狂人?前の道を歩く
赤松 遥の視点
こんなのあんまりだ、こんな事になるなんて誰も望んでない
「3日、いえ、せめて2日ください、必ず捕まえます。あの人だって・・・リーダーだってここに戻りたいはずです。ギルドマスターだって私と同じ気持ちなんでしょ?リーダーからソウルブラザーって呼ばれて・・・ 親友だったんじゃ無いんですか?」
「あの馬鹿はいちいちなんでこう面倒な誤解を残すんだ・・・」
「誤魔化さないで下さい!」
「誤魔化してなどいない、確かにアイツがいればと、そう思ってることは認めよう」
「なら・・・」
「しかしだ、既にアイツの事を認めず、排除しようとする動きがあるのは知ってるな?こんな時だ、俺達は1つにまとまらないといけない」
「あの人がいた時はこんな事にならなかった!」
「そうだ、アイツは常に結果を出し続けてきた。だからこそ全員が認めていたし、多少の不満があろうともまとまっていた、だが今あいつは居ない。アイツが居ないこの集団はこのままだと簡単にバラバラになってしまう、そうならない為には仲間同士で争ってなどいられないんだ、わかるだろ?」
「わかりません!・・・分かりたくありません。リーダーは・・・あの人はいつだって私達のために頑張ってきました。それなのにこんな終わり方・・・。あの時リーダーを閉じ込める事だって本当は・・・」
「それもアイツの意思だ。今皆が一つにまとまらないといけないのも、そのために自分が邪魔だと思ったことも。だからこそ俺達のもとに来なかったんじゃないのか?」
「どうしても捜索を認めないつもりですか?」
「現状、ギルドマスターとしては、赤松の提示した条件では許可できない」
「わかりました。それがギルドマスターとしての指示なら、もう聞きません」
「独りで行く気か?」
「命令違反は私一人で十分ですから」
「かばいきれる範囲でやれよ?お前はあいつの一番の生徒だったんだ。要領よくやれ、アイツみたいにな」
「・・・」
私は勢いよくドアを閉める、要領よくだって?あの人みたいにだって?どの口がそんな事。あの人はどんな時だって危険な道を誰よりも先頭で進み続けてきた。私達はその後を付いてきただけじゃない。今こそ私達が前に出ないでどうするの。あの人が感染してるとしても、そのせいでグループが危険になるとしても、あの人を受け入れるくらいのリスクは許容すべきよ
「遥ちゃん・・・」
大体このグループは最初からバラバラだった、それを魔法でも使ったみたいにまとめたのはあの人がいたからなのに。あの人がいないグループなんてどんなに努力したって直ぐにバラバラになる
「遥ちゃん、あの・・・」
それに・・・
「ねぇ、遥ちゃん」
「うるさい、今更何よ、また反対しに来たの?加藤は最初からそればっかり、男の癖に情けない」
加藤が私の心配をしてるのは分かる、けれどそれは保身と下心と幼なじみとしての心配が等分された扱いづらいもの、私にとって今は迷惑以外の何物でもない
「ごめん」
「その謝りかたはやめて、あなたのその言葉は私の為じゃない。あなた自身が許されたと感じて自分の心を軽くするためでしょ」
「・・・ごめん」
「今のごめんは一応受け取るわ。でも二度と自分の為の謝罪はやめて、不愉快よ。それで?私は今忙しいの、話なら後にして」
「外に行くんでしょ?危ないよ、それにルール違反だし」
「別に命令違反する訳じゃないわ、自由時間に自由に行動するだけよ」
「拠点の外は原則二人以上なんだよ?違反してるよ」
「それはあくまで原則の話よ、緊急事態においてはその限りじゃないわ、その他にも例外なんていくらあるし理屈もつけられる、今更くだらない心配しないで、あの人の元であなたは何を学んできたの?ルールはあくまでルールよ、違反には当然罰が必要だけど、実際にはルールを守っていたら誰も守れないの、ルール違反だと他の人に認識されなければルール違反じゃない、そしてその範囲で私は私の意地を通すわ」
「・・じゃあ、せめて僕が」
「やめて、気持ちはありがたいけど迷惑よ、バレたときの罰は私一人で良いし、それにあなたじゃ足手まといよ」
私は認めない、例え全員が・・・あの人自身すらも死を望むとしても、私だけは絶対に認めない
アグニ・ソータの視点
ヤッホー気持ちの良い朝だ、ラジオ体操でもしようかな、体をほぐさないとな、ゾンビの体だしお手入れをかかすとお肌とか痛みそう、そういや死後硬直とか無いのかな、硬直してるゾンビを見たことが無い、硬直美人ゾンビとかいたら僕のテクニックで全身くまなく柔らかくしてあげるのに。う〜ん、誰得なんだろう?
さて、それはともかくやるべきことをやっていこう、これから吾輩のやるべきことは唯一つ!美化委員として街のデコレーション、そして街のお掃除、更に畑仕事だ!
ん?唯一つ?誰だ?そんなこと言ったのは?全く、自分の言葉には責任を持たないといけないよ?この俺様のようにな!
とりあえずご近所さんに挨拶しながら進もう。あ、こんにちは今日はいい天気ですね、そして死ね
あ、誰だこんなところにゾンビを散らかしたのは、しかもまだ動いてるじゃないか。全く誰が掃除すると思ってるんだ。最近はマナーの悪い人が増えたな、ロボットが街を掃除してるとでも思ってるんじゃないだろうか
美化委員としては放置できないな、しょうがない、ここをこうして、よし、出来上がり。ふぅ・・・一仕事したぜ、足の健を切れば少しはゾンビも街の景観に寄与するだろう、野良ゾンビが地面を這う街、なんて素晴らしい!吐き気がしそう!でも大丈夫!ゾンビが街を這いつくばって清潔にするから!
しかしやはり斧というのは素晴らしい、そうは思わないかね?吾輩はこの素晴らしさに今感動している。だって元々腕力の無い俺が、しかも片腕なのにゾンビの健を切れるほどの威力を出せるのだ、コレが文明の利器というものか、科学のチカラに乾杯!
このまま、ぶらり町中散歩の旅、ハンコの代わりにゾンビの脚切りながら行こう
おや?誰かの足音、隠れなければ。何を隠そう僕ちゃんのスニーキングレベルは高い、何しろ心臓すら止めてるからな!ふふふ、見つけられるかね?
「どうだ?」
ん〜、誰だ?この声は二乃くんか。坂牧 二乃、確かこのか弱いゾンビである吾輩をコロコロと転がそうとしてるらしいな、いけない子だ、人を転がそうとするからには、転がされる覚悟は勿論出来ているのだろうね?
「そうか、もし居たらすぐに連絡しろ、絶対に一人や二人では手を出すなよ?捻り潰されるぞ」
ん?俺のことじゃないのか?新種のゾンビでも出たか?
「二乃さん、やっぱりやめませんか?相手はあのソータさんです」
やっぱり俺の事だった、え?何?つまり二乃君の中で俺は人を捻り潰すくらいの怪力と残虐さを持ってるってこと?なにそれショック!
「今更だな、言っておくが奴を今までの奴と同じと思うな、奴はいまゾンビだ。この前助けた親子の話によれば、頭もイカれてる。まぁ、これは前からだがな。前提が変わったんだ、奴はもうゾンビだ、人間でなくなった以上これからはゾンビとして動いてる可能性がある」
しょんな!この頭のどこがいかれてるって?しかも前からだなんて、二乃くんにそんなふうに思われてたなんてショック!ダブルショック!
「・・・でも二乃さん、こう言ったらあれですけど、確かにソータさんの言動は異常というか・・・普通の人とは違いますが、やってる事はまともというか、いや、まともでは無いですし、色々とめちゃくちゃしますけど、理屈が通ってるというか、正しいと思うんです、それにたまに、極たまにですけど普通に話すときもありますし」
いいぞ!二乃くんの部下一号、微妙にフォローの仕方がおかしいけどその調子だ、吾輩も正常さをたっぷり語ってくれたまへ。でもたまにって部分を殊更強調するのはなんでなん?俺ちゃんは普段から大真面目よ?
「そうか、お前は見てないから知らないのか。じゃあ教えといてやる。セラータワーって知ってるか?」
確か40階建ての高層ビルだったかな
「えぇ、まぁ、行ったことないですけど話くらいは」
「俺はあそこでやつに助けられた、その時奴に言われた言葉は『お腹空いてない?これ食う?』だ」
そう、その時吾輩は珍しく優しさを二乃くんに振る舞ったのだ、決してオヤツを食べてるところを見られてなんとなくバツが悪かったなどということは無い
「・・・それ・・・ただの噂じゃ・・・」
「事実だ。俺がこの目で見た、この耳で聞いた」
「うッぷ・・・ぉぇ・・・」
ちょっとまった、何故そこで吐く、そんな要素なかっただろ、むしろ優しい吾輩を評価する所だろ
「わかったか?奴のイカれっぷりはお前が知ってるようなチンケなもんじゃない、奴はゾンビかどうかなんて関係なく、元から人間じゃない、人間の皮を被った化け物だ、根っこにある何かが人間とは決定的に違う、奴のゆるい言動も、その奥に見せてるまともに見える物も全部カモフラージュだ、奴は人間じゃない」
「二乃さん・・・すいません、もう迷いません」
え〜、酷くない〜?ちょ〜ショックなんですけど〜、トリプルショックなんですけど〜、納得い〜かな〜い
「行くぞ。警戒しろ、この周囲に居るはずだ」
そして二乃くんと隠れんぼを楽しみ、ノーアラートのまま二乃くんの足を引っ掛けて転がすことで実績(コロコロ転がした)を解除した俺は、山へ向かうのだった
短い第一部?が終わり同じく短い第二部?が始まりました
とはいえやることはそんな変わらなかったりします
ダレる展開はあまり好きじゃないので、あまり長く作れないです
以上誰も読まない後書きでした