8.挑発
10日目
三本の尻尾にも少し慣れてきたのか攻撃を受ける事はなくなっているが近づく事が出来ず、焦りながら攻撃を弾き返す日々が続いていた。もう尻尾の動きには慣れ、足を踏み込みさえすれば攻撃をお見舞いする事が出来るはずなのだがその勇気が出ずにいた。勇気さえ出れば、攻撃が通るかもしれないのにここに来て臆病になっている自分に満は気づく。あと一歩が踏み込めない満に望が言い捨てる。
「何だそんなもんか。だからお前の攻撃は飯事遊びなんだ」
さっきよりも巧みに三本の尻尾を動かし追い詰めていく望。唇を噛み締め、額に血管が浮き出る。怒りに任せ、乱暴に攻撃を仕掛けるだけでは意味が無いと言い聞かせる。
「おい臆病者。そんな縮こまった攻撃で勝てると思ってるのか」
そこに追い打ちを掛けるように煽る望。頭ではわかっているが感情が土石流の様に溢れる。
「お前の底が知れたな。ガッカリだ」
プツンと何かが切れる音がし、力ずくな動きへと変わる。
「誰が臆病者だっクソ野郎がぁぁ」
攻撃を仕掛けようとする満に真剣な面持ちで立ち向かう望。一撃が重くなっている事に気づき、一瞬驚きの表情を見せる。
優雅に靡く尻尾を見切ったかの様に掻い潜り、望の顔面を狙い、鋭い爪で攻撃を仕掛ける。望は軽く後ろに下がり避けるが、避けたと思った攻撃は頬を掠め切り傷を作った。頬に黒い血が伝い、地面に零れ落ちる。初めて傷を作られた事に頬を擦り口角を軽く上げ、期待の眼差しで満を見つめる。
「まだガキの遊び程度の攻撃だが伸び代はあるかもな」
その言葉と同時に満が腕を振り上げ、望に爪を突き立てる。その攻撃を見切ってたかの様に望が爪に軽く手を当て、満を吹き飛ばした。
瓦礫に吹き飛ばされた満にレンガの破片やガラスの破片が刺さる。それで血が出る事はないが苦い顔をして望を見上げる。
「大人しくするんだな。お前には言わなきゃならない事がある。俺はな…お前の事を任されている。能宮道幸にな」
その名前を聞いた瞬間、満の表情が驚きへと変わった。




