85.唯菜の力
「"小難しい迷いの蜘蛛糸"」
訓練室全体に身動きの取りにくい配置で糸が張り巡らされる。驚くべきは糸の範囲。訓練室全体に張り巡らせられる程の領域が唯菜のテリトリーなのだと思い知らされる。だが、満と相性がいいのは満の鋭い爪だと糸を簡単に切断する事が出来る事だ。
「糸を切る事は出来るけど…この糸切りにくいんだよな」
シャドーという事もあり強度が普通の糸と比にならない為、簡単に切れないのが難点であった。
「あら…簡単に切って大丈夫かしら?」
唯菜がその言葉と同時に自分の目の前にある1本の糸を指先で引く。すると満の爪が強制的き思い切り引っ張られる。
「なっ何だ?!」
糸は何処にも絡んでなくただ爪に粘着している様に見える。
「唯菜は…性質特殊型か」
「あらよく分かったわね。まぁ私のは分かりやすいわよね」
身動きが取れなくなる前に糸をもう片方の爪で切り落とす。だが、切った爪の方にまた糸が粘着し唯菜がその糸と繋がっている糸を引っ張った。
「クソっ切っても切ってもくっつきやがるっ」
くっつく糸にイライラしながらまた糸が離れた方の爪で切り落とす。がまたも糸がくっつきとその繰り返し。
「それじゃ日が暮れちゃうわよ、満ちゃん」
ずっと藻掻くように糸を切ってはくっつき、糸を切ってはくっつきと無限に繰り返しているうちに唯菜が他の糸を収縮させる。
「うわぁぁぁっ」
絡め取られるかの様に糸が全方位巻き付き、満は身動きが取れない状態になった。
「まだまだ私には届きそうにないわね」
微笑みなが近づいてくる唯菜。藻掻き、糸を解こうとするが少しも緩まず、それどころかキツくなってゆく。
「クソっ解けねぇっっ」
「そんな簡単に解ける訳ないでしょ。満ちゃんの負ーけ!今日はこれくらいにしてあげるから明日戦う時までに対策考えるのよ」
唯菜が小指で糸を弾くと糸が影に吸い込まれ消える。満が開放された安堵でへたり込む。
「お前ら2人とも面倒臭いシャドーなんだな…」
「あらだからバディなのよ。相性もいいからね」
2人が話していると和真がブロックから降りてきて近くまで来る。
「俺よりも厄介なのは唯菜さんですけどね」
「それはよく言われるわ」
ニコニコと微笑みながら嬉しそうに答える。満は2人に手加減をされ、しかも唯菜に至っては手も足も出ない事に悔しさで言葉を失う。
「今日はもう帰りましょうか。明日も訓練あるんだしね」
「そうですね」
2人が扉に向かう後ろを無言で何かを考えながらついていく満。




