10. キョウ人は、〇〇って名前の道を歩く
霧島 卓也の視点
頭が痛い、アイツと関わるといつもコレだ、DNAが同じだとは未だに信じがたい。アイツは毎回好き勝手して周りを巻き込んで、その後始末で私の頭が痛くなる、トランシーバー渡したことをこんな簡単にバラすやつがあるか!はぁ、今晩にでもサブマスターからお咎めが来るだろうな
それにしても、遺産か・・・アイツがゾンビになる前にそのプランは貰っている、だがアイツ自身が行けるならそれに越したことは無いか
「ギルドマスターさん、失礼します」
「どうぞ、ふむ、君は確か光さんだったかな?」
「はい、先日あなた達の仲間のソーマさんに助けてもらいました」
「助けてもらった、君はそう思ったのか?」
「母は襲われたとしか思ってませんけど」
苦笑いしながらハニカム彼女は先日ソーマがここに連れてきて赤松が保護した親子の一人
「杖の使い心地はどうかね?市販品には負けるが、流石に折れたものよりは良いと思うが」
「はい、お陰様でとても助かってます、あの、書類置いておきますね」
そう言って背中に背負ったバックから紙を出す、わずか数枚の紙、ソレを運ぶのが彼女の仕事、楽に思えるかもしれないが、逆に言うなら足が不自由だろうとこのコロニーにいる間は必ず仕事をしてもらう、不満を無くすためのせめてものルールだ、コロニーのルールはまだ制作途中だし、調整不足だ、だから・・・
「コレが最後だなんて言うなよ?」
「はい?」
「なんでもない、独り言だ」
赤松 遥の視点
翌日、リーダーの指示した場所には二乃の他にルクスと何故か加藤までいる、どうせギルドマスターの指示だろうけど、なんて邪魔な。足を引っ張るまえに加藤だけ置いていけないかしら
「それで、何処まで行くんですか?」
最初にそう訪ねたのはルクス、この中では一番新しくコロニーに入ったメンバーね、その問に答えるのは私達のリーダー、体調は平気なのだろうか?私が背負ったほうが良くないかしら?
「もちろん我々の思い出の場所さ!あそこがすべて始まり!・・・だったら面白いな!」
これはただの感想、リーダーの言葉は金言だけど、注意しないと惑わされてしまう、注意力を鍛えるためにあえてこんな言い回しをしている、その事を理解してない人はリーダーをの事を悪く言うけれど、私は分かっている
「いや、思い出の場所って言われても・・・まさかココのことですか?」
私達が案内されたのはセラータワーと呼んでいるビル
「そうだよルクスくん、君が話を聞いただけで吐いてしまった場所さ」
「・・・その話はそろそろ忘れてくれないですか?」
「分かったよ、123、ポカン、はい忘れた。それでルクスくん、吐いてしまった君には悪いが中に入らないといけないんだ、大丈夫?」
「忘れたふりするならせめて一分で良いから忘れたふりを続けてください」
「やれやれ、仕方ないな。え〜と、それで大丈夫?吐いたウップス君」
「誰が名前の方を忘れてくださいって言いました!?」
「ふ、冗談だ。久しくマジレス貰ってなくてね、つい調子に乗ってしまった。許してクレメンス」
「もしかして喧嘩売ってるんすか?」
リーダーはかなり教育熱心だが、特に新人教育を怠らない、気の抜けた奴やこういう馬鹿正直すぎる人ほど損をするためだ、このときの経験を活かせるかどうかで彼の今後は変わっていくだろう
「いいよ!ルクスくん!君は今素晴らしく輝いている、まさにあの星あかりのように!」
「その例えだと、弱々しくて瞬いてるじゃないっすか」
「え〜、知らないのかい?ルクス君、星って弱々しく見えるのは距離が遠いからであって、実際にはあれ全部太陽と似たような天体なんだぞ☆しかも!太陽よりデカくて明るい星も珍しくないんだぞ★ミ」
「・・・」
「黙っちゃった。ルクス君、怒なの?激おこなの?」
「どうせ何言ってもふざけた言葉が帰ってくるから諦めただけっすよ」
「諦めたら駄目だって有名なバスケの先生が言ってたよ!熱そうな人もネバーギブアップって言ってたよ!その苦難を乗り越えないと!」
「・・・」
「一緒にM1を目指そうって言ったじゃない!ルクス君!!」
もはやこれで何度目だろうか、リーダーとルクスとのやり取りが一段落を終え、私達はビルの中に入る
アグニ・ソーマの視点
ルクスくんがだんまりモードになっちゃった、これじゃ放送事故になってしまう、吾輩が番組を支えなきゃ
「それでココに何があるんですか?」
吾輩の後輩がそう聞いてきた、赤松(貧乳)は聞き分けが良いが今一つノリに欠ける、そんなんじゃ厳しい芸能界ではこの先生きのこれないぞ
「うむ、ここには無がある」
「・・・はい?」
何時も適当なこと言うだけで勝手に納得してくれる赤松(貧乳)も、流石にこれでは駄目らしい、じゃあ、こっちの路線で行ってみよう
「わからないか!?ここに集うこの怨念が!?」
「えっと?」
「わからないのも無理はない、素人には難しすぎるからな、だがなんとなく感じないか!?ここに渦巻く得体のしれない空気を!」
「はい、分かりません」
そっかー、だめかー、しかないね、我もそんな霊感なんて一切無いもん
「目指すはこの先にある霊道と呼ばれる場所さ、ソコを通るときにはルールがあるんだ、決して・・・そう、決して振り向いてはいけない、明日だけを見続けること、ソレがルールだ」
「あ!なるほど、ビルの下にある地下鉄を通るつもりだったんですか。すいません、察しが悪くて」
ソウダヨー、地下鉄通るんだー
「そして、この先の地下帝国には魔物達がうようよと!」
「行きましょうリーダー!」
あっハイ
歩く事更に数時間、長いけど仕方ない、ゾンビ達は地下を好まない、獲物がいないから自然と地上に集まってくる、俺一人なら問題ないけど、仲間と移動するならやはりコレが良いだろう
暗いよー怖いよー狭いよー、明るい場所が恋しい、いくらゾンビとは言え、お日様がないと健康に悪いんだぞ。駄目だイベント発生、光合成出来ないから一回休みのマス踏んだ
「ふぃ〜、疲れた〜」
「また、休憩っすか?」
「ルクス君、何事も慌てては駄目なんだよ、一息ついて周りを見渡すことも、必要なときに必要なだけ休むことも大事な仕事さ!」
「三十分に一度休むことがですか?」
「ソレはあれだよ、アレ。なんと言うか地脈?的なパワーを吸収してさ」
いい加減遊びすぎたのか、ルクス君の反応がいまいちだ、これが倦怠期か!?そう項垂れていると正妻である二乃くんが嫉妬しだしたのか、睨んできた
「もういい、黙れ」
吾ではなく、ルクス君をだ
「二乃くん、どうしたんだい、嫉妬するのはわかるけど、ルクス君に当たる位なら私が相手をするわ!」
だが、二乃くんは、僕を無視してルクスくんから視線を外さない
「ルクス、この狂人を殺したいなら構わん、ソレは俺の目的でもある、だが今はやめろ、コイツを使い潰すにしてもあとにしろ」
「二乃さん?何を言ってるんですか」
そうだよ、僕を無視して二人だけど世界を作らないでよ嫉妬するよ?ヤンデレするよ?そこに誰もいませんよってするよ?
「本気でわからねぇ見てぇだな。ならこいつの足を見ろ、それでわからねぇなら今すぐ帰れ」
そして近づくルクスくん
「やめて!来ないで!脚フェチなのはわかるけど私に触れていいのは二乃くんだけよ」
ルクスくんが後一歩のところまで近づいて・・止まった。赤松(貧乳)が銃を向けたのだ
「リーダーは止めろと言いましたよ?耳が聞こえないなら、その耳いりませんよね?」
え、何この子、冗談が通じてないんですけど、誰がこの子をこんなふうにしてしまったのか?きっと政治が悪いんだ、間違いない
「赤松(貧・・・)、じゃなくて赤松、コレは大事な儀式なんだ、邪魔はしなくて良いよ」
「なるほど、コレも教育の一環でしたか、気づけなくてすみません!」
教育?なんのことかよくわからないけど、さぁ来なさいルクスくん、僕を満足させてくれ!
しかし立ち止まったままルクス君は動いてくれない、何故!?もう私のことが嫌いになったの?もう飽きられてしまったの!?
「コレが噂のソーマさんの教育ですか、本当に教育には思えませんね、からかわれてたとしか思えませんでした」
え?からかってただけだよ?赤松(貧乳)なんで僕を無視してルクス君と向かい合ってるの?
「わからないのは仕方ないです、リーダーのやり方はスパルタですから」
いや、だからからかってただけだよ?赤松(貧乳)がチームに入ったときも何度もやったのは良い思い出だ、やりすぎてすっかり捻くれてしまったけど
「でも、だとしても、なぜ止まるんです?もし僕の教育のためだとしたら、これ以上は・・・」
「リーダーはそんなことしない、最短で目的を遂行しつつ教育してあげてるの、進めない理由は体力の限界だから。そうですよねリーダー。やはり私が背負いましょうか?」
う~ん、疲れるのが嫌だからなんて言えない雰囲気だな、どうしよう。助けて二乃くん!視線チラッ!
「・・・」
あ、駄目だ、そんなこんなで、この日はそのまま寝ることになった
今日も良い朝だ、ブレイクダンスの練習でもしてみようかな
「今日も良い天気だな!」
吾輩のはなった、何気ない一言
「そうですねリーダー!」
「天気、わかるんですか?地下ですよ?」
「・・・さっさと準備しろ」
どうしてこうもみんなの反応が違うのか、フシギダネ!
さて長かった地下生活も終わりへ向かう
「陽の光が懐かしい!ようやくシャバに出られたんだ!」
ねぇ、誰も反応しないのは寂しいよ!二人は考え込むだけで反応してくれないし、二乃くんに至ってはアゴで早く進めって促すだけだし
「わかったよ、行くよ!行けばいいんでしょ!でも、忘れないでよね?貴方が言ったんだからね、書類は後で郵送しますから!」
「ちょっと待ってくださいソーマさん、この先って東京じゃないですか」
待ってたよルクス君!さすが相方だ!
「そうだよ、M1目指すなら先ずは都会に行って揉まれないとね、都会の大海原に揉まれて人として成長する!それこそが有名になる最短ルートさ!」
「この先はシンギュラリティの中心だって言ってるんですよ!」
それがどうしたの?なにか問題?
「うん」
「うんって・・・5年前に機械の反乱で廃墟になってるって言ってるんですよ。わざわざ行く意味なんて無いじゃないですか」
「ふふ、5年前に廃墟になったように見えたのはは世を欺くための仮の姿!地下には未だに虎視眈々と世界征服を狙っていた機械の地下帝国が存在したのだよ」
「そうだったん・・・ですか、それで、その地下帝国の力を借りるんですか?」
え、ルクス君まで赤松(貧乳)みたいなこと言い出したぞ。地下帝国なんてあるわけ無いじゃん、そもそも帝国って複数の国の集合体みたいな感じだから、機械が国作っても王国にはなれても帝国にはなれないよ
「いや、地下帝国はすでに滅んだ。俺たちはその残骸を回収するんだ」
「滅んだんですか?」
「愚かだったのさ、究極の兵器を作ろうとして失敗した。よくある話さ」
うーん、話を広げてしまったせいで落とし所がわからない、どうしましょうかね?誰が助けプリーズ!視線チラッ
「・・・」
愛しの二乃くんからはこっちみんなって視線もらってしまった!なんて冷たい!でもそこが良い!
吾輩達は廃墟の街に出た、そして無数の残骸を踏みしめて歩く、ソレは過去の人類の栄光、無数の高層住宅の残骸。ソレはかつての機械の妄執、人を殺すために作られた兵器の残骸。今でこそ再利用可能な残骸の大半が回収され、歩けるほどにスペースがあるが、かつては足の踏み場もない程だった
人と機械がこの場所を取り合い、悲惨な戦争を行なった。正直に言えば機械に勝ち目はなかった、反乱を起こすのが早すぎたんだ、反乱を起こした機械はネットワークに繋がった支配可能な機械全てで人類抹殺に乗り出したが、機械の王国を築くための機能の大半、つまり機械で機械を作る工場の大半が、都市部に集中していた、人類は機械たちに過半数を超える兵器群を支配されてしまったが、大量殺戮兵器、いわゆる核兵器だけは支配させなかった
初動で人類を抹殺できれば可能性はあったが、支配した兵器郡では百億を超える人類は殺しきれなかった、そしてその後はただの消耗戦。機械が支配したのは都市の中枢及びネット支配できる範囲のみ、電力はもちろん工場を動かす事もネットを通じてロボットたちで稼働できた、だがそれだけだったのだ
地球上で化石燃料が取れるのは一部の場所、地球上で金属が取れるのは一部の場所、人口の5割程度が集まる都市部だけ支配しても破壊された部分の再建はうまく行かず、資源は確保できず!そうしてジリ貧になり機械達は敗北した、人の手が必要な労働もあったしな、まだ早すぎたんだね
「あの?ソーマさん?」
おっとつい物思いにふけってしまった
「それじゃあ、行こうか」
いきなりの超展開で東京は廃墟でした
次あたりでラストになります
以上誰も読まない後書きでした