第九話 八
「本当に残念です。ですが、晴斗さんも、中々の強さでした。晴治さんもそうです」
「そう。話はそれだけ?」
「貴女は、本当に巫なのですか?」
「そうだけど」
「それにしては、弱すぎですよ。そのままでは、霊主様どころか、我々にも及ばない」
「そう? 私、結構強いけど」
落ち込んでしまっては、彼方の思うつぼ。私は強い。そう思っていなきゃ、心理的に攻撃される。
「そうか。貴女は、我々の強さを知らないのでしたね。十年前の《血月の夜》に、参戦されていなかった」
「そうね。まだ貴方たちの強さは未知数。だけど私は、貴方たちを倒せる。自信はあるけど?」
「でしたら何故、結界をすぐに、破れなかったのですか?」
「結界に対する、知識が無かったの。仕方ないでしょ」
いけない。冷静にならなきゃ。
「そんな言い訳は、聞かなくても良いのですが?」
「何が言いたいの!?」
「お仲間も弱い。まさか、ここまで、落ちぶれてしまうとは。紫雲家の大恥ですね」
「それだけを言いに来たのなら、今すぐ帰って」
「しかし、あのお仲間。何処かで会ったことのある、気配を感じます」
「だったら、何? 用は済んだ?」
「ええ。では、また。次の《血月の夜》に。と言いたいのですが、恐らくは近いうちに、会うことになるでしょうね」
では。と言いながら、手を振りながら消えていった。
割れた窓も、倒れた皆もそのままにして。
「元に戻しなさいよ!」
乱麻を呼び出したら、何を言われるか分からない。
七将相手にムキになって、扇を向けることも出来ないで。
術師失格だよね。
冷静な判断が求められるはずなのに、何も出来なくて。
それなのに、強いなんて思い過ごしで、何もかもが分からない。
「乱麻」
紙人形を取り出して、息を吹き掛ける。
何を言われたって、どうでも良い。もう全て、どうでも良い。
『香楽、どういうことです!? この残影は、七将ではありませんか!』
「昼休みの襲撃と今のは、七将の仕業らしいよ」
『そんな他人事みたいに! 七将を相手に出来る程、キミには』
「分かったよ、それは! 七将の炎蛇にも言われた。私は弱いって」
どうでも良いはずなのに、どうしても反論してしまう。
分かっているから、これ以上言われたくなかった。
『七将は、何かしてきましたか?』
「皆を眠らせて、窓ガラスは粉々になっただけ」
『他には?』
「何もされてない。攻撃も何も」
『それだけで済んで良かった。七将が現れたとなると、霊主の復活が危ぶまれる』
「そうだよね。帰ったら、風吹さんに相談しよう。お兄にも、伝えなきゃ」




