第八話 結
「さて。ここは、七海さんが奢ります!」
「えっ、あたしも払いますよ!」
「私が誘ったんだし、年上だからね。望と晴斗のお祝いも兼ねて」
「ありがとうございます。七海さん。姉ちゃんと晴斗さんの為に。ごちそうさまです」
「ごちそうさまです。七海さん。ほぼ部外者の俺の分まで」
そんなわけで、七海さんの奢りとなった昼食を終え、七海さんがお会計。
「香楽ちゃん、ありがとうね。ごちそうさまでした」
「こちらこそ。また来てくださいね。七海さん」
「晴斗も、ありがとう! ごちそうさまでした! 望と仲良くするんだぞ~!」
なんて、七海さんが厨房に向かって声を掛けると、晴斗さんは、声だけこちらに。
「分かってます! のぞみんを泣かす事があったら、俺を殴って下さい! 七海さん!」
何だろう。とても暑いな。姉ちゃんの顔なんて、真っ赤だし、俺も多分赤い。
「暑いな」
「望さんと紫雲さんのお兄さん、アツアツだよな~。見てるこっちまで、暑いよ」
「どうする? このまま行くか?」
「当たり前だろ。恋愛成就、縁結び!」
姉ちゃんと七海さんと別れ、俺たちは月夜神社へと、歩を進めるのだった。
「あっ!」
「っくりしたぁ。いきなり大きな声出すなよ、竜也。近所迷惑だろ」
「紫雲さんに、謝ってなかった!」
「戻るのか?」
「いや。学校で謝れる。だろ」
「そうか」
会話に困る。恋愛成就と縁結びのお守りを、竜也が買うだけだし、俺は付き添いなだけだし、俺は買わなくても良い。そうだろ。
「朔も買うだろ?」
「何を?」
「お守り」
「付き添いだけだから、何も買わない」
「マジで!? 朔だって、彼女欲しいだろ!?」
「欲しくないワケじゃない。今は、まだいらない」
「従姉の姉ちゃん曰く、二十五歳を過ぎてから、マジで焦り出すらしい」
「そうか」
もうすぐ神社の境内。階段を昇った先に、神社はある。
と、そんな時でも、嫌な気配が強まってきた。これは、霊魔が出現する前触れ。
「竜也。このまま走るぞ」
「何で?」
「霊魔が現れる。鳥居の向こうまで、ダッシュ!」
「え、お、おい!」
大体二、三〇〇メートル。鳥居の向こうは、神様の領域。だから、霊魔は入ってこれない! はず!
「階段、キッツ」
「もうちょいだからな。あ、帳……。俺、霊魔と対峙するから、竜也はそのまま行ってくれ」
「無理すんなよ」
「お互いにな」
階段を降り、帳の中に入る。薄暗くて、居心地は最悪。
ポケットに入れていた扇を取り出し、二メートル強のデカイ霊魔に向かって、ファイティングポーズ。
『ギギャギャギャア!』
「一体だけか。まぁ、余裕だな」
『ギギャギャギャア! ブゥ!』
「おわっ! あぁ、髪が燃えた! クセェ!」
いきなり火炎放射。避けきれず、髪が少し燃えた。
絶えず放たれる、火炎に近づくことも出来ず、金縛りで動きを封じても、火炎は放たれる。
紫雲さんは何も言ってなかったけど、霊魔に属性があったりするのか?
「それなら、これだな。水術、水君!」
これなら水に包まれ、動きを封じ、火炎なんて放たれない。殺れる!
『ギギャギャギャア!』
ドーン! ドーン! ドーン! ドン!
「外れた!? 打撃もあるのかよ!?」
バキバキバキバキバキバキッ!
道路のコンクリートはバキバキに割れ、足元はめちゃくちゃ。
「水術、水君!」
『ブグググ!』
「よし! すぐに楽にしてやるよ。水術、飛沫!」
バッシャーン!
呆気ない幕引き。これで良いわけで、帳が上がる前に星蘭を呼ぶ。
「休めてないだろうけど、時戻しを頼みたい」
『承知。お任せ下さい』
ワオーン!
星蘭の遠吠えが響き渡り、みるみる内に、何事もなかったかのように、元通り。
「ありがとう、星蘭。ゆっくり休んでくれ」




