43.挨拶回り⑨
「それで大切なお話とは何でしょうか?それにそちらの方は?」
九尾が先に口火を切り、不思議そうに満を見ながら望に尋ねる。
「大切な話はこいつの事だ。満、簡単に自己紹介しろよ」
前の本部長たちの時は、望が勝手に話を進めてくれていたのでいきなり話を振られ戸惑う満。
「えっあっ…能宮満だ。…よろしく」
名前だけを言い、望が言った通りとても簡単に自己紹介を終わらせる。
「満さんですね。私は九尾元樹と申します。以後お見知りおき下さい」
おじいちゃんスマイルで丁寧に自己紹介をする九尾。九尾は髪が全て白髪で前髪を右側に緩く分けている。口元は髭を貯えているが綺麗に整えられている。服は白シャツに黒の蝶ネクタイ、濃い灰色のベストに黒のタキシードを着ている。まさに老紳士を具現化させた様な方だ。
「昨日から俺たち対策部に入った新人なんだが俺のバディになった。今後は分からない事が多いと思うから助けてやってくれ」
九尾が驚いた顔をした後、また優しい笑みを浮かべ口を開く。
「漸くバディを見つけたのですね。まだ不安定ではありますが満さんは強くなりますよ」
九尾は先程の天吏とは真逆の事を言う。満が顔を顰め、俯きながら応える。
「上辺の言葉なんかいらない。本当に思ってる事を言えよ。天吏みたいに弱そうとかお荷物だとか思ってるんだろ」
天吏の言葉を気にしている満が刺々しく九尾に噛み付く。九尾はきょとんとした後に控えめに笑いながら満に言葉を返した。
「なるほど。天吏さんに会ったのですね。あの方は少し厳しい方で望さんへの忠誠が強いんです。ですからお嫌いにはならないで欲しい。私が言った事は本当の事ですよ。確かに今は不安定ですが貴方はちゃんと強くなれます。強くなろうという意志を捨てなければ大丈夫ですよ」
九尾が優しい口調で安らぎと共に強い自信を満に与える。満が顔をあげ、九尾をまじまじと見ると少し照れくさそうに言葉を投げる。
「強くなるなんて当たり前だ」
満が少し元気を取り戻した事に望はほっとする。流石は九尾だなと思いながらまた自信に満ち溢れた笑みを零し、席を立った。




