56.小さな喜び
「予定って何してたんだよ」
「まぁ後でわかるから後で言う」
なんだそれと思いながらクタクタになった満がフラフラと望についていく。昨日から慣れない環境に初めて会う魂外達。知らない知識に新しい世界。満は体の芯から疲れており力を抜けば今にも膝から崩れ落ちそうだった。
「授業は何を教わったんだ」
望がエレベーターの前に来て、ボタンを押し満を見る。
「最強の戦型について教わった」
「最強の戦型か。確かに知っておいた方がいいな」
「お前は何型なんだよ」
満の問いかけに軽く口角を上げ、エレベーターがチンと音を立てる。
「異形の姿の性質特殊型だ」
エレベーターに乗り込みながら話す望。満はやっぱりと思いながら頷く。だがどんなに考えても何の性質なのか分からずにいた。
「何の性質なんだよ」
その問いかけに無言のままの望。
「おい、聞いてんのか」
満が再び聞くといつもの余裕な表情で軽く応える。
「そこまで教えたら面白くないだろ?戦闘訓練をしてやるからその時に考えるんだな」
「何だよ。教えるくらいいいだろ。お前の方が遥かに強いんだから」
「強いのなんて当たり前だ。戦いながら見極める能力も必要になるからな。訓練だ」
望の返答に悔しながらも納得する満。1階に着き、エレベーターを降りる。
「今日はもう家に帰るぞ。ゆっくり休んでまた明日から色々してもらうからな」
そう言うと車の方に足を進める。車に乗るとエンジンをかけ、走り始めた。来た時同様、今日は荒々しい運転はしないんだなと思いながら助手席で寝落ちそうになる満。
マンションに着き、車を止める。ロビーに行くと何やら騒々しく業者が荷物を運んでいた。
「もう運んでるのか。これを買った阿勝望だ」
「あぁ、阿勝様。あんなに買ってくださったんですからこれくらいは当然です」
「そうか。じゃ家に運び込むだけ運んどいてくれ」
「かしこまりました」
何の業者か分からない男がペコペコと望に頭を下げる。
「何か買ったのか?」
「お前のベットやら机やら服やらだ」
「えっ俺の?」
「何も無いんじゃ生活出来ないだろ。ずっとソファがベットな訳にもいかないからな」
望の意外な行動に満がきょとんとしながら遅れて喜びがやってくる。ただの傲慢なクソ野郎ではないのかと思いながら荷物を運び込んだ業者を見送る。
「よし、運び込んでは貰ったからな。空いてる部屋に入れて組み立てるぞ」
「おっおう」
喜んでいるのがバレないようにわざと素っ気なく返事をする。家に入り、望が空いてると言った部屋の扉を開く。
「…………………」
「…………………」
目の前はダンボールの壁が出来ており、中に入るどころの騒ぎではなかった。
「………これでどうやって組み立てろって言うんだよ」
「……悪いが片付けからだな」
素直に喜んだ気持ちを返して欲しいと思う満であった。




