表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第十話 強さと弱さ
94/102

第十話 四

「私のせいだ。私のせいで、乱麻が……」


 抜け殻と化した乱麻を見下ろしながら、独り言の様に呟く。


「大切な式神だったのに、私のせいで」

「そうだな。乱麻が、こうなったのは、全て香楽の弱さに原因がある。巫なのに、いや、術師として、弱すぎる」

「お兄の言う通りだよ」

「何故、気づかなかった? 帳も乱麻も。全て香楽のせいだろ」

「そうだね」

「七将を、相手に出来ると思ったのか? ふざけるな。香楽の実力じゃ、霊魔を倒すことだけで、精一杯だろ。自惚れも、いい加減にしろ」


 何も言い返せない。何も否定出来ない。全て私のせいだ。私が、弱いから。私の弱さが、乱麻を。


「とりあえず、この空間を消す。離れてろ」


 お兄から距離を取ると、お兄は扇を手にして、(くう)(いん)を書いていく。

 眩い光がたちまち現れ、私は顔を背けた。


 ***


 ――さん……。起きて――


 ――しう……。ねぇ――


「紫雲さん、起きて。ねぇ、起きてよ。紫雲さん」


 はっきりとその声が聞こえて、重たい瞼を開ける。

 私は、何処かに寝かされているらしい。

 この天井は、私の部屋? なんだか、見覚えがある。


「空木君」


 やっと出た声は、カサカサしていて、声を発すると、喉が痛い。口の中も乾燥していて、水分を欲してしまう。


「起きたようだな。香楽」

「お兄。私……」

「風吹さんを呼んでくる」


 そう言って、お兄は部屋を出ていった。

 空木君は残っているけど、何をしているのか、こちらからは見えない。


「空木君」

「何?」

「空木君が、助けてくれたの?」

「俺は、ここに呼ばれただけ。何があったのか、晴斗さんから聞いたよ」

「そっか」

「よく頑張ったね。紫雲さん」


 その言葉を聞いて、何故だか涙が溢れてきた。止めたくても止まらない。止めどなく流れ続けていく。


『起きたか。香楽』

「風吹さん」

『起き上がれるか? 話がある』


 なんとか上体を起こして、部屋を確認。

 やっぱり、ここは私の部屋だ。そして、この空間には、お兄と風吹さん。空木君と望さんがいる。


『単刀直入に言う。良いか?』

「いいよ。その前に、喉渇いた。何か飲み物ある?」

『スポーツドリンクを、枕元に置いた』

「これだね。ありがとう、風吹さん」


 ペットボトルの蓋を開け、一口、二口飲む。渇ききった喉に、さっぱりとした甘さが染み渡る。


「ごめん。風吹さん、話って何?」

『単刀直入に言う。香楽、お前はもう、術師を辞めるべきだ』


 風吹さんの言葉が、何も分からない。術師を辞める?

 私は、術師として生きてきたのに?


「この判断は、俺と風吹さんで決めた。昔から自惚れが酷いし、こうと決めたら、周りが見えなくなる。そんな奴を、七将を相手にする《血月の夜》に、参加させられない」

『例え、巫の宿命を背負っていても、これからの戦いに、香楽は足手まといだ。もう、霊魔には関わるな』

「でもっ、私がいなきゃ、空木君は? どうなるの?」


 そうだよ。空木君はどうなるの? 空木君だけじゃ、七将を相手に出来ない。


「それなら大丈夫。俺、風吹と修行するんだ。霊魔を倒せるようになったし、少しずつでも、七将? を相手に出来るくらいにはなれるって」

「そうなると、空木君への負担が増えるでしょ?」

「大丈夫だって! 俺、紫雲さんの力になりたくて、術師になったんだよ? 紫雲さんの代わりに、頑張るから!」


 だから、だからね。紫雲さん。


「もう、苦しむことはないんだよ。楽になろうよ。普通の暮らしをしよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ