表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第十話 強さと弱さ
96/102

第十話 六

 顔を近づけられたと思ったら、耳元で囁かれた。

 その言葉の真意は不明だけど、斉木君が私の彼氏で、空木君を知らないなんて、あり得ない。


「おかしいよ、こんなの」

「何が? 何もおかしい事なんて、ないでしょ」

「貴方は、本当に斉木君なの?」

「俺は、俺だよ。香楽、今日はちょっと疲れてる? きっと、混乱してるんだ」


 混乱なんてしてないのに、頭が冴えないのは確か。

 いつもの斉木君だと思っていたのに、こんなのって。


「体に教えた方が、香楽には良いのかな?」

「やめて。斉木君」

「なら、名前で呼べよ。さっきみたいにさ」


 逃げられないこの状況では、誰かを呼ぶしかない。

 だけど、斉木君との距離が近すぎる。


「た、竜也君」

「なぁに?」

「七海さんのことは、いいの?」 

「今は香楽が好きだからね。七海さんは、七海さんで幸せになって欲しいよ」

「そう。そろそろ離れて」

「やだ。離れたら、逃げるじゃん」


 バレバレなのは、知ってる。どうしよう。動けないなら、何も出来ない。今はただ、視線を合わせないようにしなきゃ。


「ねぇ、香楽。こっち向いて」

「嫌だって言ったら?」

「無理やり向かせるかな。それが嫌なら、向いてよ」

「何がしたいの?」

「香楽を、俺だけのものにする。それだけ」


 だからさ。と前置きして、斉木君は続ける。


「他の奴の事は考えないでさ、俺だけの事を考えてて」

「そんなの、出来るわけない」

「あー、もしかして、()()()()()?」

「空木君は、関係ない」

「それなら、何でその名前を出した? 俺に嫉妬させたかった?」

「違う」

「それじゃあ、何で?」

「それは……」


 何で即答出来ないんだろう。空木君は私の友人だし、一緒に術師として、霊魔と戦ってくれているのに。


「空木君、助けて……」


 誰もいない、私たちの話し声だけが聞こえる、この空き教室。

 今私が発した言葉は、斉木君に聞こえている。


「香楽。そんなに、そいつが良いならさ」


 無理やり視線を合わせられ、顎をくいっと、上げられて。私の唇に重ねられた、斉木君の唇。


「……っ。ん」


 息が出来ない程、決して短くない。離されたと思ったら、続けられた言葉。


「俺を選べよ。香楽」

「貴方は、斉木君じゃない。だから、選びたくない」

「今日の授業、全部サボっちゃおうか」

「え?」

「香楽は、何も分かってないからさ、全部教えてあげるよ」


 視線は鋭いまま、斉木君は私を見続けてくる。

 お願い、誰か。誰か助けて。


「教室に戻りたい」

「他の奴等がいるじゃん」

「チャイム、そろそろ鳴る頃だし」

「ふーん。まぁ、今日はサボるし、逃がすワケない」


 もう、こうなったら、自力だ。


「私は戻るから!」


 力強く、斉木君を突き放し、近くのスライドドアを開ける。



 開ける、はずだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ