32.訪問
またもげっそりとした顔でアホ毛を弱々しく揺らし地上に降りる満。何故こう何度も同じ目に合わなければならないのかと思いながらヨタヨタと唯菜の後を歩く。
「ちゃんと来る前にメッセージは入れたから大丈夫よ」
一体誰と連絡をしたのか。今どこに向かっているのか。そんな疑問よりも早く休みたいという気持ちが強い満は大人しくついていくのみ。
「ここよ」
気づくとタワーマンションの目の前に立っていた。唯菜がタワーマンションに向かって歩き始め、自動ドアが開く。入ってすぐに台座と重く閉ざされた扉があるがそれ以外は何も無い。唯菜がその台座の上に手を置くと青く光り、手の平をスキャンする。人物認証が出来たのか重く閉じていた扉がゆっくり開き、唯菜が中に入っていく。満が唖然としながらその光景を見ていると
「満ちゃん置いてっちゃうよ」
唯菜が振り返り声をかける。慌てて唯菜の方に駆け寄っていくが建物の中も豪華な仕様だ。満が入ると扉はすぐ閉まり、また重苦しい雰囲気を漂わせる。ロビーであろう場所は豪華なソファに西洋の甲冑が所々に飾ってある。唯菜がフワイドルの前に立ち、乗り込む。
フワイドルとは現代で使われている建物の中を飛ぶ様に移動する装置である。扉を潜り、階数を言えばその場所まで飛ぶ優れ物。今でもエレベーターを使っている建物もあるが最近ではフワイドルを使う建物も多い。こちらも開発者は魂外発明部と理仁である。
「50階まで」
乗り込んだ唯菜が階数を言う。その瞬間、唯菜と満がふわりと浮き、ゆっくりと上へ進んでいく。全然風を感じる事がないのにどんな原理で浮いて運ばれているのかは謎である。直ぐに50階に着き、フワイドルから降りる唯菜と満。唯菜が迷う事なく進んでいく。角の部屋まで来て、足を止める。呼び鈴を鳴らし数秒待つと扉が開いた。
「おい唯菜。忘れ物なんかしてないが何を届けに…」
頭を掻きながら口に煙草を咥え、シャツにボクサーパンツ姿で出てきた望が目を丸くする。
「おい…まさか…」
満もワナワナと震えながら口を開く。
「忘れ物の満ちゃんでーす。お届けに参りました」
「「ありえねぇ」」
唯菜が楽しそうに言葉を発した直後、同じ事を同時に言い放った。




