魔力を常時供給してくれる魔管から、コードをつながないと動かないものばかりだ。電気ではなく魔力で動くので、家電ではなく家魔と呼ぶべきかもしれないが。



 それはともかく、着てみたワンピースは少し大きかった。成長することを見越しているのらしい。そういえば十歳といえば早熟の女子ならば、身体つきがふっくらしてくる頃合いだ。


 おそらく少し大きくても見栄えするように、さりげなく布をつまんだり折りたたんだりして調整してくれたのもティーダだろう。裾や袖の長さも整えられた形跡がある。毎年いい服を買う余裕はないから、長く着られるようにという配慮だ。


「さすがリィズだ! かわいいな。よくにあってる」

「リィズちゃんはかわいいから、もっと着飾らせたいくらいだわ」


 フェンニスもティーダも、ずっとニコニコしている。リィズもそんなふたりを見てると笑顔になってしまう。ぶじに十歳になれたことも、ふたりが健在であることも。そして、こんなふうに祝ってくれることも。


 じわりと気持ちがあたたかくなる。相変わらず貧乏だし今後どうなるかわからない難民街に暮らしているが、それでも十歳の誕生日を祝う余裕はあるのだ。それに変わらず愛されていることが伝わってきた。


「ありがとう、大切にするね」


 スカートの裾をひらりとさせながら、くるりとターンして見せるとフェンニスの顔が笑み崩れた。


 その場でくるりと身体をひねりながらジャンプする。兎獣人の最大限の喜び表現だ。大人がするところは初めて見た。



★★★



 翌日、職場であるサリアラ・リランテへ向かうと、珍しくリアラが起きていた。


「……おはよう」


 おはようございます、と返せば手を差し出される。


「? 新しい魔法の実験ですか?」

「それも……いいわね」


 どうやら違うらしい。手のひらを上にして見せると、小さな指輪がころんと乗せられた。指輪というのはこの世界でも、ある種の特別なアクセサリーだ。婚約指輪や結婚指輪という概念もある。一般的に、ごく親しい相手から贈られるものだ。


 一瞬、そういえば昨日は誕生日だったし……と思うが、プレゼントならこの渡しかたはどうなのか。反応に困って、まじまじと手にあるリングを見つめる。


「ごくわずかだけど、魔力が動いてる……ん? あれ? ずいぶん精密な魔法式が組み込んでありますね」

「ふふ……そう、そうなの……美しいでしょう?」


 指輪を観察していたら、リアラもうっとりと熱い視線を同じものへ注いでいた。形はごくふつうの、まっすぐなものだ。色はシルバーカラーだが、おそらく素材は銀ではないだろう。なにしろ魔法が組み込んであるのだ。魔法の発動や維持に向いた素材に違いない。


 特徴的なのは、裏側を含めた表面にびっしりと刻まれた紋様だ。わかりづらいが魔法陣を応用したなにかだろう。小さすぎてよくわからないが。


 なおリアラが美しいと言っているのはリングそのもののデザインではなく、刻まれた魔法式のことを言っているに違いなかった。


「試作品が完成したのよ……あげるわ……」

「えっ?」

「……十歳に、なったのよ……ね?」

「それはそうですけど」


 まさかの誕生日プレゼントだったらしい。というか他人から贈られる初めての指輪が商品の試作品というのは、どうなのだろう。しかも包まれているわけでもなく、ぽんと渡された。


 とはいえ、もらえるだけありがたいので、ありがとうございますと手をにぎった。このままではなくしそうだ。つけるにしても、効果がわからないままつけるのはこわい。


「おはよう、リィズ!……あら珍しい、リアが起きてるなんて」


 どうしようかと思っていたら、急にドアがあいてサリアが顔を出した。社内のどこかへ寄ってきたのか、リボンを持っている。


「おはようございます」

「リィズ、誕生日おめでとう。これプレゼントよ」

「……ありがとうございます」


 サリアが手渡してくるリボンを反射的に受け取った。このふたり、似ていないところも多いのだが、こうやって変なところで似ている。


 もしリィズがプレゼントするなら、せめて包む。しかし双子はそんなことに頓着しないようだ。


「あら、その指輪……」

「リアラ師匠からもらいました」

「なんだ、考えることは同じなのね」

「……つまり、このリボンも新しい商品の試作品ですか」

「そうよ。前に小さなアクセサリーに魔法陣を組み込みたいって話をしたでしょう?」

「……。……あれ、本気だったんですね」


 前に、と言われてもすぐに思い出せなかった。たしか去年のことだ。隠し部屋を隠すための魔法陣を描く素材を相談した。そのとき突然、素材屋さんへ連れて行かれたのだが、そのときにサリアがそんな話を店員としていた……ような気がする。


 当時は、リィズを素材屋へ連れ出す建前だと思っていたのだが、違ったらしい。そういえば、そのときにちょっとした貴族令嬢の誘拐事件に遭遇した。その後のことはわからないけれど、そういえばどうなったのだろうか。


「最初は幅の広いバングルに魔法陣を組み込もうとしたんだけど、うまくいかなくて」

「それはそうでしょう。面積が小さすぎますもん」

「……縮小化には、限界があったから……」


 おそらくリアラだけなら、そこで諦めていただろう。しかしそこで諦めないのがサリアで、突飛なことを考えるのもサリアだ。


 そしてその結果は、指輪に刻まれた魔法式と、リボンに刺繍された魔法式でわかる。魔法陣はそもそも、呪文を発動しやすく記したものだ。


 呪文はわりといいかげんでも魔法は発動するけれど、理路整然と整えたほうが正確に発動するし魔力効率もいい。そうやって整えられた呪文のことを魔法式と呼ぶ。


 魔法式を整えてきれいに描いたものが魔法陣だ。魔法陣の主流は円形だが、それは円形が一番魔力循環効率がいいためである。ぶっちゃけ魔法式をそのまま描いても、効率は悪いが発動はする……というのが、きっとこの指輪とリボンなのだろう。


「魔法陣だと縮小化に限界がくるのに、魔法式のまま記述すれば限界がないんですか? ふしぎですね」


 目を細めてこらすと、耳は自然と後ろへ流れる。耳からの情報を減らして、視覚に集中するためだ。


 指輪の紋様は細かすぎてわからないが、リボンの刺繍はかろうじて読める。リボンは長いものが一本と、短めのものが二本あった。どれも両端に細かい刺繍がほどこされ、中心へいくにつれて、模様がまばらになっていく。


 おそらく結ぶ部分に魔法式がくると、発動に支障があるから魔法式を両端へ集中させているのだろう。短いリボンのほうは両端あわせてひとつの魔法になるらしい。魔力の流れを見ると、お互いが影響しあっていた。


「そう……魔法式だけで、簡潔に、無駄なく……美しい式を組んだの……」

「魔法陣と違って、周囲にある微弱な魔力に反応しちゃってますけど」

「仕方ないわ……それを止めると、魔力効率が……とても、落ちてしまうから」

「そういえば魔法陣は魔力を意図的に流し込んだときを発動トリガーにしてることが多いですもんね」


 誤作動を防ぐための処置だ。そうしないと、うっかり移動陣をふんだときに、あらぬ場所へ飛んでしまいかねない。ファンタジー小説のダンジョンならトラップになりそうだが、リィズたちが開発しているのは、より実用的なものだ。そんな罠はいらない。


 そしてこの世界にダンジョンは存在しない。……たぶん。少なくともリィズは聞いたことがなかった。


「魔法陣は描き込む位置も重要でしょう? 魔法陣が大きければその誤差もたいしたことないけど、小さくしすぎるとそのズレが無視できなくなっちゃうみたいなのよね」

「……コスパが、悪いの」


 小さな魔法陣を正確に記せば、バングルに魔法陣をいれることもできるだろう。しかし商品化するのに、細かすぎる正確性を求めたらコストがかかりすぎる。だからコストパフォーマンスが悪い。


 リアラの省略された言葉を読み取って、そうなんですね、とうなずく。


 描くだけなら、大きい魔法陣のほうが楽だ。細かい部分が多少ゆがんだりズレたりしても問題ないから。しかし素材を用意することが難しくなる。そのため、ほどほどの大きさを見極めることも大切だ。


「んー……うーん……なんの魔法だろう。読みづらい……」

「今日はまず、その魔法式を解読してもらおうかしら。そういえば魔法解析の練習も本腰いれないといけないわね」

「解読、解析ですか」

「……サリーも苦手でしょ……」


 サリアは苦手そうだ、と思ったところでリアラからツッコミが入った。ツッコミというには、かなりゆっくりでボソボソした声だったが。


「べっ、べつに、なんとなくわかるから問題ないわ!」


 つまり、なんとなくしかわからないらしい。細かい解析は苦手なようだ。魔法式は理詰めで解くものだからだろう。


「リィズなら、だいじょうぶよ……数式と同じ、だもの……」

「えーと……はい。がんばります」


 誕生日プレゼントは魔法解析の材料。それもまた、魔法の師匠らしいかもしれない。


 なおリボンは日焼け止めの魔法と、強風をやわらげる魔法の二種類だった。指輪はアルコールの分解を助ける魔法だ。リボンはともかく、酒を飲まないリィズに指輪はまだ早い気がする。

久しぶりですが、もし少しでも楽しみにしていただけるなら、ブクマ・評価いただけると励みになります。

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