第八話 四
「大丈夫か? 竜也」
帳の外に出て、憔悴している竜也を、介抱。
立っているのもやっとの竜也は、その場に座り込み、俯いている。
「大丈夫じゃない。けど、何なんだ。あの黒い化け物は」
黒い化け物? あぁ、霊魔のことか。でも何で、竜也に見えたんだ?
「見えたのか?」
「朔が、喋る犬と話してた時、暴れてた」
「アレが、霊魔だ。負の感情によって生まれた、化け物」
「朔は、あんなのと、戦っているんだな」
「俺だけじゃない。紫雲さんも、戦ってる」
「なんか、今までの事、ごめん」
「気にしてない。竜也は見えなかったワケだし」
俺も星蘭に加勢しないと。星蘭だけに任せっきりは、良くない。
「竜也。一人でも大丈夫?」
「まぁ。大丈夫だけど」
「俺ん家、守らないといけないから、行くわ」
「うん」
竜也が帳の外にいるなら、竜也の安全は保証出来る。欲を言えば、姉ちゃんが帰って来てくれたなら、俺も安心出来るけど。
「星蘭。お待たせ!」
『粗方、片付けました。あとは、朔殿。お任せします』
「ありがとう。休んでて」
『では。失礼します』
ボフッと、白煙に包まれ、星蘭は姿を消した。
残り一体。暴れているコイツを退治する!
「俺ん家で、好き勝手暴れてくれたなぁ!」
『ギギャギギィ!』
「おわぁっ!」
俺に向けて、黒い波動を放ってきた霊魔。
間一髪の所で避けた俺は、足元に散らばる、様々な破片に、躓いてしまった。
「いってぇ! ふざけんなよ、霊魔ぁ!」
『ギギギャァ!』
その咆哮は、俺に対する笑い声か?
だとしたら、笑っていられるのも、今のうちだぞ。
「木術、花舞!」
放たれた白い花。霊魔の核だと思われる、胸元に突き刺さると、花を抜き取ろうと、もがき苦しむ。
綺麗な様で、残酷。
「邪気を吸収して、紅くなっていく様は、なんともグロい。なんてな」
邪気を吸収された、霊魔は消滅。そして、光を遮っていた、帳も上がっていく。
「さてと。星蘭。戻ってこれるか?」
紙人形に息を吹き掛けると、星蘭が姿を現した。
『帳が上がったようですね』
「星蘭のおかげで、倒せた。休んでたとこ申し訳ないけど、元通りにして欲しいんだ」
『時戻しですね。承知しました。少し離れて下さい』
「それなら、外にいるよ。竜也が心配だし」
『分かりました。朔殿が外に出たら、始めます』
時戻しは、式神である、星蘭にしか出来ない術。破壊された物を、破壊前の状態に戻してくれる、この術は、なんともありがたい。
俺は外に出て、竜也のもとへ。
「竜也、何ともないか?」
「あぁ。終わったのか?」
「終わったよ。今、式神が元通りにしてくれる」
「そっか」
帳が完全に上がり、光が差し込む我が家。ガラスの破片が、キラキラと輝いている。
『ワウォーン!』
星蘭の遠吠えが辺りに響いた。




