第八話 七
中へ入ると、四人座れるテーブルが空いていた。
姉ちゃんが真っ先に座っていて、メニューを確認中。
七海さんが姉ちゃんの隣に座って、俺は、姉ちゃんの向かいに座る。竜也は俺の隣。
「いらっしゃい。空木君。斉木君」
「お邪魔します。紫雲さんだよね? なんか、可愛い。印象が違う」
紫雲さんの装いは、白いブラウスに黒いスカート。そして、ネイビーブルーのウエストエプロン。
俺には前に一度見ているので、何ら思うことはない。だけど、竜也は初見。
「お世辞を、ありがとう。斉木君」
「いえいえ。初めてだよね。俺らが話すの」
「そうだね。初めてかも。メニュー決まったら、お呼びください」
お水を持ってきてくれた紫雲さんは、早々に、他のテーブルへと行ってしまった。お昼時だし、仕方ない。
「よし、望さんは決まった!」
「それじゃあ、私は……。これ美味しそう。これにしよう。はい、お二人さん。メニューどうぞ」
「ありがとうございます、七海さん。朔、先に決めちゃって」
喉が渇いてしまって、お水を一気飲み。
竜也からメニューを受け取って、何にするかな。
「あー、俺はこれにするわ。ほい、竜也」
「決めるの早すぎ。もう少し考えて、決めろよ」
「大体決まってんの。俺は、トンカツ定食一択なの」
「ふーん。ファミレスだと、ミートソースのパスタなのにな」
「それは、ファミレス限定!」
「あっそ。じゃあ、皆決まりましたよね。お願いしまーす!」
丁度良くなのか、偶然そうなったのか、紫雲さんが他のテーブルに料理を届けた後。
「はい。お待たせしました」
「タレカツ丼」
「私が唐揚げ定食」
「あ、俺も唐揚げ定食で」
「唐揚げ定食が二つですね」
「俺、トンカツ定食」
「はーい。タレカツ丼一つ、唐揚げ定食が二つ、トンカツ定食一つですね。少々お待ちください」
相変わらず、忙しそうなこの時間帯。紫雲さんと話す時間なんて、来ないだろう。
「紫雲さん、めっちゃ可愛い」
「竜也、紫雲さんに惚れたな?」
「それはっ、違う!? 違ってない!? どっちだ!?」
「知らねえよ」
「竜也君。新たな恋に、目覚めたのかな?」
「七海さんまで!?」
「香楽ちゃん、良い子だからねぇ。朔も好きでしょ?」
「姉ちゃん! それは、違っ! くない! のか? 竜也、助けてくれ!」
「知らねえよ」
色んな意味で、このテーブルは、カオスへと化してしまった。
何度でも言おう。紫雲さんのことは、友人のひとりとしか、考えていない!
「お待たせしましたー。タレカツ丼と、唐揚げ定食です。空木君、もう少し待っててね」
「待ってます! もう、何が何だか……!」




