第九話 五
購買まであと少し。の所で、昼休み終了のチャイムが鳴った。
私たちは足を止め、無機質に鳴り響くチャイムを、ただ聞いている。
「嘘だろ……」
「仕方ないよ。教室に行こう」
「術師も大変だよね」
「よかったら、これ食べる? フルーツ味のスティックバー」
黄色い箱に入った、簡易非常食を差し出すと、空木君の顔は、一気に明るさを取り戻した。
「おぉ! 神はここにいた! 紫雲さんだから、女神か! ありがとう、女神様。大事に食べます!」
「崇めよ~。なんてね」
「いやー、助かったよ。スティックバーが無かったら、俺は死んでた」
「大げさだね。早く教室行こう」
***
「えー、皆さん。テストお疲れ様でした。このクラスの平均点は、最悪です。でした。はい。じゃ、返すね~。順番に来て~」
数学担当は、東雲かのん先生。
実はこの先生、東雲家の次期当主である。
霊魔を見ることは出来るけれど、五行術師にはなれなかった。
理由として、何十代も前に、見えなくなっていた東雲家は、五行術の継承を出来なかったから。
「はーい。次は、紫雲さん」
「は、はい」
東雲先生の元へ行くと、答案用紙に、付箋が付けられていた。
「よく頑張りました。最高得点の百点でした」
「ありがとうございます」
「付箋、読んでおいてね」
小声で私に伝えてくれたこと。それは、付箋に書かれたことが、誰にも知られてはいけない。
「紫雲さん、何点だった?」
空木君の友人、斉木竜也君から話し掛けられ、急いで付箋を外す。
「えーと、こんな感じ」
「スゲー! 紫雲さん、百点じゃん!」
斉木君、声大きいよ! なんて言う前に、時既に遅し。
「今回、難しかったのに!?」
「紫雲さん、凄すぎでしょ」
なんて声が、所々から聞こえてくる。
今回の内容は、確かに難しかった。
だけど、今回の内容は、中学で習った、因数分解の公式を使うモノが、二割。高校で習った公式が三割。
あとは証明の問題を、サッと書いてしまえば、余裕で高得点。
「紫雲さん、見せてもらって良いっすか?」
「うん。どうぞ。斉木君」
「ありがとう」
斉木君から、登校時に何故か謝罪された。
何でも、術師や霊魔に関して悪い印象や、霊魔の出現が、私によるものだと思っていたらしい。
昨日、家の食堂に来た時、謝れなかったから、今しかなかったという。
「え、ここの証明って、AとBの順番が違うだけで、減点なの!?」
「斉木君の場合だと、対応する角が違うことになるから。だと思う」
「せんせー、酷くない!?」
「酷くないよ。紫雲さんの言う通りだから」
「うわー、マジかよ」
「大丈夫。このテストだけで、今後の人生が決まる訳じゃないよ。斉木君」
「紫雲さんに言われてもぉ!」
空木君を見てみると、さっきあげたスティックバーを、コソコソと食べていた。




