第八話 五
星蘭の時戻しで、みるみる内に、我が家が元に戻っていく。
初体験の竜也は、挙動不審。混乱しているのだろう。
「見ろよ、竜也。ガラスの破片がキラキラしてる」
「俺は幻覚を見ているんだな。重力に反して、物体が浮かぶなんて」
「幻覚なんかじゃない。現実なんだ」
「あり得ない。そんなこと、あるわけない」
混乱している竜也を、落ち着かせる方法はないものか。
どうしたら混乱が治るのか、誰か教えて欲しい。
「たっだいま! 望さんのご帰宅だぞっ!」
「竜也君もいるんだね~」
ちょうど良いのか悪いのか、姉ちゃん帰って来た!
しかも七海さんも一緒とは、どういうこと!?
「姉ちゃん! 七海さんも!」
「お邪魔するね~。朔君」
「えっ、えっ、えっ。七海さん!? 朔、どう、どうしよう……」
混乱が混乱を呼んでいる。
家はもう元通りになっているし、姉ちゃんたちには、何が起きたのか、分からないはず。
「姉ちゃんたち、ランチだったんじゃなかった?」
「カラオケ行って、歌いまくってたら、晴斗君の食堂に行きたいねってなって」
「そうそう。結婚したことの報告、晴斗にはしてなかったから、ついでに」
「それで、帰って来たワケね。それなら……。俺たちも、紫雲さん家でお昼食べようかな」
「えっ。俺たちも!? 俺も行くのか? 朔」
混乱が治まらない竜也を引き連れ、俺たち四人は紫雲さん家に行くことにした。
「あの。七海さんは、吹奏楽団に所属されてるじゃないですか。楽器って、どうしているんですか? 私物なんですか?」
「私物だよ。パーカッションの人はどうなんだろ……。管楽器は基本的に私物」
七海さんと並んで歩く竜也を見ていると、落ち着いたようで、一安心。
混乱していたのが、嘘のようだ。
「竜也君って、七海さんのことは、吹っ切れたの?」
「吹っ切れたらしいよ。まぁ、本心は本人にしか分からないけど」
「そっかそっか。それは良かった」
「そういう姉ちゃんは、どうなんよ」
「どうとは、何なのかな?」
七海さんと竜也の少し後ろを歩く、俺と姉ちゃんは、二人を見守りながら、込み入った話をする。
「晴斗さんと付き合わないんですか?」
「おおぅ!?」
俺の一言に顔を赤らめる姉ちゃん。これは、核心に迫るチャンスか。
「晴斗君は、そんな、ことは、ないっ。ないったらない!」
「ホントに? ないの?」
「あるわけなかろう! あたしを誰だと思ってる? 二十世紀生まれ、二十世紀から二十一世紀育ちの、絶世の美女(自称)、空木望さんだぞ!」
「はいはい。分かったよ。分かったから、落ち着いて」
戦い疲れた影響なのか、お腹ペコペコな俺。
もうすぐ紫雲さん家の食堂。何を食べようか、今から考えてしまう。




