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紫雲のカグラ  作者: 天城なぎさ
第七話 アイネクライネナハトムジーク
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第七話 一

 梅雨が終わり、本格的に暑さがやってくる。そして、もう少しで夏休み。


「もうすぐ夏休みですよ。竜也さん」

「何で敬語になってんの?」

「いいじゃん。たまには」

「調子狂うから、やめて」

「夏休みの予定は?」

「まだ決めてない。朔はどうなん?」

「バイト。姉ちゃんも仕事だし、少しは貢献しないとさ」


 セミの鳴き声が、近くで聞こえるこの季節。夏休み前の会話と言えば、やはり予定の話。


「コンビニ? それとも、ファミレス?」

「今年は、紫雲さん家。食堂やってるんだよ。夏休みはいつも混むから、来てほしいって。オファーが来ましたよ」

「マジで!? 紫雲さん家、食堂やってるん!?」

「ここから十分くらいだな」


 朝は少し暑いくらいで、これから更に気温が上がるのかと思うと、嫌になる。


「来週からテストですよ。竜也さん」

「朔は自信ある? 今回の世界史、絶対無理」

「だよな~。今回の世界史、ムズくね?」

「そういや、知ってたか? このクラスの一位が誰か」

「知らない。俺はそんなことに、興味はない」

「紫雲さんらしいぞ。以外だった」

「紫雲さんは、頭良いからな。俺はてっきり、古倉(こくら)だと思ってたけど」


 まだ古倉が来ていなくて良かった。きっと今頃、何処かでくしゃみをしているだろう。なんて考えていると、隣のクラスの女子が、俺の席に近づいてきた。


「お話し中ごめん。空木君。ちょっと良い?」

「何? 何か用?」

「ちょっと、こっち来て」


 廊下に来るよう促され、仕方なく赴く俺。この流れは、恐らくアレだろう。


「朔に、モテ期到来かぁ」

「うるせー。竜也に言われたくないわ~」


 廊下に出てみると、さっきの女子の他に、一年は時に同じクラスだった女子が一人。と、なれば、これが学園モノの物語ならば、絶対アレだ。それ以外にない。


「あ、あの。空木君は、その。えっと、紫雲さんとは、どういった関係なの?」

「紫雲さん? 友達だけど。それが何?」

「友達……。空木君に、彼女は?」

「いない。彼女いない歴イコール今の年齢だから」

「それなら、えっと。私、一年の時から、空木君が好きです。空木君が良ければ、私と、付き合ってもらえませんか?」


 やっぱり来た。小窓から、クラスメイトたちが覗いている。今来ているクラスメイトたち全員、俺の返事を期待しているようだ。

 だけど俺の返事は、皆が期待している通りにはならない。


「青木さん、ごめん。俺はまだ、誰とも付き合うつもりはないんだ。でも、ありがとう。俺を好きになってくれて」

「そうですか。お話し中に、お邪魔してしまって、ごめんなさい」

「青木さんには、俺なんかより良い奴がいるよ。応援してる」

「はい……」


 チャイムが鳴り、皆解散。教室中、俺の事で話題は持ちきり。


「そっか~。朔はまだ恋愛はしないか」

「空木君。恋愛しても良いんだよ?」

「うーつーぎぃ! モテない奴らの敵になったからな!」

「もう! ほっといてくれ!」

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