第九話 三
空木君が、結界の外側から攻撃してくれている。私たちは、私たちに出来る事をしよう。
「物理的な時間の流れは、感じられない。空間も、遠くほど近く感じて、近くほど遠く感じる」
『つまり、あべこべ。ですね』
「教室の間取りは、全て同じ。教室の配置に関しては、違和感はない」
結界内の探索を続けて、教室棟を右往左往していく。
何かが見つかるかもしれないし、見つからないかもしれない。
だけど、じっとして待っているだけは、嫌だ。
『今のところ、あべこべなのは、遠近の距離感だけです。しかし、何だか変ですね。景色がおかしい』
「景色?」
乱麻は時々、浮かびなから、外の景色を見ている。
私は教室内を見ているから、景色に関しては、気にしていない。
『ここは、何階ですか?』
「三階。ここは、二年生の教室がある階だよ」
『窓の外の景色に注意しながら、歩いてみましょうか』
「何かあった?」
『いいから、歩いて』
乱麻は浮いた状態で、私は、一緒に外の景色を見る。
突き当たりから、反対側の突き当たりまで、歩く。
廊下の窓から見えるのは、周辺の家々やその他の建物。
大体屋根の上が見えるくらいで、違和感はない。
「特に違和感は無かったよ?」
『それでは、もう一度。戻ってみましょう』
まるでシャトルランをしているみたいに、行ったり来たりを繰り返す。
家々の屋根の上が見える景色は、変わらない。はずだった。
「何で、家の壁面が見えるの? この高さなら、屋根の上のはずなのに」
『ここは、何階ですか?』
「階段には、近づいていない。ここは三階。二年生の教室がある階」
『そうですか? 本当に、そう言えますか?』
教室の出入口には、学年とクラスが書かれたプレートが付いている。
ここは三階なのだから、二年生のはずなのに。
「三年生の教室に、なってる。ここ、二階なの?」
『先程は、緑山病院の文字が、見えていましたよ』
「それって、四階じゃないと、見えないはず」
『空間交錯。階段の除いた階の間取りを、結界内で構築した』
私たちが移動する速さに合わせて、空間交錯が行われている。
だとしたら、私たちの移動速度が違えば、結界はバランスを崩すはず。
「私たち二人の移動速度が違えば、結界内のバランスが崩れて、結界は解ける?」
『それだけでは、無理です。もう一つ、必要になります』
「もう一つ?」
『同じ方向では、駄目だということ』
同じ方向では、駄目。そうか。私たちは、同じ方向に歩いていた。
移動速度だけじゃなくて、逆方向に歩くか走るかしないと、バランスは崩れない。ってこと?
「逆方向に移動すれば良い」
『その通り。こちらの端と、あちらの端の二手に別れ、走りますか。中央辺りで落ち合いましょう』
「分かった。じゃあ、私は、向こうの端に行くよ」




