2.誘い
「俺もこの5年、君の事をずっと探していた。能宮満」
能宮満と呼ばれた少年が望を睨みながら鼻を鳴らす。
「お前みたいなクソ野郎に探されてたなんて虫唾が走るけどこっちからしても好都合」
黒い爪同士を擦り合わせ嫌な音を立てる。
満の殺気はどんどん膨れ上がっている様で言葉にしなくてもビリビリと伝わる威圧。その威圧にも顔色一つ変えずに望は淡々と言葉を並べる。
「闇組織や密売人を狙って喰っているという情報は得ている。罪を犯してる者を喰っても罪になる。こちらが定めた法に則らなければ罪だ」
望の言葉に嫌悪を示す満。顔を顰め、舌を出し、望を馬鹿にしながら暴言を吐く。
「国の犬が…俺はお前らが大嫌いだよ。お綺麗な事を言っておきながらお前らだって罪になる事をしてる。この世に信じられる奴なんかいない。お前だって俺と同じな癖に」
言葉を吐き捨てたと同時に鋭い爪を望に突き立てた。望は来るとわかっていたのか避ける事なくただ軽く黒く大きなその爪に手を添えた。その瞬間、勢いよく突き立てられた爪は弾かれた。満は何が起きたのか理解出来ず、今度は逆の爪で望に攻撃を仕掛ける。だが、またしても望が爪に軽く手を添えると勢いよく爪は弾かれ満の体勢が崩れた。
「何で攻撃が当たらないんだよっ。お前なんか小細工でもしてんのか?!」
息を荒々しくしながら攻撃が当たらない事を焦っている様子の満。
「小細工ではないがこれが俺の能力だ。お前は自分の能力の半分どころか10%も使えてない」
望がゆっくりと満に歩み寄り、手を差し出す。
「俺が君を探してたのは逮捕する為じゃない。俺と一緒に来い。能宮満」
有り得ない申し出に目を大きく見開き、言葉を失う満を望は不敵な笑みで見つめる。
「は…?俺の聞き間違い?なんかとんでもなく吐き気のする冗談を言われた気がするんだけど」
満が先程よりも不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、馬鹿な事を言う望を睨みつける。
「冗談ではない。俺はお前をこちらに迎え入れようとしている。俺に着いて来い、満」
冗談を言っている目ではないと満は感じているがそれを素直に受け入れる程、子供でもなければ器が広い訳でもない。
「何で俺がお前なんかに着いて行かなきゃなんねぇんだよ。意味わかんねぇ事ばっか吐かしやがって。その何考えてんのかわかんねぇ脳みそミンチにしてやるよ」
苛立っているのか爪を擦り合わせ、先程よりも嫌な音を立てる。怒りに身を任せ、満が動き出そうとした時、呆れながらも少しやる気を見せようとする望が戦闘態勢に入った。
「まだ飯事遊びの様な戦い方しか出来ないお前に教えてやる。真の戦い方をな」
言い終わると同時に望の腰から黒く長細い尻尾が三本生え、相手を挑発するかの様に畝る。尻尾の先は鎌の様に鋭く、命を刈り取る形をしている。
「魂外の先輩としてお前に本当の戦い方を見せてやる」




