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エロゲの初期配布ごみキャラに転生って冗談じゃないわよっ?!  作者: 改田あらた
1:悪魔に弟子入りする八歳
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意識はそこで途切れた

 リィズの見習い開始は一週間後からということになった。街への出入りに使う、見習い商証の用意に時間がかかるせいだ。それがあれば、並んでめんどうな審査や手続きをしなくても、見せるだけで通れるという。


 見習い商証ができあがったら、サリアが届けてくれるらしい。ついでに服もいっしょに。もしサリアラ・リランテに並ぶような高級な服だとしたら、難民街で浮きそうだ。それが心配である。


「こっちよ」


 職場見学翌日、サリアといっしょに帝都を出た。トマトの油漬けは売れなかったし、手持ちの金も寂しくなってきたので、予定より早めに帰ることにしたのだ。それにリィズとしては見習いとして働くところが見つかったので、目的は果たせた。


 サリアが移動の魔法陣があるところへ案内してくれるらしく、言われるままついていく。門を出て外壁にそって歩いていくと、街の外に大きな平屋建てが見えた。


「街の中に移動の魔法陣を敷くことは禁止されてるわ。だから街の外に魔法陣を敷く場所があるの。お高いから基本は貴族専用だけど、移動魔法を専門にあつかう会社もあるのよ。主要な街なら、すぐ行けるわ」

「ルビカーナのまわりには、あんな建物なかったと思いますけど……」

「あそこにはジリアンナが移動陣を置いてないのよ。だからもっとこぢんまりとした建物だと思うわ。あっ移動魔法専門会社の名前がジリアンナっていうの。それから移動陣っていうのは移動の魔法陣のことね」

「ということは、ジリアンナの移動陣は使わないんですね」


 サリアと並んで話していると、だんだん建物が近づいてくる。ちなみにフェンニスは、ふたりの後ろを歩いていて、のけ者状態だ。


「あっちの大きな入口が、ジリアンナの移動陣を使うとき用。あっちの小さな入口が、賃貸移動陣部屋の利用者用」

「賃貸移動陣……?」

「区切る場所が違うわ。移動陣を置くための部屋を借りられるから、賃貸・移動陣部屋よ。移動陣を描きっぱなしにして、置いておけるようになってるの。いちいち書き直すのは面倒でしょう? てきとうな地面に描きっぱなしにしたら、踏まれたり風化したりと、維持も手間だし……」

「そうなんですね」


 入り口でサリアがカードを見せて、フェンニスとリィズは利用者票という紙に、日付と名前を書かされた。どうやら特殊なペンのようで、書くときに自分の魔力がわずかながら使われたのがわかる。


 予期せずに魔力が動いたので、ちょっとくすぐったかった。意図して魔力を流すようにしたことで、すぐにおさまったが。


 中へ入ると、長い廊下にいくつもの扉が並んでいる。扉には数字がふられており、まるでホテルの廊下かカラオケ店のようだ。奥へいけばいくほど、扉の間隔が狭くなっていく。どうやら借りられる部屋には大小あるようだ。


 サリアラが借りているのは、かなり奥のほうにある「11-27」と書かれたところだった。こんなにたくさん部屋があるということは、借りるひとがこれだけいるということだ。それにびっくりである。


「このへんの小さな部屋は、個人の魔法使いが借りてることが多いわ。ふたり用の移動陣がひとつしか置けないから。入り口近くの大きな部屋は、貴族や企業用ね」


 説明しながらサリアが持っていたカードを扉に書かれた魔法陣にかざす。それで鍵が開く仕組みらしい。サリアの背中に続けて中へ入ると、二畳ほどの本当に小さな部屋だ。そこの床いっぱいに魔法陣が描かれている。


 初めて見る実物の魔法陣だ。移動陣と言われて見ても、なにが描き込まれているのか、よくわからない。とにかく細かく、繊細な模様でいっぱいになっており、踏むのもためらわれる。


 サリアは気にせず踏み込み、部屋の端で床を……魔法陣を指差した。


「リィズの魔力を登録するから、ここから魔力を流してもらえる? あ、あなたはそこから動かないように」

「はい」

「ここか?……わかった」


 リィズに示されたのは、魔法陣の端にあるなにかの模様部分だ。フェンニスは部屋の入口、魔法陣のぎりぎり外である。


 言われた場所に手のひらをついて、そっと魔力を注いでいく。魔法以外に魔力を使うのは初めてで、勝手がよくわからない。


「遠慮しないでもっと流して。自分の魔力が魔法陣に満ちていくのはわかる?」

「……わかります」

「自分の魔力でぜんぶ埋めて」

「はい」


 どんどん流し込むが、こんなに魔力を一度に使うのは初めてだ。だいじょうぶだろうか。心配になるが、徐々に押し出す魔力の量を増やしていくと、魔法陣が染まる速度も早まる。やがて魔法陣のすべてがリィズの魔力でいっぱいになった。


 ……と思ったら、一瞬強く光って消える。なにかに使われたらしいが、一瞬すぎてなにが起きたのか、よくわからない。


「はい、これで魔力登録が終わったわ。この魔方陣はリアとあたし、それから魔力を登録したひとしか使えないようになってるの。これから帝都に来るときは、この魔方陣を使ってね。次までに利用者用カードを作っておくから」

「はい、ありがとうございます」


 鍵のかかった部屋にある魔法陣でも、そんな用心が重ねてあるらしい。すごいなぁ、と魔法陣を改めて見るが、やはり各模様にどんな意味があるのかわからなかった。


「この移動陣はふたりまでしかいっしょに移動できないの。だからまずは、あなたを先にルビカーナへ送るわ。いいかしら」

「俺か? わかった」

「リィズは一回、魔法陣の外で待っててね」

「はい」


 部屋のすみっこに立つと、フェンニスがおそるおそる魔法陣の中へ踏み込んだ。


「注意点を説明するわ。ひとつ、魔力を流さないこと。ふたつ、声を出さないこと。みっつ、向こうにつくまで、あたしの指示に従うこと。いいかしら?」

「わかった」


 フェンニスがうなずくのを見てから、サリアは一度息を吐いてから、すっとどこかを見た。


「起動、移動陣指定、ルビカーナ」


 ふわりと魔法陣にサリアの魔力が満たされていく。魔力が光となって立ちのぼり、ふたりが光にうもれたころ、サリアが見ていた方向に腕を伸ばしてフェンニスになにかを示した。


 ふたりが歩きだす。魔法陣から出てしまう、と思ったときにはふたりの姿はもうそこになかった。魔法陣から急速に光が失われていく。


「……すごい」


 自然と詰めていた息を吐き出す。大きな魔法を近くで見るのも、移動魔法を見るのも初めてだ。幻想的で、とてもきれいだった。


 しゃがみこみ、緻密な模様を目で追う。一部文字かな、と思えるところもあるが、ほとんど理解不能だ。魔法陣は意図的に装飾過多にして解読しづらくするのがふつうらしいので、わからなくても当然かもしれないが。


 それにしても、これを自分が理解して使えるようにならなければいけない、と考えると途方もない気がする。できるのだろうか。



 じっと眺めていたら、いくつか同じような模様が見つかる。きっと同じ文字なのだろう。ドイツ語がベースになっているとわかっていても、文字にすら見えないのはどういうことだ。これはE? G? それともP?


 凝視するが、さっぱりとわからない。見続けていたら、ふわりと魔法陣が少し光った。不意に見ていたところに影がかかる。顔を上げたらサリアがいた。戻ってきたらしい。


「いきなり魔法陣解読は難易度が高すぎるんじゃないかしら?」

「はい、ぜんぜんわかりません」

「そうでしょうね。じゃなきゃ教える意味がないわ」

「たしかに……」

「さて、使いかたを教えるわよ。こっちへいらっしゃい」


 手招きされ、再び魔法陣の中へ立つ。


「まず魔法陣を魔力で満たす。このとき、ほかの魔力が混ざってるとやりづらいから、同行者はできるだけ魔力を流さないほうがいいわね」

「はい」

「それから、この魔方陣は移動先を固定していないの。だから移動先を毎回指定する必要があるんだけど」

「あ、それがさっき言ってた言葉ですか? 魔法語じゃなかったけど……」


 ふしぎだったのだ。いかにも、な感じの言葉だったが共通語だった。でも、あの言葉で行き先を指定していたのかもしれない。と思ったら、


「ああ、あれは違うわ。なにも言わないと不安かなって思って言っただけよ」


 あっさりと否定された。


「えぇ……?」

「音声認識を魔法陣に組み込むなんて、非効率的なことしないわ」

「そういうものなんですか……」

「そういうものよ。ここを見て、これが一、これが二、これが三……」

「これ数字なんですか」


 言われた場所にしゃがみこんでよく見るけれど、ただの装飾か模様にしか見えない。


「ちなみにルビカーナは二に登録されてるから、魔力を流すときにほかの数字へ魔力を流さないように、二だけに魔力を流すようにするの」

「そんなことできるんですか?」

「できないとルビカーナに移動できないわよ。どこに行くか、わからなくなっちゃうわ」

「ひぇ」

「といっても、これまで魔力操作の練習なんてしてないわよね? そうすると最初は難しいだろうから、これを使いましょう」


 サリアが部屋の端に置いてあった小さな袋を取り上げ、そこから指の先ほどの石を取り出した。ちょうど魔法陣に描かれた、模様にしか見えない数字と同じ大きさだ。それを二以外のところへ置くように言われる。


 ちなみに数字は五十まであって、並べるだけでたいへんだ。ちまちまと石を置いていく間に、この石が魔力の流れをさえぎる効果があるものだと教えられた。これで強制的に魔力を流れないようにするらしい。


「これでいいわね。さあ魔力を流して」

「えーと……」

「足から流すのは慣れてない? 手から流すのとにたようなものよ」

「んー、ううんと……」


 いつも手先に集中しているので、急に足と言われても困る。足の裏に集中してみるが、魔力の流れがよくわからない。それでも外へ押し出す感じでやってみると、少しずつ魔法陣が染まりだした。


「全身から魔力が垂れ流し状態になってるわよ。もったいない」

「そんなこと言われても……」

「手はわかるんでしょう? まずは手から魔力をひっこめて」

「うぅ……はい」


 言われるまま、手から魔力を出さないようにすると、今度は魔法陣に流れる魔力も減ってしまった。うまくいかない。


「さわるわよ」

「ひゃっ」


 了解を返す前にサリアに腕をつかまれる。それがとてつもなく、くすぐったい。びくんと跳ねたリィズを気にせず、サリアは腕を放さない。腕をさわられてるだけなのに、ものすごくムズムズする。変な感覚だ。


「いまのが、魔力を押し返される感覚よ。覚えて」

「あははは、はははっ、んぁ、あっくすぐ、った……!」

「覚えないと、いつまでもくすぐったいから、がんばって」

「ひぅ、ンっ……ぅう」

「笑うのを抑えても仕方ないわよ? 押し返されるのと同じ感じで、魔力を引っ込めるの」


 サリアにつかまれたところに集中する。くすぐったい感覚から逃げるようにすると、不意にくすぐったくなくなった。指先以外で魔力を操ろうとしたことがないけれど、体内に満ちている魔力を、肌表面から少し内側へ押し留めるような感じだ。


「そう、できたじゃない。次はこっち」

「きゃっ、っはははは、あはは」


 逆の腕もつかまれる。くすぐったい。身体をよじるが、そんなことでは放してもらえないし、くすぐったさもなくならないのはさっきと同じだ。くすぐったくて集中しづらいが、どうにかそこからも魔力を引っ込める。


 ……と、今度はつかまれたままの逆の腕がくすぐったい。両方一度に制御するのは思ったより難しく、片方に集中すると片方がおろそかになってしまう。難しい。



★★★



 それからどのくらい時間がかかったのか、正直よく覚えていない。魔法陣に魔力を満たし終わるころには、リィズは疲れ果てていた。それでも全身に力を入れて、踏ん張っている。


 そうしないと魔力が外へ出ないようにコントロールできないのだ。一箇所だけなら、力まずとも出ていかないようにできるのだが、全身となるとそうもいかない。その状態で魔力を解放する。矛盾しているが、そんな感覚で魔力を流すと、なんとなく足から魔力が流れていく……気がするのだ。


 ふわりと移動陣から光が立ちのぼる。サリアのときと同じだ。サリアはかんたんにやっていたが、自分でやるととんでもなく難しい。


「見て」


 言われて集中するために閉じていた目を開ける。そこには光の通路とでも言うべき、ふしぎな道ができていた。


「この魔法は異なる座標と座標を、圧縮した短い道でつなぐことで、大幅に移動時間を短縮する魔法よ。もう魔力を流す必要はないから、行きましょう」


 サリアに手を引かれる。魔力は流していないのか、くすぐったくはない。引かれるまま歩き出し、光の通路へ入り……数歩歩いたら、急に光が途切れ、元の部屋に戻ってきた。


「ついたわよ」

「え? あれ……?」


 ついた、ということはもう移動したということだ。視線をめぐらせるが、さっきの部屋と同じにしか見えない。しかし壁に『ルビカーナ』と書かれた紙が貼ってあった。さっきはなかったものだ。床の魔法陣も、いくぶん簡素に見える。


「すごい、一瞬でした……」


 魔法を起動させるまでのほうが、ずっと大変だった。手を床について魔力を流していたら、もっと早く終わっていた気がするが。


 疲れ果てた身体を引きずって、部屋の外へ出る。長い廊下に扉が並んでいるのは、帝都の建物と同じだ。しかし廊下がだいぶ短い気がする。サリアに続いて外へ出る前に、またサインをさせられた。身構えていたので、今度は魔力を吸われてもくすぐったくない。


「リィズ!」


 建物を出た瞬間、フェンニスが駆け寄ってきた。もしかして待たせていたらしい。


「ずいぶんと遅いから心配したぞ!」


 ぎゅっと抱きしめられながら、遅いという言葉を噛みしめる。そういえば、かなり暗くなっている。空はかろうじて夕焼けの色がかすかに残っているくらいだ。


 帝都で移動陣の建物に入ったときは、昼過ぎだった。リィズはかなり長い間、魔力を流す練習をさせられていたらしい。


「お父さん、ごめん……ずっとここで待ってたの?」

「当たり前だろう。だいじょうぶか? ケガはしてないよな?」

「だいじょぶ……でも、すごく疲れて……」


 帰ってきたという安心感から、力が抜ける。立っていられなくなって、ぐにゃりと身体が倒れそうになるものの、すぐにフェンニスによって抱きあげられた。


「よし、もうだいじょうぶだ。寝てていいぞ」

「うん……」


 でもせめてサリアに礼を言いたい。そう思うのに、その思考すら急速に濁っていく。疲れた、眠い、お腹すいた。力が入らない、目を開けていられない、口も動かない。


「ちょっと無理をさせちゃったかしら……」


 サリアの声が聞こえた気がしたが、リィズの意識はそこで途切れた。

八歳はもう少し続きます。

(小説とはまったく関係ないですが危機契約にかまけて生息演算をすっかり忘れていて報酬を取り損ねました…悲しい……)

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