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紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第八話 徒花は実を結ぶ
72/102

第八話 ニ

「あのさ、竜也」

「何?」

「空を飛ぶモンスターさ、卑怯だと思わね?」

「思わない。モンスターだって、生きるために飛んでるんだろ。それを言ったら、鳥類は、ほぼ全てが卑怯だ」


 ドラミンドルが、俺のいるエリアから離れている隙に、ポテチを食べながら、濃いめのアルピスを一口。


「朔って、アルピス好きだよな」

「乳酸菌は、俺の味方だからな!」


 グッ! なんてしていたら、BGMがいきなり変わった。

 疲れているらしく、汗だくになって動きも鈍い。これは、いける!


「これって、あと少し?」

「まだまだ。そろそろ、他のモンスターを呼び出すから、爆竹で妨害」

「爆竹? それって、必要?」

「ドラミングで、ボスジャンゴを呼び出すから、ドラミングの音を消すために、爆竹が必要なんだよ」


 爆竹が必要なんて、俺は聞いていない。

 回復薬と砥石、食糧とコールドドリンクを用意しただけだ。


「簡易アイテムボックスに、入っていただろ」

「そんなのあった?」

「見てないのか?」

「無しでやると、どうなる?」

「ドラミンドルのみを、相手にする。ボスジャンゴが加勢してくるから、その時は……って、おい! 画面から目を離すな!」


 アルピスを飲むため、画面から目を離していると、竜也が慌てている。


「ん?」


 画面に視線を移すと、ボスジャンゴが俺めがけ、突撃してきていた。おまけに、ドラミンドルが、火炎放射を放とうとしている。


「逃げろ! 早く!」

「どどど、何処に!?」

「隣のエリア!」


 だだっ広いエリアの隅にいる今、近くのエリアへの移動は簡単。

 ダメージゲージは、半分以上削られた。隣のエリアにもモンスターはいる。

 だけど、少しでもダメージを減らしたい。


 ズン!


 重たい嫌な空気が、急にのし掛かってきた。これは、霊魔の出現の合図だろう。

 近くに出現するのか、かなり強く、嫌な気を感じる。


「竜也。留守番頼める?」

「は? 何で?」

「霊魔が、出たみたい。俺も行かなきゃ」

「あー、はいはい。紫雲さんに会いに行く、口実ね」

「いやいや、そんなんじゃないから。人々を助けるために!」


 霊魔不信の竜也には、何を言っても通じない。

 って、嘘だろ。窓から差し込んでいた光が、遮られた?


『ギギャアア!』

『ギギギャア!』


 まさか! 


 声が近い。(うち)に、ピンポイントで帳が降りている!


「竜也、俺の部屋に居てくれ!」

「何で? 何か不都合でもあんの?」

「いいから、早く! 襲われる前に、早く!」


 パリーン! 


 台所の窓ガラスが割れた。そして、外から霊魔が一体、中へ。


「何なんだよ!」

「星蘭、来てくれ」


 ポケットから紙人形を取り出し、息を吹き掛ける。

 ガラスが割れて、霊魔が起こした風で、家の中はめちゃくちゃ。


「竜也を二階に連れていく。星蘭、ここを任せた」

『承知』

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