89.変な事件
2人の喧嘩を黙って見てる事しか出来なかった満。自分が弱いからと俯き、悔しさから歯を食いしばっていた。唯菜はそれに気付いていたが敢えて励まさず、2人に声をかけた。
「さぁ書類を見て今回の事件について考えましょ」
ソファの方に移動して書類をテーブルに並べる。
「ざっと見た感じだと今回の事件は人間が犯人でも魂外が犯人でもおかしくない事件よ」
被害にあった女性の写真が何枚も並べられている。しかも女性は魂を抜き取られたと言うより外傷で亡くなっているのが分かる状態だった。
「魂を抜き取って喰ってる訳じゃないなら人間の仕業じゃないのか?」
「一概にそうとは言えないのよ。最近では人間の仕業に見せて魂外が犯人って事も多くなってきてるわ」
唯菜が丁寧に教えながら書類をもう一度じっくり見ていく。満は教えられた情報を覚えながら亡くなった女性の写真を見ていた。
「これ…ちょっと変ね」
唯菜が何かに気付き1枚の書類を手に取る。
「どうしたんですか?唯菜さん」
「この女性達、皆残業ばっかりの子が狙われてるんだけど薬物反応が出てるみたい」
「薬物反応ですか?」
「しかもこの薬物、最近流行ってる魂外の血から作ってる薬ね」
「魂外の血?」
満が顔を歪めながら唯菜を見る。唯菜が満に分かりやすい様に説明を始めた。
「魂外の血は人間にとって毒で幻覚を見せたり気分をハイにさせてしまったりするの。その効果は普通の薬の3倍の効果だから気分も良くなってしまうのね。でも副作用もあって嘔吐したり倦怠感が出てしまったり髪が抜け落ちたりするから生活に支障をきたすのよ」
「なるほど…でも魂外の血なんか飲んだりする奴がいるのか?」
「頭のおかしい金を稼ぎたい奴は変なところに目を向けるものよ。今出ている薬に魂外の血を混ぜればもっと気持ちよくなれるし売れるって考えた馬鹿がいたのよ」
「でもそんな簡単に魂外の血って集められる物か?」
「身内だけで集める事も出来るけど身内が少なくてそれが出来ない場合、今日本では病気で苦しんでる魂外の為に医療部が各地を回って血を集めているのだけどそれをいい事に偽装して集める組織もあるみたいなの」
「だから簡単に手に入るのか」
説明を終えると唯菜が首を傾げながら書類を見つめる。
「でもおかしいって言うのは何故顧客に出来た女性達を殺しているのかって事なの」
「金が払えなくなったから口封じ代わりに魂を喰って人間が殺した様に見せたとかですかね?」
「それか本当に人間の仕業だったりね」
「人間の仕業って?」
「裏組織に属してる人間はどのルートからか分からないけど高値で薬を買ってそれを客に売ってたりするのよ。普通の薬より高くて効果も凄いからリピートもする。それで金が払えなくなった人間を口封じでって所もあるんだけどそれにしても今回は雑ね」
「ルートを調べて潰してってるバディもいるんだが間に合ってない状態だな。確かに雑ですね…口封じにしては遺体を放置してますし」
色々な情報に頭の中で整理をしながら聞いている満が頭から湯気を出しながらショート寸前になって目を回していた。




