第十話 一
かのんさんもいる今、この場所で、あの話をしよう。
七将が現れた、あの件を。
「かのんさんにも、もちろん二人にも、聞いて欲しい話があります」
『何だ?』
「まさか、彼氏ができたとか!? お兄は、許しません!」
「違うよ。お兄は、黙って」
「うぅ。お兄は、寂しい!」
はいはい。お兄がいると、話が進まなくなる。
これから大事な話なのに、空気を読め。
「もしかして、今日の五時間目の?」
「そうです。実は、今日の昼休みにも、空木君とともに、霊魔の襲撃に遭いました。場所は、屋上。いつもの襲撃です」
「昼休みと五時間目で、何かあったのか?」
「昼休みの襲撃では、幻覚と夢幻のダブルパンチ。空木君は無事でした。私は、結界に閉じ込められました」
『幻覚と夢幻。それに結界までとは。並の霊魔では、あり得ない話だ』
そう。並の霊魔に、幻覚、夢幻、結界の、同時攻撃は出来ない。
かなりの邪気がない限り、それは不可能となる。
「結論を言います。七将が現れました。正体が判明したのは、五時間目のことです」
風吹さんとお兄の表情が、強ばったように感じた。それは無理もない。七将とは因縁があるのだから。
「まさか、そんなはず……っ。風吹さん!」
『名前は? 一人だけか?』
「現れた七将は、一人だけ。名前は炎蛇」
更に強ばる表情。かのんさんは、バッグの中から、何枚もの葉書サイズの和紙を取り出した。
「七将と聞いて。曽祖父より受け継いだ、こちらをご覧ください」
それらは、陣が画かれたもので、陣の周りには、草書体の文字が書かれている。
『これらは、一体何だ?』
「これらは、東雲家最後の術師、東雲成松が遺したとされる、呪怨霊主ならびに、七将封印の陣です」
『聞いたことがないな』
「嘘か真か、誰も分かりません」
『嘘か真か……。これらの陣を、少し調べてみたい。預かっても良いか?』
「はい。東雲家当主としても、真実を知りたいです」
風吹さんは、陣の描かれた和紙を受け取ると、まじまじと見入ってしまった。
『成松が遺したか。ほほぅ』
これは、話し掛けたとしても、多分聞いてもらえないだろうな。
しかもこんな時に、嫌な気配が。
「かのんちゃん、この後…………。出たな」
「出たね。かのんさんは、ここにいてください。お兄、行くよ」
「へいへい。風吹さん、留守番よろしくです」
『この陣は、面白いな。まったく。面白い男だ』
風吹さん、聞いてないよ。まぁ、ほっといても大丈夫だろうけど。
それより、早く行かなきゃ。どこかで誰かが襲われてたら、一大事だから。




