38.挨拶回り④
望が口を開く前に薗が目を輝かせ、満の背中をバシバシ叩く。
「特殊体質じゃねぇか!やったなルーキー。これで検査のやり甲斐があるってもんだ」
記録をした薗が先程とは打って変わってハイテンションで饒舌になる。
「他に何かねぇのか?水を被っても大丈夫だとか血が赤いだとか。それともあれか?気づいてねぇだけでもっと色々変わった特徴があるんじゃねぇか?何ならあたしがお前の体を開いて中身を色々と…」
ジュルッと唾液を飲む音をさせながらジリジリと満に近づく薗の頭を殴る望。
「いっでぇな望?!何しやがるんだ」
「興奮しすぎだ。俺のバディを解剖するな」
望の言葉に勢いよく顔を上げ、驚いた顔で見つめる。
「バディ?お前バディは作らねぇって言ってたじゃねぇか」
「事情が変わったんだ。こいつは俺が育てるからな。しょうがなくバディにする」
「けっ…んだよ、しょうがなくって。頼んでねぇし」
不服そうに呟く満をほっとき薗が望に忠告する。
「お前は特別魂外対策本部の代表取締役みたいなもんだ。皆お前に拾われたり勧誘されたりで来てる。こんなルーキーをバディにするなんて反対する奴ばかりだぞ」
煙管を吸い煙を吐く。足を組み、呆れた顔で言葉を続ける。
「しかもお前のとこのユラは絶対認めないだろ。あの暴れん坊将軍が黙ってないぜ」
どうするんだ?と言う代わりに煙を望に吹き掛ける。
「ユラはまだ帰っては来ないだろう。他の奴がどう言おうともう決めた事だ」
望の傲慢な応えにやれやれと呆れながら満に声をかける。
「望は決めた事を曲げる事はねぇ。色んな奴に目をつけられるだろうが頑張れよルーキー」
満の肩を軽く叩き、薗がニヤッと笑う。戸惑っている満を置き去りにし話が進んでいく。
「さて体重が知れたからな。後は血を取らせて貰うぞ。これでルーキーの魂水安薬が作れるな。事件を追うと何が起こるかわからないからな。対策部は全員、自分用の魂水安薬を持ってるんだ。出来たら実山に持っていかせるからそれまで待ってろよ」
慣れた手つきで袖を捲り、止血帯を腕に巻く。その準備中に薗の隣に黒い女が現れ、満の腕にしがみつく。びっくりした満が暴れようとするが
「じっとしてな。すぐ終わるからさ」
一体何をされるのか不安な面持ちで見つめていると女が極細の牙を満の血管に突き刺した。ゆっくりと血を吸っていき、口を離す。それと同時に女の指先から黒い液体が滴り落ち、小瓶に溜まってゆく。
「これはお前の血とあたしのシャドー、"血を吸う看護師"の影が混ざった物だ。これで薬を作る訳だ。あたしのシャドーを通せば1週間経たずに薬を作る事が出来るから待たせる事はない。 今日はこれで終わりだな。じゃまた今度ゆっくり検査させろよ。厄介な奴が多いが挨拶回り頑張れよ」
ニヤッと笑い、止血帯を取る。薗が軽く手を振り、満は少しクラクラしながら立ち上がり望と共に部屋を出た。




