第八話 ニ
「あのさ、竜也」
「何?」
「空を飛ぶモンスターさ、卑怯だと思わね?」
「思わない。モンスターだって、生きるために飛んでるんだろ。それを言ったら、鳥類は、ほぼ全てが卑怯だ」
ドラミンドルが、俺のいるエリアから離れている隙に、ポテチを食べながら、濃いめのアルピスを一口。
「朔って、アルピス好きだよな」
「乳酸菌は、俺の味方だからな!」
グッ! なんてしていたら、BGMがいきなり変わった。
疲れているらしく、汗だくになって動きも鈍い。これは、いける!
「これって、あと少し?」
「まだまだ。そろそろ、他のモンスターを呼び出すから、爆竹で妨害」
「爆竹? それって、必要?」
「ドラミングで、ボスジャンゴを呼び出すから、ドラミングの音を消すために、爆竹が必要なんだよ」
爆竹が必要なんて、俺は聞いていない。
回復薬と砥石、食糧とコールドドリンクを用意しただけだ。
「簡易アイテムボックスに、入っていただろ」
「そんなのあった?」
「見てないのか?」
「無しでやると、どうなる?」
「ドラミンドルのみを、相手にする。ボスジャンゴが加勢してくるから、その時は……って、おい! 画面から目を離すな!」
アルピスを飲むため、画面から目を離していると、竜也が慌てている。
「ん?」
画面に視線を移すと、ボスジャンゴが俺めがけ、突撃してきていた。おまけに、ドラミンドルが、火炎放射を放とうとしている。
「逃げろ! 早く!」
「どどど、何処に!?」
「隣のエリア!」
だだっ広いエリアの隅にいる今、近くのエリアへの移動は簡単。
ダメージゲージは、半分以上削られた。隣のエリアにもモンスターはいる。
だけど、少しでもダメージを減らしたい。
ズン!
重たい嫌な空気が、急にのし掛かってきた。これは、霊魔の出現の合図だろう。
近くに出現するのか、かなり強く、嫌な気を感じる。
「竜也。留守番頼める?」
「は? 何で?」
「霊魔が、出たみたい。俺も行かなきゃ」
「あー、はいはい。紫雲さんに会いに行く、口実ね」
「いやいや、そんなんじゃないから。人々を助けるために!」
霊魔不信の竜也には、何を言っても通じない。
って、嘘だろ。窓から差し込んでいた光が、遮られた?
『ギギャアア!』
『ギギギャア!』
まさか!
声が近い。家に、ピンポイントで帳が降りている!
「竜也、俺の部屋に居てくれ!」
「何で? 何か不都合でもあんの?」
「いいから、早く! 襲われる前に、早く!」
パリーン!
台所の窓ガラスが割れた。そして、外から霊魔が一体、中へ。
「何なんだよ!」
「星蘭、来てくれ」
ポケットから紙人形を取り出し、息を吹き掛ける。
ガラスが割れて、霊魔が起こした風で、家の中はめちゃくちゃ。
「竜也を二階に連れていく。星蘭、ここを任せた」
『承知』




