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3. キョウ人ハ、  テナまえのミチを歩く

満足した、ホクホク顔の俺はにこやかにアパートをあとにするぜ


 あとに残されたのは・・・苦虫を噛み潰したような表情をする人妻さんと何が起きたのか分からないという顔をした娘さん


 あの娘は自分が何をされたのかすら理解してないだろう。因みにナニをしたのかを説明すると・・・


 オハナシをしてやった!


 いや比喩表現とかじゃなく本当に話をしただけだよ?別にゼット指定に引っかかるようなことしてないよ?まぁ、俺自身がゼット指定に引っかかる存在だけどな!


 つまりだ、俺は情報が欲しかったのだ、具体的には俺が気を失ってからどれくらい時間が経ったのかだ。混じりっけなしの純粋な情報を得るために目的をぼかして襲うふりをしたのだ


 情報というのは時に億という価値となったりする、ましてや今は非常時、ネットと分断された今となっては情報の価値は天井知らず、明日の天気予報に億という値段すらついたって不思議じゃない。まぁ、億だろうと兆だろうと金なんて非常時の今はただの紙くずだけどな!トイレットペーパーにすらならない、だってあれ硬いんだぜ?尻が痛くなるんだよ


 いちおう欲しい物はいくつがあったのだが結局盗らなかったのでセーフだよな?


 とりあえず目的を果たした今となってはあの親子に価値はない、一応俺が目指してる場所、つまり俺の仲間たちの場所まで一緒に来るか聞いてみたが断られた、なぜか分からないが俺は嫌われてしまった様だ


 この世は諸行無常の響きあり、あの親子はこのまま引きこもる道を選ぶようだ、それはつまり未来がほぼ確定することを意味している、彼女らの未来に精一杯の幸あれ!


 ではカチャっとな、いやーなんだかんだで文明の利器だよな、壊れたライターと乗り捨てられた車のガソリンで簡単にライターもどきを作れるんだからな、便利な世の中だ、それにコンクリート建築でもガソリンかけるとよく燃える、なるほど!コレが萌か!?アイドルにハマる人の気持ちが今わかった!


「何をしてるんですか!?」


 おや?何故か俺がキャンプファイアーを楽しんでいるとさっきの人妻から苦情が入った、そりゃあね、消防署への許可無く火を炊いたら違法なのは知ってますよ、でもさ、皆やってるじゃん


「いえ、焼き芋を作ろうかと。あ!そういえばサツマイモ持ってませんでした・・・芋、ありませんか?」


「何言ってるんですか!?」


 あれか?皆がやってるからってお前もやっていいと思ってるのか?的な理論か、そんなけちくさいこと言わないでよ、ここで火をつけたところで困るのは精々あなた方だけだよ


「あー、そうでした無かったですね、すいません。後すいませんついでに消防署呼んでもらっていいですか?携帯無くしちゃって」


「ッ!ヒカリ逃げるわよ!早く!」


 そう言って逃げる準備を急ぐ人妻とその娘、幸い俺がアパートに上がり込んだ時に物を物色して目ぼしいものを集めていたおかげで荷造りは早そうだ。あれだ、最初は欲しい物がいくつかあったんだけどさ、よく考えたら俺って今片腕じゃん?重いものなんて持てないんよな、だから結局持って行かない事にしようとしたのだが、俺は良い方法を思い付いてしまった


 さて、鬼ごっこの時間かな?吾輩から逃げるワルイゴはイネーガー


「ヒカリ!もっと急いで」


 残念ながら娘さんは俺よりも弱い、具体的には速さが足りない、ランチェスターの法則に基づけば強さというのは質×量2乗×速さ2乗だ。要はどんなに近接戦闘が強くても足の速さで負けていたら勝率はかなり低い、故に足の不自由な娘さんは俺に勝てない


「ふふふ、はははは、はーっはっはっは」


 いやー笑いが止まりませんな、俺には重くて運べない荷物を二人で運んでくれている、なんて親切なんだ。あーっと、そっちは違うよ、そうそう、そっちそっち。いいぞ、そのまま真っすぐだ


「ヒカリ!お願い!もっと急いで!」


 無理無理、体力も足の速さも俺以下なのは間違いない、だからこそこうして誘導しつつ追いたてられるのだ、あ・・・マズイ


「〜〜〜」


 人妻たちの前に現れたのは一体のゾンビ、俺とゾンビに挟まれ絶体絶命のピンチを迎えてしまった様だ、全く困るな


「はい、退いてくれな」


 俺はおもむろに立ち尽くした人妻達を無視してゾンビに接近、俺を無視して獲物・・・もとい人妻に近づこうとするので足に一撃、そこらへんの木の棒でもゾンビの移動速度を落とすには十分、さて、改めて人妻たちの後ろに回り込んで追い立てよう。あ、駄目だよゾンビ追い払ってる間に逆方向に逃げようとしたら!


「ワルイゴはイェーガー」


「ひ!」


 娘の手を取り再び走り出す人妻。はいいんだけど、娘さんはなんでこっち見てるんだ?そんなに俺の顔変?


 そろそろキャンプ予定地だな、おーいそろそろ止まってくれ、そして吾輩の荷物を返してくれ、代わりにそのへんで拾ったこの伝説の木の棒、エクスかりぱーをあげよう


「ふたりとも、こっちへ!」


 ん?誰だ?吾輩の獲物を取るなんて酷い!せめて別れの挨拶くらいさせてくれ!苦楽をともに・・・はしてないな、苦を共にした仲なんだ!


 「あの、貴方は!?」


「説明は後、死にたくないならこっちの指示に従ってもらいます」


 有無を言わさず獲物を奪ったソイツは顔まで布で覆っていて顔がわからない。だが俺はソイツが誰だか知っている、忘れもしない懐かしい声。あれは、そう、5年前の今頃だったな。パンデミックの後に俺の仲間となった後輩の赤松(貧乳)


 ん?パンデミックが起きたのはいつかって?それは2か月ほど前だな。赤松?それは5年前だな。パンデミックが起きてから初めてあった俺達は良い仲間となったのだ。時系列がおかしい気がするな?まぁ、細かいことは気にするな、気分的には古い仲間なんだ、時間なんて関係ない!


「皆、こっちへ!」


 どうやら赤松はチームリーダーとして部下を率いてるらしい、後輩の成長に胸が熱くなるな、ゾンビだから体温上がらないけど


「ゾンビ!来るなら来・・・い・・・・・え?」


 どうやら俺が誰だか分かったようだ。ふむ、久しぶりの再開、けど俺は湿っぽいのは苦手だ、ここはウイットに富んだ挨拶をしよう


「〜〜〜」


 すなわちゾンビの真似!俺は既にゾンビだからこの演技は完璧!心臓すら止めたハリウッド女優顔負けの演技力に拍手喝さい間違いない!


「ッ!そんな・・・ソータさん・・・く!撤退!」


 後輩は挨拶もそこそこに仲間を連れて退却していった、レモンの様にさっぱり系の後輩だな、もうちょっと親密度が高いと思ってたのに、コレが青春の甘酸っぱさか、俺は所詮過去の男なんだな!


 あ!ちょっと待って、俺の荷物!あ〜行っちゃった、せっかく荷物持ちを手にいれたと思ったのに


 残念ながら赤松(貧乳)は行ってしまった。寂しくて涙が出そう


「荷物も無くなったし、行くか」


 気を取り直していこう、まずはそろそろまともなアイテムが欲しい、今の俺の道具はもう使えなくなったライターモドキの残骸とエクスかりぱー、そして右手を覆ってる包帯(布)くらい、サバイバルの為には最低でもナイフが欲しい所、あるいは何度も使える本物のライターだな、さっき使ったこのライターモドキは使い勝手が悪い、所詮自作だから仕方ないけど


 いや、ナイフも良いがトイレットペーパーも捨てがたいな、あるいは午後のお茶という選択肢も・・・悩むな、どれから優先するべきか・・・


 決めた!ココは爪切りで行こう。爪のお手入れが出来ないと人と握手する時に嫌われちゃう!


 翌日、俺は比較的大きな民家を探す、ココが良さそう、たんまり金を持ってそうだなグエッへっへっへ


 入ってみると既に荒らされきった後だった、ナイフどころか包丁すら無い、でも爪切りは見つけた!しかも金持ちだからか大きくて使いやすそう。素晴らしい、これでお手々が綺麗になる


 しかし残念ながら他に良さそうなものはない、なんていうか荒らされた跡が一つじゃないんだよね、入れ代わり立ち代わりいろんなグループが入ったような。まぁ、こんなご時世だからね、お金持ってそうな所は皆入るよね、あっ!でも一万円落ちてるラッキー!これで今夜は焼肉パーティーだ!


 その時聞こえたのは入り口から入ってきた複数名の足音、何だ騒がしいな。入ってますよー、後ノックくらいしてくださいよ、全く!


 仕方ない善良なるゾンビは一足早めにこの家を後にしよう、そう思って窓からの脱出を行った所、遠くに人が居た、顔が布で隠されているがエスパーである俺にはあれが誰か直ぐに分かった、だってあのダサいパーカー着るのなんてサバイバー仲間の加藤(茶)しかいないもん、間違ってたらゴメンな


 加藤(茶)はおもむろにポケットからトランシーバーを取り出し何かを喋っている、しかもこっちをガン見しながら!何?俺がなにかした!?やめて!こっち見ないで!


「急げ!」


 後ろから声が近づいてきた、この声は赤松(貧乳)おのれ、加藤め先生にチクりやがったな!


 しかし大丈夫。脱出する前にそのへんのもので適当にバリケードを作った俺に死角はない、時間さえかければ簡単にどかせられる程度のものだけど、バリケードは作る時間よりも退かす方が時間がかかることが多い、俺の後をついてくる限り永遠に俺に追い付くことはない、そう!まるで決して届かないあの月のように!


 家を抜け、マンションを抜け小道を抜ける俺、ドアを通る時はバリケードを欠かさない


「こっちだ!」


 あれ?なぜかまだ追ってきてる。しかも近づいてきてる?何故だ!?俺はバリケードを作りながら移動してるのに、原因として考えられるのは・・・わからない。不思議だ、まさか体力の無い俺が休みながら移動してるせいな訳ないから、そうか!?赤松(貧乳)は持ち前の胸の薄さでバリケードをすり抜けている!?


 く!それは予想外だ、このままでは・・・きっと捕まってお嫁に行けないような事をされちゃうんだ、くっ殺せ。ふむ、男ゾンビのくっ殺は誰得?


 しかし諦めない奴らだな、そこまで恨まれてるとは予想外だ、仮にもこの俺は彼らの仲間だったのに。いや今でも仲間だ!俺はそう思っている!因みに俺はグループの初期メンバーでギルドマスター・・・に任命されたサブマスター・・・の信頼厚い一般メンバー!いや、これはもうサブサブマスターと言っても過言ではないのでは?


 そんな俺が彼らにした事なんて、某軍曹ゴッコで適当にしごいた事とか、遊び半分でパシリさせたり、獲物を独占するために彼らを残して先行したり、後はちょっとセクハラした程度だ!その程度でここまで恨まれる覚えなんてない!昨日も美味しい人妻さんを俺から奪ったばかりじゃないか、これ以上俺から何を奪うというのか!?


 この世は結局強者が弱者を支配する焼肉定食の世界なのか、世知辛いな、もっと弱者に優しい世界があっても良いじゃないか、優しい世界を作ろうぜ!


 あ!ゾンビさんこんにちは、そして死ね!ぺ、この雑魚が!ヒエラルキー上位の俺はゾンビに唾を吐くのも忘れない!


「こっちから音がした!」


 く!まだ来るのか、優しい世界プリーズ!


 でも、ここまでだ、頭の良い俺は常に彼らの2手3手先を行っている、頭の出来が違うんだよ!


「頭突きアタック!」


 その一撃でゾンビに見事なダメージを与える、足にはエクスかりぱーの一撃を与えてるから、これでこのゾンビは脚力と視力にダメージがあるだろう、良い足止めになるに違いない


 更に見つけたゾンビにダメージを与えつつドアを抜ける、ふふふゾンビバリケードだ。この肉の壁を超えるのは簡単じゃないぞ


「皆、爆弾使うから離れて!」


 簡単だったわ。でも、勿体無いな、爆弾一つ作るにも結構な資材使うのに、実は作るときにコツもいるんだぜ?俺なんて何回失敗したことか


 あ〜、爆弾のこと考えてたら甘い物食べたくなった、ダイナマイトが恋しい、あれ結構美味しいんだよな


 あれ?いつの間にか後ろからの気配がなくなったな、諦めてくれたのか?まさか爆弾使ったら崩れるような道を通った程度で赤松(貧乳)が進めなくなるはずないし、だって赤松(貧乳)はすり抜けの術が使えるはずだ。そうなると・・・俺のオーラにひれ伏したのか!なるほどそれなら仕方ない


 さて、お腹すいたし何か食べ物を探そう


次で一区切りになります

続きは投稿する予定ですがその前に別の作品投稿しようか迷い中

まぁそもそも読みたがる人がいるのかって話ですけどね

以上誰も読まない後書きでした


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