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6. キョウ人は、ゾンビってナマエのみちを歩く

 山へ向かう道の途中でふと足が止まる、目の前にバケツが落ちていた、近くにはビルがあり、その窓には紐のついた金属片、って事はこの辺に鍵の一つもあるはず、よし見つけた!・・・クエスト受注!


 クエスト名は何にしよう、お宝を探せ?いや、それだと芸がない、よし決めた。クエスト名(お宝を独り占めだぜ)を発令する!壁に受注しましたって書いておこう、ちゃんとやらないと報酬貰えないかもだしな


 ビル内の捜索を始めた俺は片っ端から鍵のついた部屋を探す、何処かな?何処かな?


 程なくしてそれは見つかった、なるほど、これは分かりやすい


「こんにちは!」


「・・・誰?」


 俺が見つけたのは誰も居ない静かなドア、なんの変哲もないそのドアには大きな文字が書かれている「助けて」そう書かれたドアをノックしたら返ってきたのが今の返事、幼い子供の声だ


「怪しいものだけど、入れてくれないかな?」


「怪しい・・・の?」


「そう、だって知らない大人についていったらいけないって習っただろ?俺は知らない人だから怪しい者に間違いない、でも、入れてくれないと何もできない、このままだと君は死んじゃうよ?一か八か怪しい者にかけてみないかい?」


「でも、お兄ちゃんとお姉ちゃんが・・・」


「よく思い出して?二人は最後になんて言った?君を置いて部屋にこもる前の話だよ?」


「二人が部屋に入った事、なんで知ってるの?」


「実は君の兄と姉からメッセージを受け取ったんだ」


「なんて言ってたの?」


「それは開けてくれないと教えられないな?」


「・・・」


「どうする?このままここで怪しくない人が来るのを待つか、怪しい俺と行くか」


 子供なりに悩んだのだろう、時間にして5分、これを短いと見る人もいるだろう、けれど5分も悩んだと考えることもできる、なぜなら子供はすでに何日も食べてないはず、水すらろくに残ってないだろう、飢えと渇きに苛まれ、助かる見込みのない状況で差し伸べられた怪しい手、それをすぐさま取らなかったのは、ここまで追い込まれてなお兄と姉の教えを守ろうとしたから、そしてその二人を置いて行きたくないから、5分という時間は十分悩んだ時間だと俺は思う


「二人はなんて・・・言ったんですか?」


 ドアを開けて敬語で話し始めたのは5歳くらいの小さな男の子


「二人のメッセージは『君を助けて』だよショータ君」


「僕の名前は一樹です、よ?」


「大丈夫、大丈夫、わかってるよショタ・・・もといショータ君」


 グヘヘ、先ずは侵入成功、後は奥の扉を開けるだけ、さてとお宝拝見


「そこは開けたら駄目だってお姉ちゃんが・・・」


「大丈夫、君はドアの前で待ってなさい、決して中に入ってはいけないよ?覗いてもいけない、そうしたらツルが鳥になってパタパタと飛んでいってしまう!」


「ツル?なんの事?」


 く!もはや童話を知らない子供すらいるとはな、コレがカルチャーショックか!


「いいから、いいから」


 さてと拾った鍵を差し込みガチャっとな


 コレは素晴らしいお宝、中にあるのは一つの死体と一体のゾンビのみ、ゾンビは手足の腱が切られ柱に鎖でくくりつけられ、更に紐で結ばれた厳重極まる状態、たとえ怪力ゾンビであってもコレは外せないな、じゃあお休み


 手斧を振り下ろし、ゾンビの動きを止める、更に何度も振り下ろす、顔の形がわからないように、手足を切り、胴体に切りつけ、骨を砕いて、内臓を潰す。ゾンビというのは動かなくする事はできるが殺すことは難しい、何しろ首を切り離しても動く個体が3割ほどいる、その上で体をバラバラにしてもなお何日も動いていた。奴らを殺す確実な手段は、栄養不足による餓死か火でくまなくこんがりと焼く事のみ。だから俺は解体する、たとえ死んでいなくとも、誰も傷つけられないように


「おまたせショータ君」


 いやー良いものを見せてもらった、苦労したかいがあったね


「何してたの・・・ですか?」


「別に大したことじゃない」


「嘘だよ、だってお兄ちゃんを・・・バラバラに・・・」


「君の兄はゾンビになってた、わかるよね?」


「でもそこに入るときは大丈夫って言ってくれたよ・・・」


 うむ、やはり無理だったか、鍵は閉めたけど、そもそもドアそのものがボロくて傷だらけだからな、覗き放題だよな。どうせただ否定しても押し問答だしな「見ちゃいやん!」もしくは「見ーたーな!」ふむ、どっちで行こう?


「じゃあ、どうする?」


「え?」


「君にはいくつかの選択肢がある、このままここにいても良いし、俺と出ていっても良い、この2つ以外の方法を選んでも良いし。勿論俺と戦う選択肢だってある」


 まぁ、選択肢はどれを選んでもさして変わらないけどね。人妻には戦いで負けるだろうけど、流石にショタには負けない、もしショタが拒否しようとも強引にあんな事やこんなことが出来る。ウェッヘッへ


「・・・」


「怖いかい?間違えたら死ぬかも知れないしね。でもね、気付いてなかっただけで、前からこうだったんだよ。世界がゾンビだらけになる前からね、何気なく口から出ただけの言葉、適当に返事しただけの言葉、ほんの些細な気持ちから出た悪口、全部人に影響を与えるんだ、場合によっては命に関わるほどのね。皆自分は関係ないと思ってるから普段の言葉に責任なんて感じない、こうして自分の命を感じて初めて言葉の重みを理解するだけで、前からこうなんだよ」


 これくらい適当なことを言えば理解できないけど雰囲気に流されて「わかった!」とか言ってくれるだろう。だって5歳児のショタだもんな!


「考えさせてください」


 あるぇー、何この子、子供っぽくない。将来有望だけど可愛げがない、そんなんじゃ将来ハゲるよ?こんな哲学めいた嘘くさい話なんて適当に返事して流さないと!


「いいよ、君が納得するまでの時間くらいはあげよう」


 でも暇だな、ショータ君の兄ゾンビをズタズタにするのに体力使ったから、しばらくはお疲れモードでまともに動けないし・・・あれ?ひょっとして俺ってばショータ君に負ける?


「・・・一緒に行きます」


 悩み抜いたであろうショータ君は、俺を正面から見据えてそう言った。何か目が怖い、ひょっとして復讐の機会でも狙われてないだろうか?


「じゃあ、行こうか」


 ともあれ無理やりじゃないのは助かるな、後は薬でも盛って、眠った好きにアレやコレを・・・ぐふふ


「聞いても良いですか?」


 キラキラお目々のショータ君がなにか言い始めた、復讐フラグの回収!?早くない!?


「ん?何かな?」


「お兄ちゃんもお姉ちゃんも何日も前に・・・ゾンビになってます、どうやって二人と話をしたんですか?」


 なんだ、そんな事かツマンナ。そもそもこのショタ君、最初は二人の死を認めてない様子だったのに、いつの間にこんなに成長したんだろう


「外にあれが落ちてたんだ。二人が、それこそ死んでも君を助けるための仕掛けだよ」


 俺が指さしたのはビルの前に落ちているバケツ、そして紐のついた金属の棒、誰がこんなものを?当然ショータ君の兄と姉だろう、ゾンビウィルスに感染し症状が出始めた二人は助けを呼ぼうとした、バケツを窓から吊るし、金属の棒をくくりつけ、紐を引っ張るとカラカラと音が鳴るようにした、紐はゾンビとなった兄にくくりつけ死後に何度でも音がなるようにして、姉の方は自ら命を断つ、これで完成。死ぬ気どころか、文字通り死んでも弟を守り、そして命を助けた訳だ、泣かせる良い話じゃないか


 自分たちがショータ君を傷つけないように鍵をかけてその鍵を窓から捨てたのは見事だか、このゾンビ探偵アグーニの前では簡単な問題だったな。二人の誤算は、バケツや紐の耐久力が低かった事、所詮は素人だから仕方ないけどね、この機械探偵アグニゾンビならもっとスマートに出来たのにな


「・・・」


 無言になり、静かに俺についてくるショータ君、カルガモみたいでカワイイ、そろそろ味見をば


「いました!」


 ん?誰だ?この声は・・・確か二乃君の下僕の一人の・・・


「ウップス君か!?」


「違いますルクスです」


 なんて迅速なツッコミ!名前もキラキラしてる上にこの反応速度、一緒にコンビ組みませんか!?M1優勝を目指そう!


「もう吐き気は良くなった?」


「ッ!やっぱりあの時近くにいたんですね・・・」


「まぁまぁ、細かいことは置いといて、そこをどいてくれないか?」


「それができれば苦労しませんよ、僕が見つける前から二乃さんはあなたを見つけてます」


 どうやって見つけたのだろう?姿は見られてないはずだ。まさか道行くゾンビの足を切ってきたせいでその後を辿られた?それともショータ君クエストを見つけたときに書いた落書きのせい?いや、きっと二乃君はエスパーなのだろう、赤松(貧乳)とは違う能力者!これは油断できない!


「久しぶりだな」


 現れたのは坂牧 二乃、鋭い眼光にオールバック、見た目はヤンチャしてそうな不良、言動も不良なのでとても怖い!


「おひさ〜」


「早速で悪いが素直に死んでくれ」


 怖!久しぶりにあった仲間にそれはないだろ、もっと旧交を暖めようぜ、トモダチだろ?


「く・・・俺はここまでか、わかったよ。やるならやれ!」


「・・・」


 何故か攻撃してこない二乃君、慈愛の心に目覚めてくれたか!?そうだよ、争いは何も産まないのさ


「話し合う気になってくれたんだな」


「てめぇ・・・」


 何故か怒り出す二乃君、ははん、さては君は情緒不安定だな、こういうときはカルシウム摂らないと、あ、スポーン地点に骨あるよ!よかったらどうぞ!


「まずは武器を捨ててお互いに手を広げようじゃないか、そしてハグをしよう」


「このキチガイが!」


 何故か切れだす二乃君、これだから最近の若者は切れやすいとか、名前すら知らない偉そうな人達に言われるんだよ、おー怖い怖い、キミもそう思わないかい?ショータ君


「諦めましょう二乃さん、今回は無理です」


 二乃君を止めたのはツッコミ担当であり俺の相方であるルクス君、イイネボタンを押したい


「ここまで来てか!今なら仕留められる!」


 怖い怖い二乃君は俺を・・・正確には俺と俺の直ぐ側にいるショータ君を睨みながら今にも手に持った火炎ビンに火を付けそうな雰囲気を醸し出している、そしてショータ君は勇敢にも俺の前で両手を広げている、キミ勇気あるね、その両手はハグの証か!


「無理ですよ、それができないから見つけられたんです」


 ん?まさかショータ君は俺を庇ってる!?HaHaHaまさか、そんなはずは・・・


「クソガキが、そこをどけ!」


 睨まれ、怒鳴られてもどかないショータ君。あ、これ庇われてるわ、5歳児に庇われるってやばくね?この子なんでこんなに強いの?出会って三十分の俺にはそもそも庇われるほど親密度無いはずなんだけど、この子は正義の子だったか、将来は仮面ライダーあたりになるといいよ


「いや!そうか!そうだったんだ」


 吾輩はある天才的なひらめきにを得た


「ツ!・・・」


 警戒する二乃君、だが私はそんなこと気にしない


「俺も5歳児だからセーフ!そうだよ、同い年の子供ならば庇われてもおかしくない!ナイスアイデアじゃね?でしょ?ショータ君」


「?」


 そこはハテナ顔で返さないでほしいなショータ君、もう少し面白い返し方しないとイイネが貰えないよ?


「ソータさん、せめてもう少しこの場にあった発言を選んでください」


 ナイス突っ込みだルクス君。そう!彼のような突っ込みが欲しいところ、ん〜でももう少し切れの良い突っ込みが欲しいかな、ルクス君、腕鈍った?


「じゃあ悪役になろう、この子供の命が惜しければそこを退くんだな」


「ソータさん・・・」


 微妙な空気が流れる、あれ?ひょっとして滑った?歯ぎしりをしながらにらみ続ける二乃君は案外子供好きなのかな?ショータ君を睨むことはあっても、ショータ君を巻き込むような攻撃をしない、そして俺はゾンビだから接近戦は感染のリスクがありできない、勝ったな!


「では退いてもらおう、然る後にショータ君は返してやろう」


「行っちゃうんですか?」


 まるで捨てられる子犬のような目で見てくるショータ君、でも仕方ない、こういう時の取引は誠実にやらないとだめなんだよ。もし人質の取引で嘘なんてついたら犯人側は逆上して人質殺すかもだし、警察側はどのみち人質が殺されるなら強引に突入したほうが人質の生存率が高いって判断になる、つまりどちらも得しないんだよ


「また会えるさ、俺達、友達だろ!」


 出会ってまだ一時間も立ってないけど、まぁ、些細な問題だろう、時間なんて関係ないんだぜ


 輝かしい出合いもあれば、薄暗い別れもある、どちらもあるからこその人生、であれば僕はこの瞬間を楽しもう、喜びも哀しみも、素晴らしい人生のスパイスだ!


 こうしてショータ君との別れが訪れた、今頃二乃君に回収されて足手まといになり、俺を追うのを諦めてくれてるだろう、流石ショータ君だ、あの厄介な二乃君を止めてくれるだなんて!


 あ、でもまだ味見してなかったな、勿体ない

 

これで大体役者が揃いました、もうすぐ第二部?も終わりで、そしたら第三部?です

そして物語もようやく動きます

対して長くない上にそもそも第三部は書きかけだから、更新滞るかも、そしたらロボット物上げてみます

以上誰も読まない後書きでした

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― 新着の感想 ―
[一言] 何もかもガバガバなやり取りがとてもよい たまーに、たまーに真面目なあたりルクスくんはよくわかってる
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