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雑言

作者: 僕

 死んじまえばいい。

 二人組で帰る人間。笑いあう人間。楽しそうな人間。人間。人間。

 死んじまえ。


 全部あれがいけない。

 僕の大事な人をとったな?


 最近、一緒に歩くところを見るのが多かった。

 それだけなら別に、後ろで睨むだけで良かったのに。

 約束だって?

 僕との時間を潰してまで一緒に居たいだなんて。

 随分と楽しそうだね。

 さっきは笑い声が僕のところまで聞こえてきたよ。


 知ってた?

 いつも他の人間と楽しそうに話す君を、

 気づかれないようにトイレで待つんだ。

 ここで時間を潰すのは得意だから。慣れてるから。

 排泄の音、匂い、不快だけど。

 僕にはお似合いなんだよ。

 でもね。

 不快なものに混じってさ、聞こえてくるんだよ。

 本当に楽しそうな声が。

 他の人間の雑音を切り裂いて、君の声だけが鮮明に聞こえる。


 趣味の合う人がいるんだってね。

 僕と一緒に居るより楽しいんだ?

 だから僕のこと忘れてさ。

 夢中になってるんだ?


 ああ、変わってく君が怖い。

 友達に影響されてさーって笑う君が怖い。


 他の人間に惑わされんなよ。

 揺らぐなよ。

 君は君のままで居てくれよ。

 クラスの人とは話せないって言えよ。

 はしゃぐ奴らはうるさいだけって言えよ。


 前はそう言ってただろ。

 何で変わっちゃったの?

 僕はあの君が好きだったのに。

 着飾らない君が好きだったのに。


 あいつらが君を変えたんだよね?

 酷いね。

 無理やりに捻じ曲げちゃって。

 君だって変わりたくなかったよね?

 

 このままじゃもっと悪化してしまう。

 素敵な君が綺麗な君が塗りつぶされてしまう。


 でも僕には何も出来ない。

 遠くで見守ることさえもできない。

 僕の知らない内に変わってしまった君を見て、

 嘆くことしかできない。




 君には僕がどう見えてる?

 新しく知った美味しいお菓子を食べる君に差し出された

 とっくに食べ飽きてしまったお菓子のように見えてる?



 そうだよね。

 クラスメイトと新鮮で楽しい時間を過ごしてたのに。

 廊下の奥から見飽きた奴が歩いてきて。

 帰らなきゃって思っちゃうのって。

 不快だよね。

 やっぱり僕はトイレがお似合いだったね。


 そこら辺を歩いている

 どうでもいい話で盛り上がる

 青春に消費するためだけの

 そんな人間関係とは違うって。


 そうだよね?


 僕は帰り道に見た大勢の人間を眺めてそう思ったよ。

 あいつらとは違うんだって。


 違うはずなのに。

 何で今、隣に居ないの?


 今君が居るのは僕の知らない人間の隣。

 今頃学校で仲良くしてるんだね。


 僕はただの人間に負けたの?



 あーそっか。


 君にとって僕は邪魔な存在だった。

 君が考える程僕は凄くないのに。

 君に劣等感を抱かせて。

 性格を捻じ曲げたのは僕の方だ。

 今更僕がどれだけ褒めても聞いてくれない程に。

 そりゃあそうだよ。

 君の一番の足枷って僕だったんだよね。


 じゃあ。

 何でそんな奴と一緒に居るの?

 何でそんな奴の心配をするの?

 義務感から?

 昔からずっと一緒に居るから大事にしなきゃいけないって思ってるの?


 もういいよ。

 面倒で腹立たしいだけの僕と一緒に居なくていいよ。

 僕だって知ってるよ、自分がうざいことくらい。


 今まで迷惑かけてごめんね。

 もう大丈夫だから。



 あーあ、何が間違ってたんだろ?

 君の期待にはなるべく応えてたはずだけどな。

 でももう、僕じゃ無理なんだと思う。





 人間で飽和した駅のホーム、その雑踏に紛れたベルの音。

 顔を上げて前を見据える。

 列の先頭に立って、開いたドアの内側へ。


 また一歩、君から遠ざかる。







 君がどうでも良くなりたい。

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