第七話 八
ドラマを見終え、部屋に戻って再び眠った。
セットした目覚まし時計が、六時を教えてくれるまで、ぐっすりと。
「おはよ」
「おっはー。ちゃんと眠れたかい?」
階段を降り、台所に行くと、姉ちゃんが卵焼きを作っていた。
甘い香りが漂っているから、今日の卵焼きは甘いやつ。
「今日の演奏会、夕方だったよね?」
「そうだよ~。チケットは忘れるべからず!」
「意味違うような? 合ってる?」
「とにかく、チケットは持っていくように!」
たくさん寝たはずなのに、まだ眠たい。夕方からの演奏会に備えて、もう一眠りしたい気分。
「ほらほら、朝食食べないのかい?」
「食べるけどさ、なんかまだ眠い」
「コーヒー飲む? ケトルに水入れるけど」
「インスタント残ってるなら、飲む」
電気ケトルに水を入れてもらって、俺は居間のソファーにダイブ! とまでの勢いはなく、倒れこむように、ソファーに寝そべった。
このまま、寝れる。そう思った矢先、嫌な気配を感知してしまった。霊魔特有の禍々しい気配。
「姉ちゃん。霊魔が出たみたい」
か細く出た俺の声。姉ちゃんは台所で朝食の準備中。聞こえたかな。
「何か言った?」
「霊魔が、出たみたい」
「朔は行けそうなの?」
「多分、大丈夫だと思う。動けるはず」
「紫雲兄妹には、連絡した? 行けないなら、二人と風吹さんに」
「行く。行かなきゃ、俺は弱いまま」
紫雲さんの力になりたい。そう誓ったから。殺られてばかりじゃ、力どころか、ただの足手まといだ。
「そう。分かった。行きな!」
まともには動いてくれない俺の身体を、無理やり動かして、玄関を飛び出し、帳が降りているだろう場所を、目指して走る。
停まりそうになる足。倒れそうになる身体を動かして。
***
月夜神社がある辺りから、嫌な気配が漂っていて、しかも帳が降り始めている。まだ霊魔の姿はない。どうしてだ?
「星蘭!」
ポケットから召喚陣を取り出し、息を吹き掛ける。
現れた俺の式神、星蘭は、至って冷静。
『霊魔の姿がないようですね。ボクの背中に乗ってください。様子を見に行きましょう』
「うん。でもさ、星蘭は中型犬くらいのサイズじゃん。俺が乗ったら、潰れちゃう」
『朔殿は、ご存知ありませんでしたね。我々犬の式神は、大犬になれるのです』
そう言うと、ボワっと白い煙幕が星蘭を包み込み、俺よりも大きな大犬が、姿を表した。
「星蘭?」
『早くお乗りください。霊魔が現れてしまいます』
「うん」
星蘭の背中はフカフカしてて、気持ちが良い。きっと某映画の姫は、こんな気持ちだったのだろう。
『参りますよ!』
疾風のごとく駆け出した星蘭。あまりの速さに、俺は飛ばされそう。
「は、速すぎる」
家から月夜神社までは、二キロ程の距離。それを数秒で駆けてしまった。そして、帳が完全に降りる前に、到着。
『これは、被害が出る前で良かった。朔殿とあまり変わらぬ大きさですね』
「小さい奴もいたとは。ありがとう、星蘭」
『しかし、この数。紫雲の方々はお見えにはない』
「俺たちで、なんとかしよう」
そこにいたのは、人サイズの霊魔、十体以上。俺一人では、確実に退治出来ない数。




