第九話 六
テストの点数が満点だった事もあり、東雲先生による解説の間に、答案用紙に張られていた付箋を確認する。
《空木朔君の、身辺調査終了。放課後、お宅に伺います。晴斗さん、風吹さんには伝達済みです》
気になっていたこと。それは、空木君の正体。
あの儀式だけで、術師になれた理由が知りたいと、東雲家の分家で、霊魔を見ることが出来る東雲先生に、協力をお願いしていた。
「それで、次、証明の問題なんだけど。この問題を見て、中学で習った公式を使えた人、このクラスで二人だけでした」
東雲先生は私の方を見ずに、授業を進めてくれている。
放課後、何があっても早く帰ろう。
「このクラスは、特進コースじゃないから、大丈夫だろうけど、少しは危機感持ってね」
危機感かぁ。結界の件もそうだけど、術師として、まだまだなんだよね。
術師としての自覚、ちゃんと持たなきゃ。
淡々と時間が過ぎていき、気づけば終了五分前。
時間感覚がおかしくなっているせいか、時間の流れが速すぎる。
「おかしい……」
誰にも聞こえないように、小声で呟く。
「それじゃあ、そろそろ終わり。見直しはちゃんとしておくように」
東雲先生も気づいていない。空木君も気付いていない様子で、私だけなようだ。
それは仕方ない。霊魔の気配は感じないのだから。
「チャイム、まだ鳴ってないから、静かにしててね」
「はーい」
次の授業は、音楽。だけど、先生が出張で自習に変わる。
検定の勉強でもしていようかな。
「紫雲さん、ちょっといい?」
「はい。何かありました?」
チャイムが鳴る少し前、東雲先生が話し掛けてきた。
何かあるのなら、家に来るのだし、今ではない。
「廊下で話しましょうか。ここでは、さすがに」
「分かりました」
廊下に出ると、私に何かあったのかと、皆が興味津々な様子。
だけど、そんなのは無視。
「普通コースでの、数学の難易度は、どんな感じですか?」
「応用となると、難しいです。今回は、運良く満点でしたけど、苦戦しました」
「基礎は出来てるし、応用の方も、問題ないと思いますよ?」
成績に合わせての、再度再度の特進コースへのお誘いらしい。
一年生の頃から、特進コースへの転換の話は出ていて、実際に担任だった先生から、保護者であるお兄へも伝えられている。
でも私の限界は、ここなんだ。
「それでも、応用は難しいです」
「そうですか。分かりました。ところで、何か異変を感じませんか?」
流石は東雲家。術師ではないとしても、霊魔が見えて、異変を感じられている。
「時間の流れが速すぎる。そのくらいです」
「良かった。紫雲さんも感じられていた。しかし、昼休み程、強い気配ではありませんね」
「霊魔の気配、感じられているんですか?」
「ええ。とても微弱な気配です」
微弱な気配。それは、風吹さんやお兄じゃなきゃ、感じられないモノ。
私は、まだ感じられない。まだまだ、強くなんかなくて。
自惚れてただけだったんだ。




