30.住む場所
「説明してたら夜になっちゃったわね。望ちゃん帰ってこないけどどうしたのかしら」
唯菜が和真に報告書を渡し、扉の方を見つめる。それと同時に唯菜のbird phoneが光り、指輪から鳥が羽ばたいた。
bird phoneとは、遠くの人物と連絡を取れる機器で指輪からデジタルの鳥が飛び、メッセージの場合は鳥が文字に変わる。通話の場合、鳥に話しかければ話したい相手と鳥を通じて話す事が出来る優れ物。一般でも販売されており、これを開発したのは魂外発明部と理仁である。
「望ちゃんからね。何かしら」
鳥が姿を変え、文字になる。
『上には事情を話し、了解を得た。今日は疲れたからそのまま帰宅する。望 』
業務連絡の様に短い文が次第に指輪に吸い込まれ消える。唯菜が苦笑いをしながら満を見つめ、言葉を投げかけた。
「望ちゃん疲れたからって帰っちゃったみたい」
「は?!俺はどうすればいいんだよ?帰るとこなんてないし、ここら辺なんて来た事ないから何も分からないぞ」
満が困りながら慌てる。その様子を見て、その場の全員が困り始める。
「俺たちも何も聞かされてないからな。どうしますか」
和真が唯菜に問いかける。唯菜も腕を軽く組みながら困った顔で応える。
「そうね。住む場所は必要よねぇ。んー…私の家に来る?」
唯菜が軽く提案するがその提案は満が断るよりも先に和真が反対した。
「だめです!絶対に!!それならそこのソファにでも寝てればいい話ですよ」
和真が必死に止めようとするのを楽しそうに笑いながら話す唯菜。
「冗談よ。流石に一緒に住むのは私も落ち着かないわ」
2人のやり取りを見ながら理仁が難しい顔をしながら話しかける。
「俺はあんま家にいないから連れていくって言ってもな」
「それなら魂外専用の…」
紗夜が提案をしようとした時
「あーーーっいい事思いついちゃった。満ちゃん、私が泊まれるとこまで送ってあげるから一緒に行きましょ」
唯菜が満の手を引き、扉を軽快に開け出ていった。
「なんか嫌な予感がする…」
「奇遇ですね。僕もです」
「え?嫌な予感って何だよ?楽しそうだったぞ?」
どこまでも呑気な理仁を放置し、心配する和真と紗夜が扉の方を見つめた。




