31.空中散歩
外に連れ出し、建物がある方に歩き出す唯菜。その後をついて行く満。どこに行く気なのかと思いながら唯菜の背中を見つめる。
「ここら辺ならいいかな」
人目につかない場所まで来て、唯菜が立ち止まる。
「まさかこんな所で野宿しろとか言わないよな?」
満が苦い顔で唯菜を見つめる。唯菜が笑いながら満に応えた。
「そんな事言わないわよ。ここから移動するんだけどちょっと荒々しくなるからちゃんと捕まっててね」
荒々しく?捕まる?頭の上にハテナを浮かべながら屈んで待っている唯菜の背中におんぶの状態で乗る。
「じゃぁ行くわよ」
立ち上がった唯菜が手を前に出す。何が始まるのかと見つめていた次の瞬間、凄い勢いで宙を待っていた。
「はっえ?!」
満がパニックになり、手を離しそうになる。
「こらぁ!絶対離さないでよ」
夜の街並みを照らす明かり。その明かりよりも高い位置を勢いよく通り過ぎていく唯菜。何が起きているのかさっぱり分からない満が叫びながら必死にしがみつく。
「こっちの方が早く着くからもう少し我慢してね」
満の片足を手で支え、もう片方の手を前に出し何かにぶら下がるように落ちながら上がっていく。少し余裕が出来、唯菜の手元をよく見ると黒い糸が指先から出ているのが分かる。交互に手を変えながら糸をビルに貼り付け、ぶら下がりながら飛ぶ。この事実を知るとその光景はまるで何処ぞの映画の様に宙を舞っている。これが唯菜のシャドーの力なのはわかったがどんな原理だかまでは理解出来ないらしくまた叫びながら必死にしがみつく。夜の街を歩く人々が満の叫び声を聞き、不思議に思いながら天を仰ぐ。明かりの届かない暗闇を進んでいる為、人々に2人の姿が目撃される事はない。
「もうすぐ着くからね、満ちゃん」
「もっ早く地上に下ろしてくれぇぇぇ」
一日で地上の猛スピードと空中の猛スピードを味わった満だった。




