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エロゲの初期配布ごみキャラに転生って冗談じゃないわよっ?!  作者: 改田あらた
2:九歳は隠し部屋に夢中になりきれない
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気をつけるにこしたことはない

読んでくださり、ありがとうございます。

再開します。

ここからリィズは9歳です。

 サリアとリアラに弟子入り……もとい、サリアラ・リランテに見習いとして勤め始めて半年がたった。夏になり、リィズは誕生日を迎えて九歳になっている。


 見習い仕事は順調だ。仕事といっても、魔法の勉強と計算をやっているだけだが。なお計算は、リアラの占いを強制的に手伝わされているだけである。おかげでそこそこ難しい数式も解けるようになった。正確には中学と高校の勉強を思い出した、というべきかもしれない。



 魔法はかなりの数を覚えたし、魔法陣の基礎的なことも理解した。それにともない、魔法語(美花の感覚だとドイツ語)も記憶し直している。大学時代の試験前一夜漬けとは違い、忘れずに反復練習も欠かさない。もっとも魔法を使っていたら忘れようもない、ともいう。


 覚えた魔法の中には攻撃呪文といってもいいものも多い。そういう意味で、リィズの念願は叶っている。帝都まで旅行したかいがあったというものだ。


 だが案の定というべきか、想定通りというべきか、残念な事実もわかった。どういうことかというと、


「やっぱりあなた、攻撃系の魔法の才能ないわね」


 ということである。ひととおりの魔法をすべて覚えたものの、攻撃魔法だけはなかなか安定しないし、威力もパッとしない。ゲームの設定どおりだ。


 いや、ゲームより悪いかもしれない。なにしろゲーム内のリィズは攻撃魔法が苦手とはいえ、平均の八割くらいはできていた。今の威力は期待値の半分以下である。


「それ以外は……悪くない、から……落ち込まないで……」

「特に補助や支援の魔法は、磨けばあたしよりずっといい使い手になるわよ」


 それもゲームの設定そのままだ。師匠ふたりに言わせれば、想定の二割増し以上の効果が出ているらしい。


「とにかく、よほど特殊な魔法以外はこれで全部覚えたわね。まだ半年なのにすごいじゃない!」


 落ち込んでいるリィズの背中をサリアがばしばしと叩いてくる。ちょっと痛い。ついさっきまで、魔法デザイン研究室ですべての魔法を覚えたかテストが行われていた。サリアとリアラお手制の防御結界内で、言われるまま魔法を連発したので少し疲れている。


 攻撃的な魔法もかなりの数つかったが、ふたりの防御結界はまったく傷ついていない。リィズの魔法がへなちょこすぎるからだ。サリアのやっぱり発言は、その結果を見てのことである。


「……攻撃の魔法なんて、めったに使わない……だから、問題ない……」


 サリアに叩かれたところをリアラが優しくなでてくれる。ふたりになぐさめられたが、ふつうの八割どころか半分以下なのはつらい。練習してどうにか八割くらいまでもっていきたいところだ。


「それより、明後日は筆記試験をするわよ。覚えた魔法を全部、魔法文字で書き出してもらうから」

「また全部ですか?!」

「……もちろん」


 サリアの言葉を受けて、とっさにリアラを見る。しかし慈悲はなかった。内向的で気弱に見えるリアラだが、主義主張ははっきりしている。しかも頑固だ。


 ふたりが言うならリィズに逆らうことはできない。教えてもらってる立場なので、強くでられないのである。


 がっくりと肩を落としたところで、サリアがアッと声をあげた。


「いけない、もうこんな時間じゃない! はやく帰らなきゃ」


 声につられて時計を見る。もう夜の六時半をすぎていた。いつもは五時には出ているので、かなり遅い。


「やっぱり呪文全部、っていうのは多すぎたんじゃないですか……」

「まさか今日中にすべて終わるとは思ってなかったのよ」

「……魔力が、尽きなかった……から……」

「そう、全部終わる前に魔力が尽きるはずなの。ふつうは」

「そうなんですか」


 ふたりが防御結界を解除してくれたので、その魔法陣の中から出る。いつもは部屋の真ん中にある机と椅子は、どけられて寄せられていた。それを元の位置へ戻そうとするが、それより早く帰れとリアラに背を押される。


「……気をつけ、なさい」

「ありがとうございます。なにかあっても、攻撃はともかく身を守るだけなら負けません」

「それもそうね。今だってあなたの防御結界を破るのは、あたしたちだって時間かかるもの」

「それなら次のテストの量をもう少し……」

「「それはダメ」」


 ふたりの声が重なる。だめもとだったけれど、即答されるとは。残念だ。



★★★



 お疲れさまです、お先に失礼しますと言いながら魔法デザイン研究室を出る。定時をすぎて無人になっている受付を通り抜け、建物の外へ。空はすっかり暗くなっており、これは本当に気をつけなければ、と気を引き締めた。


 サリアラ・リランテがあるところは大通りだから問題ないが、間違っても狭くて細い路地裏には近づいてはいけない。道のなるべく中心に近いところを選んで、都内を走っている循環バスに乗る。



 乗る前に、スカーフに仕込まれている防御結界を発動させるのを忘れてはいけない。これを忘れると、十中八九、痴漢被害にあう。痴漢率が高すぎるというより、仕事が終わるこの時間は女性のバス利用者が少ないのだ。


 そして多くの男たちは、女の子はさわられると喜ぶと勘違いしている。何度かさわるなと声をあげたことがあるのだが「女がなにを言ってるんだ」「子どもの冗談だろう」「お礼を言われるならともかく、腹を立てるとはなにごとだ」という反応だった。ひどすぎる。


 性犯罪という認識がまったくないのだ。この世界は、命の危機はあまりないものの、性被害にあう危険がとても高い。そういう意味でとても治安が悪いのである。


「ちっ」


 乗り込んですぐ、意図的にふれてこようとした手を感じた。それとともに舌打ちも聞こえる。舌打ちしたいのはこっちだ。呆れながらも無視する。


「自意識過剰だな」


 それ以外も、次々とひとが乗ってくるにしたがって押されたときにも、後ろから声がした。ふれるとつるりと硬い感触があるので、防御結界を使っていることに気づいたのだろう。


 バカにするような声音だったが、それも無視だ。暴力にうったえられそうになっても「耳が聞こえづらいです、ごめんなさい」と書かれたカードで対処している。


 毎度こんな感じなので、バスを使いたくないというのが本音だ。それでも使わないと通勤がたいへんなので、仕方ない。



 バスを降りたら帝都の門を出て、移動の魔法が置いてある建物へと小走りで向かう。昼間は開けた場所だし明るいから気にならないが、人影が認識しづらいこの時間は危険だ。もう少し早い時間でもリィズは何回か襲われたことがある。


 防御結界はそのままだけれど、それだけでは心もとない。ふれようとしてくる相手にささやかな反撃をする魔法陣も起動する。サリアラ・リランテの服に仕込まれた魔法陣のいいところは、一度起動したら維持にあまり意識を使わないところだ。


 さいわいなことに魔法はどちらも効果を発揮することなく、建物についた。いつものようにカードを見せて入る。しかし入ってからも気をつけなければいけない。通路は狭く、ひとが少ないからだ。うっかりどこかの部屋に連れ込まれたら逃げるのも一苦労である。


 だれか歩いている通路は避けて通り、少し遠回りしてサリアとリアラが借りている部屋に入った。そこでやっと安堵の息をつく。


「ふぅ」


 床に大きく描かれた移動の魔法陣には、小さな石がふたつ乗っている。ルビカーナを示す番号である二の左右、一と三に石が置かれたままになっていた。昨日から今日にかけて、ほかにこの移動陣を使ったひとはいないらしい。


 といっても、この魔法陣はサリアとリアラにリィズ以外だと、ふたりの兄しか利用できないようになっている。リィズ以外だと一番多く利用するのはサリアだが、彼女は今日一日リィズの魔法テストを見ていたので出かける暇はなかった。



 部屋に入ったらまずは着替えだ。サリアラ・リランテの建物に出入りするために、自社ブランドの服を着ているが、このままだと自宅付近で目立つ。認識阻害の魔法を使うという方法もあるけれど、防御と反撃の魔法を使ったまま、もうひとつ魔法を使うのはまだ難しい。


 この半年でかなり魔力のあつかいも上達したが、それでも魔法陣ふたつに維持のための魔力を送るだけでせいいっぱいだ。ちなみにリアラは平然と、魔法陣を使わずに複数の呪文で魔法を並行行使する。でもそれはリアラが規格外なのだと思いたい。



 ばさりと夏用のワンピースを脱ぐ。超ミニ丈なので、下着が見えないよう気をつけるのがたいへんだ。デザインはかわいいんだけどなぁ、とぼやきつつ、畳んでかばんにしまう。そして難民街で買ったシャツとショートパンツを着た。朝脱いで、この部屋に置きっぱなしにしておいたものだ。


 首に巻いていたスカーフはそのままにする。バス内の冷房がきついから、という理由もあったけれど、防御の魔法陣が仕込んであるので暑くても外せない。冬はコートだけ変えればなんとかなるので、もっと楽なのだが。



 着替えたら移動陣の中心に立って、足元から魔力を流し込んでいく。これができるようになったのは、練習し始めて三ヶ月以上たってからだった。できるようになってからは、ルビカーナ以外の移動先番号に魔力を流さないようにする練習をしている。


 ルビカーナの二番から遠い数字に流さないようにするのは、比較的かんたんだった。といっても一ヶ月以上かかっているが。しかしどうしても、隣の数字だけはうっかり魔力が漏れやすい。そのため魔力を流さないようにするための小石を、一番と三番に置いているのだ。


 魔力が満ちたら、開いた道をさっさと通り抜ける。最初は感動していたが、何回も繰り返せば慣れてしまった。この時間に部屋から出るときは、外にひとがいないか気をつけなければいけない。中の移動陣は魔力登録者しか使えないが、密室に連れ込まれる危険はあるのだ。


「……よし、だれもいない」


 全身で身構えてドアを少し開けて確認する。ちなみに顔はださない。せっかくある優秀な耳で音を拾う。なにをおおげさな、と思うかもしれないが、実際に部屋へ入られたことが一回、怪しげなひとを見かけたことが何回かあるのだ。


 なお入られたときは、反射的に風を起こす魔法(いつもドライヤー代わりに使っている魔法だ)をリィズの最大出力で使って撃退した。次も撃退できる保証はないので、気をつけるにこしたことはないのだ。

また毎日更新の予定です。


たぶんこの国に「痴漢」って概念はないです。

女をさわるのは男の義務くらいに思ってる人も多いし、さわる気が起きない女は憐れまれます。

女側もさわってもらえて光栄というひともいるので、認識が違いすぎるというか…。

でも混雑したバスを利用する女性が少ないということは、まぁたぶんそういうことです。


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